知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

商品表示の周知性と著名性(2条1項1号,2号)

2009-01-13 07:15:53 | 不正競争防止法
事件番号 平成19(ワ)11899
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成20年12月26日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 清水節

(2) 原告商品表示の周知性について
 上記(1)の認定事実によれば,原告は,平成18年5月から同年7月までの間において,原告商品表示を付した原告商品を,多くの一般の顧客が容易に購入することができ,かつ,容易に目にすることができると考えられる,コンビニエンスストア,ドラッグストア,スーパーマーケット等において,大量に販売していた。それと併せて,新聞,雑誌及びインターネットといった各種のマスメディア並びに利用者が多いと考えられる路線の電車内及び駅構内において,原告商品表示を付した広告を頻繁に行っており,また,テレビ広告においても,そのような他のマスメディアの状況からすれば,それらと同様に,原告商品表示の写真が放送されていたものと推認される。その他,原告商品は,テレビ,新聞及び雑誌において紹介され,その多くで原告商品表示の写真が付されており(テレビにおいても原告商品表示の写真が紹介されていたと推認されることは,上記広告の場合と同様である。),さらに,平成18年度の人気商品として各種の賞も受け,その報道においても,一部,原告商品表示が紹介されていたものである。
 このような状況に照らせば,原告商品表示は,現時点においてはもちろん,被告ら商品Aの販売が開始された平成18年7月下旬ころ(上記前提となる事実(4)ア)の時点においても,原告商品を表すものとして全国の消費者に広く認識され,相当程度強い識別力を獲得していたといえ,周知性を有していたものと認めることができる。

 この点,被告らは,原告商品の販売や宣伝広告が行われた期間の短さを根拠として,平成18年7月下旬ころの時点では,原告商品表示の周知性及び著名性が認められない旨主張するが,上記(1)の認定事実のとおり,原告が,原告商品発売時である同年5月から同年7月までの間に,相当集中的な販売及び宣伝活動を行っていることに照らせば,その期間が2か月間であっても,周知性を獲得したと認めるのが相当であり,被告らの主張するところは,抽象的な推測の域を出るものではないから,これを採用することができない。

(3) 原告商品表示の著名性について
 原告は,上記(1)で認定された原告商品の販売及び宣伝活動の状況を根拠として,原告商品表示が,平成18年7月下旬ころの時点において,周知性を超えて著名性まで獲得していた旨主張する。

 しかしながら,ある商品の表示が取引者又は需要者の間に浸透し,混同の要件(不正競争防止法2条1項1号)を充足することなくして法的保護を受け得る,著名の程度に到達するためには,特段の事情が存する場合を除き,一定程度の時間の経過を要すると解すべきである。そして,原告商品については,上記の平成18年7月下旬の時点において,いまだ発売後2か月半程度しか経過しておらず,かつ,原告商品表示がそのような短期間で著名性を獲得し得る特段の事情を認めるに足りる証拠もないのであるから,原告商品表示は,同時点において,著名性を有していたものと認めることはできない。
 したがって,原告の上記主張は理由がない。

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