知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

地震ロック分割出願事件-分割の適法性の判断事例-

2009-12-20 14:13:21 | 特許法44条(分割)
事件番号 平成21(行ケ)10272
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年12月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

3 取消事由2(分割要件違反の判断の誤り)について
(1) 原告は,審決が,「…原出願当初明細書における,図1乃至図4に示された地震時ロック装置,図20に例示された『ロック装置』の位置,及び,図25に例示された『T位置』を組合わせて一つの発明とし,これを原出願から分割して,新たな特許出願(本件特許出願)とすることは,少なくとも,地震時ロック装置の取り付け位置の点で,原出願当初明細書に記載されていない事項を本件特許発明の構成要件として含むものと思量されるから,分割要件に違反するものといわざるをえない。」(19頁25行~31行)等として,本件特許発明に係る出願は分割要件違反であると判断したのは誤りである旨主張する

ア 本件特許出願の原出願の当初明細書(甲2の8。公開特許公報〔特開平10-30372,甲1〕も同じ。以下「原出願の当初明細書」という。)には,以下の記載がある。
 ・・・

(エ) 上記(ア)ないし(ウ)によれば,原出願の当初明細書(甲2の8)には,「比較のためのロック装置(従って本発明ではない)」として本件明細書(甲18)の図1~図4と同内容である図1~4が示され,そのため図面の説明としても「比較のための地震時ロック装置の断面側面図」,「同上作動状態図」とされている。
 しかし,上記によれば,原出願の当初明細書においては,図18ないし図24の地震時ロック装置においては,取り付け位置として,T,B,S1,S2及びS3位置が選択可能であるとされている(段落【0009】)が,図1~4で示される比較のための地震時ロック装置については,これをT位置に取り付けることについては記載がされていないということができる。

イ (ア) 一方,本件特許の出願時(原出願からの分割出願時,平成16年6月7日)の明細書(以下「本件当初明細書」という。甲2の15)の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
・・・
(イ) また,本件当初明細書(甲2の15)の図面には,・・・。
・・・

ウ 上記イのとおり,本件特許出願にかかる本件当初明細書(甲2の15)においては,図1~図4で示されるロック装置をT位置に取り付けるものとされているところ,上記ア(エ)において検討したとおり,原出願の当初明細書(甲2の8)には,本件当初明細書と同一の図1~図4で示される「比較のための地震時ロック装置」については,これをT位置に取り付けることについて,記載がされていなかったものである。

 そうすると,本件特許出願は,原出願の当初明細書には記載されていない本件特許発明1に係るロック装置をT位置に取り付ける事項を含むものであるから,特許法44条1項に規定する適法な分割出願とすることはできない。そうすると,本件特許出願について,本件分割前の原出願の出願日(平成8年5月27日)への遡及を認めることは出来ず,その基準時は本件特許の出願日(分割出願の日)である平成16年6月7日となる。



最新の画像もっと見る