知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

明細書等に記載した事項の範囲内か否かを判断することができない訂正を新規事項の追加とした事例

2012-01-22 20:47:56 | 特許法17条の2
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120104101453.pdf
事件番号 平成22(行ケ)10402
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年12月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

ア 取消事由1(新規事項の有無についての判断の誤り)について
(ア) 本件補正(第2次補正)は,本願発明(第1次補正)における「・・・キノンからなる群から選択される酸化能力を有する試薬」との記載を「・・・酸化能力を有する試剤は,アズレンキノン,1,2-ジヒドロキノン,および1,4-ジヒドロキノンからなる群から選択され」との記載に訂正する内容を含んでいる。

 しかし,特許法にいう補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならないところ(特許法17条の2第3項),乙1文献によれば,「ジヒドロキノン」とは「ヒドロキノン」の2量体を意味するから,原告が本件補正において追加しようとした「1,2-ジヒドロキノン」及び「1,4-ジヒドロキノン」なる名称の化学物質が何を指すのか不明といわざるを得ないし,少なくともそのような名称を正しい名称とする化学物質が実在することを認めるに足りる的確な証拠はなく,このことは,原告が指摘する甲17文献及び甲18文献の前記記載によっても左右されない。そうすると,当業者(発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)は,このような名称を有する化学物質がいかなる化学構造を有する物質であるかを理解することができず,そもそも上記補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内か否かを判断することができないので,上記補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものということはできない

 したがって,「本件補正は,当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものとはいえないので,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない」との審決の判断に誤りはない。

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