知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

出願後に補充した実験結果等を参酌できないとされた事例

2012-01-22 21:35:23 | 特許法36条6項
事件番号 平成22(行ケ)10402
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年12月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

 ・・・本願の当初明細書には,「抗菌,抗ウィルス,及び抗真菌組成物に用いられる(A)は,触媒機能を有する金属イオン化合物で,一般式は,M+aX-bで,Mは,ニッケル(Ni),コバルト(Co),・・・クロム(Cr),・・・鉄(Fe),銅(Cu),チタン(Ti),・・・白金(Pt),バラジウム(Pd),…からなる群から選択された金属元素・・・である・・・」(段落【0005】)と記載されているものの,M+aX-bで表される成分(A)のMとして「銅」以外の金属を使用する組成物については,発明の詳細な説明に具体的データの記載がなく,また,本願の組成物が脂肪酸やDNAを分解するメカニズムを説明する記載もなく,脂肪酸やDNAの分解において組成物中の各成分が果たす役割を実証する記載もない
・・・

(エ) さらに,原告は,「銅」以外の各種金属イオン,すなわち,「ニッケル」,「コバルト」,「クロム」,「鉄」,「チタン」,「白金」及び「パラジウム」などの金属イオン化合物が触媒機能を発揮することを立証するため,「銅」以外の各種金属イオンを含有する抗菌,抗ウィルス,及び抗真菌組成物を本願明細書の実施例1と同じ手順で調製し,実験例1及び2で述べた手法で検証したところ,金属イオン化合物が本願補正発明において触媒機能を発揮し,これらの化合物を使用して組成物を調製した場合においても所望の抗菌,抗ウィルス及び抗真菌作用を奏することが示されたと主張する。

 しかし,明細書等に記載されていなかった事項について,出願後に補充した実験結果等を参酌することは,特段の事情がない限り,許されないというべきところ,原告が主張する上記実験結果は本願の当初明細書に記載されておらず,それがいつ,どこで行われた実験であるか明らかでないばかりか,同主張が平成23年8月26日付け「技術説明書」と題する書面により初めて主張されていることからすれば,上記実験は本件訴訟提起後に行われたと推認されるし,本願の当初明細書又は出願時の技術常識から上記実験の結果が示唆ないし推認されるような特段の事情も認められないから,そもそも上記実験結果を参酌することはできないというべきである。

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