事件番号 平成22(行ケ)10034
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年01月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
・・・
(イ) 引用例においては,引用発明の実施例として,一対のロボットを搬送チャンバ内に配置する構成について開示しており,かかる実施例においては,チャンバ内の床と天井が,アームが取り付けられる支持部材に相当するものということができる。
また,引用発明の特許請求の範囲においては,アーム部やハンド全体が上下移動する構成を排除されているものではなく,引用例にも,ハンドがアーム部に対して昇降する機能や,アーム部及びハンド全体が昇降する機能が明示されているものである。
そうすると,当業者が,引用例の記載から,引用例の実施例において開示された搬送チャンバ内に上下一対に配設されたロボットにつき,「ハンドがアーム部に対して昇降する機能や,アーム部及びハンド全体が昇降する機能」を有する構成として,搬送チャンバとは無関係に,アーム部とハンド部とを,支持部材を介して周知技術であるコラム型の上下昇降機構に組み合わせることは,容易であるということができる。
この点について,被告は,引用発明は,ロボットを横方向に2台並べることによる基板処理装置の大型化という課題を解決するために,ロボットのアームを搬送チャンバの天井と床とにそれぞれ対向するように設けたにすぎず,支持部材を上下に移動させてチャンバ以外において使用することを想起することは困難であるなどと主張する。
しかしながら,本件明細書及び引用例における課題に関する具体的表現が相違するとしても,本件発明及び引用発明は,いずれも産業用ロボットにおいて普遍的な課題というべき省スペース化や可動範囲の拡大を目的とするものである。
また,周知例3においても,同様の課題が明示されており,シングルアーム型ロボットであっても,ダブルアーム型ロボットであっても,かかる課題は共通であるから,本件審決のように,引用発明について,「二組のアームを有する特別な用途」のものと理解し,シングルアーム型ロボットに適用するための「特別な動機」が必要となるものではない。
さらに,先に指摘したとおり,引用例にも,ハンドがアーム部に対して昇降する機能や,アーム部及びハンド全体が昇降する機能が明示されている以上,被告の主張はその前提を欠くものである。
被告の主張は採用できない。
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年01月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
・・・
(イ) 引用例においては,引用発明の実施例として,一対のロボットを搬送チャンバ内に配置する構成について開示しており,かかる実施例においては,チャンバ内の床と天井が,アームが取り付けられる支持部材に相当するものということができる。
また,引用発明の特許請求の範囲においては,アーム部やハンド全体が上下移動する構成を排除されているものではなく,引用例にも,ハンドがアーム部に対して昇降する機能や,アーム部及びハンド全体が昇降する機能が明示されているものである。
そうすると,当業者が,引用例の記載から,引用例の実施例において開示された搬送チャンバ内に上下一対に配設されたロボットにつき,「ハンドがアーム部に対して昇降する機能や,アーム部及びハンド全体が昇降する機能」を有する構成として,搬送チャンバとは無関係に,アーム部とハンド部とを,支持部材を介して周知技術であるコラム型の上下昇降機構に組み合わせることは,容易であるということができる。
この点について,被告は,引用発明は,ロボットを横方向に2台並べることによる基板処理装置の大型化という課題を解決するために,ロボットのアームを搬送チャンバの天井と床とにそれぞれ対向するように設けたにすぎず,支持部材を上下に移動させてチャンバ以外において使用することを想起することは困難であるなどと主張する。
しかしながら,本件明細書及び引用例における課題に関する具体的表現が相違するとしても,本件発明及び引用発明は,いずれも産業用ロボットにおいて普遍的な課題というべき省スペース化や可動範囲の拡大を目的とするものである。
また,周知例3においても,同様の課題が明示されており,シングルアーム型ロボットであっても,ダブルアーム型ロボットであっても,かかる課題は共通であるから,本件審決のように,引用発明について,「二組のアームを有する特別な用途」のものと理解し,シングルアーム型ロボットに適用するための「特別な動機」が必要となるものではない。
さらに,先に指摘したとおり,引用例にも,ハンドがアーム部に対して昇降する機能や,アーム部及びハンド全体が昇降する機能が明示されている以上,被告の主張はその前提を欠くものである。
被告の主張は採用できない。