知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許法184条の2の解釈

2010-08-29 11:31:25 | Weblog
事件番号 平成22(行ウ)92
事件名 異議申立棄却決定取消請求事件
裁判年月日 平成22年08月06日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 大須賀滋

1 本件棄却決定の違法事由に係る原告の主張について
(1) 行政事件訴訟法10条2項は,「処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には,裁決の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由として取消しを求めることができない。」と規定する(なお,同法3条3項参照)。同規定は,行政処分(原処分)とこれを維持した裁決とがある場合に,原処分と裁決のいずれに対しても取消訴訟を提起することは可能であるが,原処分の違法事由は処分取消しの訴えにおいてのみ主張することが許され,裁決取消しの訴えにおいてこれを主張することはできないとする,いわゆる原処分主義を裁決取消しの訴えにおける違法事由の主張制限の面から規定したものである

 そして,意匠法60条の2が準用する特許法184条の2は,いわゆる審査請求前置主義を規定したものであり,原処分の取消しの訴えの提起を許さず裁決取消しの訴えのみの提起を認めた,いわゆる裁決主義を採用するものではない

(2) この点,原告は,意匠法60条の2が準用する特許法184条の2は,裁決主義を表明したものであると主張する
 しかしながら,特許法184条の2は,「…処分…の取消しの訴えは,当該処分についての異議申立て…に対する決定…を経た後でなければ,提起することができない。」と規定し,原処分の取消しの訴えの提起自体を許さないとはしていない。また,特許法184条の2の規定振りは,いわゆる裁決主義を採用した意匠法59条2項が準用する特許法178条6項が「審判を請求することができる事項に関する訴えは,審決に対するものでなければ,提起することができない。」と規定し,裁決である審決に対する訴えのみの提起を認めているのと明らかに異なるものとなっている。

 このように,意匠法60条の2が準用する特許法184条の2が裁決主義件棄却決定の取消しの訴えのいずれも提起することができる場合に当たるから,行政事件訴訟法10条2項の規定により,本件棄却決定の取消しを求める本件訴えにおいては,原処分である本件却下処分の違法を理由として,本件棄却決定の取消しを求めることはできず,本件棄却決定の違法事由として原告が主張し得るのは,本件棄却決定の固有の違法事由(瑕疵)に限られることになる。

 ところが,本件についてみるに,前記第2の2の(原告の主張)のとおり,原告は,本件却下処分の違法を理由として,本件棄却決定の取消しを求めており,本件棄却決定の固有の違法事由(瑕疵)を主張するものではないから,前記第2の2の(原告の主張)は,主張自体失当である。

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