知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

私的録音録画補償金制度の趣旨に妥当しない「特定機器」

2011-01-10 20:25:37 | Weblog
事件番号 平成21(ワ)40387
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成22年12月27日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎

(b) また,被告の上記主張が,地上デジタル放送において著作権保護技術(平成20年7月4日以降はダビング10)による複製の制限が行われている現状を前提に,そのような現状の下におけるデジタル放送のみを録画することが可能なアナログチューナー非搭載DVD録画機器には,私的録音録画補償金制度の趣旨は妥当しないから,アナログチューナー非搭載DVD録画機器は法30条2項及び施行令1条2項3号の特定機器には含まれない旨を述べるものであるとすれば,そのような主張は,法令解釈の枠を超えたものというほかない

 すなわち,施行令1条2項3号が規定する特定機器の範囲は,同号を施行令に追加した平成12年改正政令が公布された平成12年7月14日の時点において客観的に定まっていなければならないのであり,同号は,このように特定機器の範囲を客観的に特定するための要件を,当該機器に係る録画の方法,標本化周波数,記録媒体の技術仕様等の技術的事項によって規定していることは明らかである。

 ところが,被告の上記主張は,平成15年12月1日に地上デジタル放送が開始され,その中で,地上デジタル放送について平成16年4月5日からはコピー・ワンス,平成20年7月4日からはダビング10による複製の制限が行われているという事実,すなわち,施行令1条2項3号制定後に生じた事実状態のいかんによって,同号が規定する特定機器の範囲が定まるとするものにほかならないものであり,結局のところ,被告の上記主張の実質は,施行令1条2項3号が規定する特定機器の要件(上記技術的事項)に該当するものであっても,同号制定後の地上デジタル放送における著作権保護技術の運用の実態の下では,私的録画補償金の対象とすべき根拠を失うに至ったから,同号の特定機器からこれを除外するような法又は施行令の改正をすべきである旨の立法論を述べるものにすぎないといわざるを得ない

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