知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

過度の試行錯誤を強いるとして実施可能性を否定した事例

2011-01-31 21:42:33 | Weblog
事件番号 平成22(行ケ)10105
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年01月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判 塩月秀平

 そうすると,「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うことの変形例として等容積プロセスの終了点における圧力に対する80%や90%の圧力を設定して,本願明細書に開示されている実質的等容積プロセスの後に等温(燃焼)プロセスの燃焼サイクルに用いられている条件や式を用いて,上記圧力を維持して最高燃焼温度3300゜Rまで増加させる「定圧力プロセス」を行い,次に最高燃焼温度3300゜Rにおける「等温(燃焼)プロセス」を行うための導入タイミングや導入燃料量,各プロセスの開始前,終了後のT(温度),圧力(P),V(容積)といった具体的な条件を設定することが,本願明細書に開示されているということはできない

(2) 原告が主張するように本願発明の燃焼サイクルの各プロセスにおける容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)が計算できたとしても,依然として,各プロセスを生じさせる燃焼噴射タイミングや,各噴射タイミングにおける燃料噴射量をどのように決定するのかが不明である。
 ・・・
 すなわち,本願発明の各プロセスでの容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)については,所望する値を算出することは窺い知ることができたとしても,そのような値となる各プロセスを実現するための各燃料噴射タイミングと各燃料噴射タイミングにおける噴射量を決定することについては,当業者に過度の試行錯誤を強いる

(3) 以上より,発明の詳細な説明に当業者が容易に本願発明を実施をすることができる程度に発明の構成が記載されているとはいえないとした審決の判断に誤りはない。

最新の画像もっと見る