ボクの奥さん

ボクの奥さんは、甲斐よしひろさんの大ファン。そんな彼女との生活をお話したいと思います。

シビレる言葉 AGAIN 3

2017-08-20 16:40:00 | 日記
かつて甲斐さんがサンストで
「僕の『I LOVE YOU』は無言です(笑)」とおっしゃったそうですけど
今回は「沈黙」についての言葉をご紹介します

ドイツの哲学者ヨゼフ・ピーパーによれば
「沈黙している人だけが聴いているのであって
口を閉じない者には何も聞こえない

沈黙とは、口をつぐむことではなく
『口を開けば途切れてしまうような深い心の通い合い』のことだ
人を懐深く受け入れるには、鎧を脱いで自分を緩める必要がある

だが、それは事の成り行きに心置きなく身を委ねられる『信頼』なしには難しい」
日頃から、そういう関係を周囲と育んでおくことが大切だとのことですが

歌人・生命科学者の永田和宏さんが帰宅された際に
庭仕事をなさっていた奥様が振り返られ
「それまで泣いていたと、すぐに判った」ものの

「慰めもせず、冗談で元気づけようともせず
泣いていた訳も訊かず、ただただ横に座っていただけだった
沈黙の中で互いを最も切実に感じていた」とおっしゃっていて

乳がんの再発をお知りになったばかりの奥様にとって
どんな言葉よりも優しい沈黙だったんじゃないかと…

ただ、黙っていても気まずくならないどころか
口を開かずとも通じ合う「あ・うん」の呼吸の仲になるには
共に過ごした年月だけでなく相性もあるような気が…?

以前にもご紹介しましたけど
ロバート・B・パーカーは、奥様が乳がんにかかった時

「物事は何でも良いように考えなければいけないよ
ブラジャーだって半額で買えるかも知れないんだから」
…という言葉をかけたそうだし
ただ黙って座っていたのでは、奥様に愛情を疑われたかも知れないし…?

もっとも、奥さんにとって「あ・うん」の呼吸といえば
甲斐さんが歌詞や歌の出だしを間違われても(笑)
目を合わせることもなさらず、何事もなかったかのように
演奏でカバーされる松藤さんが、一番に思い浮かぶみたいですが…(笑)

それはさておき…
「沈黙が苦手である」ノンフィクション作家の最相葉月さんは
「まばたきの回数が増え、口の中が渇く
その内、背中がガシガシと強張り、後頭部が重くなる
そして、もうダメだと思った瞬間『あのう』と声を出している

こう切り出した時、取材相手のそれまでの沈黙に込められていた全てを
バラバラに断ち切ってしまうのだ
だから『言葉によって意味を固定しないことの持つ意味』を
反芻しつつ取材を続けている」そうだけど

言葉の「行間」というものを読むには
相手の方に対する、理解や疑問を含めた興味を抱くことはもちろん
佇まいや仕草から滲み出るものをキャッチする
アンテナが必要なのかも知れませんね

デザイナーの太田和彦さんによれば…
「通の客は最後まで一言も発しない」らしく

それは「良い居酒屋は、主人が店の全部を見渡せる設えになっており
客からも常に主人の姿が見えるから、注文はたいてい眼で
酒がなくなれば徳利を上げるだけでよくなる」ためなんだとか…

甲斐さんは、バーのカウンターや対面キッチンのお店がお好きみたいですが
「一言も発しない」ことはないでしょうね?(笑)

村上春樹さんは、創作へのこだわりを訊ねられ
「優れたパーカッショニストは、一番大事な音を叩かない」とお答えになったそうで

それをお知りになった後藤正文さんは
「音楽というと、どうしても鳴っている音に注目してしまうけれど
休符ももちろん音符であって
どこにどんな音が鳴るのかと同じくらい
どこでどんな音を鳴らさないのかというのは、とても大事なことだ

鳴っている音を躍動させたり、滑らかにしたり
時に『しん』とさせたり…といった効果や役割がある」と記され

また、谷川俊太郎さんは「言葉は…
言わないこと、書かないこと、黙っていることまで含んでいる」とおっしゃっていて

何となく物足りない、もっと強調したいという理由で
不必要な音を奏でたり、余計な一文を書き加えることを戒めておられます

一方で、現代音楽家のジョン・ケージは
「私には言うべきことが何もない
…と言いながら、そう言っている」という矛盾を口にし
「『沈黙』の認識も言葉の力によるもの」と示唆したり

また、ピアノの前に座り、4分33秒間、何も弾かずに去る
…という伝説的な「作品」を残したりしているらしい

4分33秒の間、聞こえるのは周囲の音だけというこの曲は
「すべきことが何もない」ということを表現している
…と、されているそうだけど
その場に立ち会われた聴衆の皆さんは、どう受け取られたんでしょうか?

ちなみに…美術家の森村泰昌さんは
大きな板に「何もすることがない」と
ドリルで刻み続けた「ふくおかさん」について

「生き甲斐になることを何も見つけられない人は、無理に探さず
その『ない』をそのまま形にする作業を続けていれば
それが『作品(ワーク)』になる
芸術の神様は、決してあなたを見捨てない」とおっしゃったんだとか…

元記者の稲垣えみ子さんによると…
モノ、金、健康などを手に入れるのが幸福だとすれば、病と死は不幸の極み
「人は不幸にまみれて一生を終えるほかない」

でも、持つことと幸福とは別だと気づかれ
「『ある』幸せがあるなら『ない』幸せがあったって良いじゃない」と
「ある」幸せへのこだわりを捨てられたそうです

本当に幸せな時には「幸せってなんだっけ?(笑)」なんて
考えたりしませんよね?

余談ですが…話の最中に言葉が途切れて
何ともキマリの悪い瞬間が訪れた時
日本では「(話に)スが入った」と言うのに対し
フランスでは「ほら、今、天使が通ったよ」と呟くみたいで

じゃあ、甲斐さんは「ポップコーンをほおばって」
その「天使たちの声に耳を傾けて」いらしたのかなあと…(笑)

そうそう!「恋に焦がれて鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす」って
声に出せない恋情に身を焦がすのかと思っていたんだけど

相手への思いだけでなく、思いを伝えられない自分を憐れむ気持ちが
「火」となって身を焦がすらしい
お勉強させて頂きました(笑)
コメント
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