どこ吹く風

旅のことを主に書く。

クライマックス

2005年10月05日 23時02分06秒 | 台湾-鹽水
 ロケット弾はまったく不意打ちで打ち込まれた、突然足元で火花と爆発音が響き硝煙の臭いが当たり一面に煙とともに漂った。
足元で爆発音がすると人間は飛び跳ねるものだ、私を含めて皆がピョンピョン飛び跳ねている。不意打ちを喰らったのでせっかく用意した装備を着装していないので騒ぎが一段落したあとで身に付けた。

 運転手はまるっきり準備していないのでタオルを1枚渡すと頬被りした。この件で気分はいやが上にも盛り上がる、阿鼻叫喚の世界だが遊び・お祭りの世界なので気はラクだ、もっともっと近寄りたいという気分になる。

 さらに前進する、前進とは言うもののたんに前に進むと言う意味であって、目的とする場所すら知らないのだから闇雲に大勢の人の流れに沿って進む以外に無い。通りは店構えのようだが全て大戸が閉じられている。お祭りだから休業しているのだろう。

 とある十字路にくると左手から行列風なもの、山車のようなものが向かってくる。日本の祭りの神輿とか着飾った人の行列とは違い、何か中心にゾロゾロという感じだった。十字路に全体が赤っぽい色の、網とベニヤに角材で組まれた山車が停まった。群集は遠まわしに眺めている、警備の人も半纏姿の粋なオニイチャンもいない、私は山車に近づき眺めた、中では数人の人が動き回っている。

 天井部分を持ち上げて何か作業をしている、側面ははロケット花火がビッシリ詰めてある、中の人たちは点火の準備をしているのだろう。
その様子を伝えに家族のところへ行く。通りの人はドンドン増えてくる、見物の人たちは逸れないようにそれぞれ手を繋いだり、電灯をかざしたりしながら行く。装備も様々でヘルメットに透明な風防が付いて物から、ダンボールで作った盾を持っている者などそれぞれで工夫している。

 私たちは保護メガネとタオルとフード付きのジャケットだ、遠くのビルから打ち上げられる花火に、UFO風の熱気球は間断なく飛んでいく、今か今かと背伸びしながら山車を見たり人々の流れや顔を見ていた。

 突然山車の屋根部分から光を煙と音が上がった、次の瞬間激しい爆発音とともにピュ~ンという空気を切りながら飛ぶロケット花火が飛び交った。水平撃ちもあるのでこちらの方にも飛んでくる。身体に当たる物、飛びすぎていく物、軒下の細い柱に身を隠しながら様子を見ている者、それぞれが飛び跳ねながらキャーキャー叫んでいる。

 身体や頬に痛みを感じるがそれどころではない、物陰や車の陰に隠れる。車のボンネットに仰向けになって空を見上げる若者が居た、花火が飛んでいく様が良く見えるのだろう、私も少しまねをした。

 山車の付近は花火の煙が立ち込めて何も見えない、しかし色取り取りの光が硝煙に映えている。山車の天井部からは未だ勢い良く花火が飛び出している。煙を通して若者が山車の近くまで突進するサマが見えた。若さと無謀は共通点があるようだ。

 暫らくするとさすがの花火も勢いが衰えてきた。爆竹の音が止み煙は残っている、先ほどの喧騒は何処へ行ったのやら・・・
落ち着きを取り戻すと身体の痛みが増してきた。衣服やマスクのをとって身体を調べると掠り傷ではあるが二箇所からホンノリ血が滲んでいる。同行者5名のとも無傷の者はいなかった。

 これは塩水まで来た証である、満足感があった。

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