ノースウェスト州の保健局では、マフィケン周辺の村々の住人に対し、体がかゆくなって黄色い発疹が出来た場合は、すぐに診療所で見てもらうように呼びかけている。保健局の職員が感染者の家を訪問したところ、犬も同じ病気にかかっていることがわかった。
農務省の家畜鳥獣・公衆環境衛生課が“虫”の標本を採取し、分析を急いでいる。何らかの種の昆虫の幼虫だと見られている。この“幼虫”の感染経路として最も疑われているのは、洗濯物である。次のようなプロセスで発病するのではないかと考えられている。
- 村人たちが洗濯物を干しているときに、何らかの昆虫が衣類に産卵する。
- 卵が付着した衣類を身に付けているときに、卵が皮下に侵入する。皮下で幼虫が孵化し、ある程度の大きさまで成長する。(または、皮膚に付着した卵から孵化した幼虫が皮下に侵入して、成長する)。
- 幼虫の成長に伴い、かゆみや腫れなどの症状が生じ、最終的に患部が化膿して、そこから幼虫が体外に出る。
この説に基づき保健局では、感染地域の村人たちに対し、衣類(特に肌着類)を着用する前に必ずアイロンを当てるように呼びかけた。
この“幼虫”が有害な細菌やウィルスを媒介して、深刻な感染症が生じる可能性もある。保健局では、現在、そのようなヘルス・ハザードも含めて現地で詳しい情報を収集すると共に、専門家たちの意見を聞いて対策を検討中だという。
なお、寄生虫による皮膚感染症自体は稀なことではなく、ダニ感染症(疥癬)、シラミ寄生症、クリーピング病(皮膚幼虫移行症)などがよく知られている。本件のように洗濯物を通じて感染する例としては、ヒトクイバエによるプチフライ症(皮下ハエ症)がある。ヒトクイバエとは、その名のとおり、幼虫が人間の皮下に入り込んで組織を貪り食うという恐ろしい昆虫である
屋外に干した生乾きの衣類を着用したり、湿ったタオルを使うと、そこに産み付けられた卵からかえった幼虫(プチフライ:ニクバエの一種、ヒトクイバエ)が皮膚に付着する可能性がある。幼虫は皮膚を通過して皮下に侵入し寄生して組織を食べるため、皮膚は炎症を起こし、一見10~20mmのおできができたように見えるが、非常に激しい痛みを伴い、幼虫の成長とともに炎症は悪化する。予防策としては、はだしやサンダル履きで歩かないこと、衣類を外に干す時は、地面や木の枝などに干さないようにすること、衣類は屋外から取り入れてからアイロンをかけるか、3日間はその衣類を着ないようにすることである
どちらにしても、衣類を日光にさらして干すこと自体は衛生上好ましいことだと思われるのに、逆の結果を招いてしまうなんて皮肉な話である。これも“本末転倒”に分類すべきか? ただ、そんな病気があることが知られているマラウイとは異なり、南アではこんな病気は前例がなく、村人たちにすればまったくの不可抗力であった。その辺を差し引き、次のように評点してお茶を濁しておこう。