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読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

春の果物を描く

2016年03月14日 | 水彩画

◇ 甘夏でこぽん

  
    clester F6 (中目)


  いつも今頃は春の果物を描く。今回は幹事の一人が自宅に成っている甘夏を持参してくれた。
 普通店先並ぶ甘夏には枝や茎は付いていない。絵を描くとなれば枝や葉っぱが付いてるのが
 断然良い。そこに今が旬のでこぽんといちご。イチゴはこの近辺でもいちご狩りができるハウス
 が多いが、今年は何処のいちご園でも成りが良くなかったそうだ。昨年の天候不順で苗の育ち
 が良くなかったとか。
  甘夏もでこぽんも、同じ柑橘類であるミカンと違って表皮の肌が荒い。これをどう表現するか
 が腕の見せ所であろうが、うまくいかない。ティッシュを丸めてリフティング(白抜き)する手法
 を紹介していたが、なかなかうまくいきそうにない。結局天然スポンジをパタパタ叩いてみた
 が甘夏の肌にはならなかった。
  いちごらしさを出すには種をどう表現するかにかかっている。種の近辺のハイライトをうまく
 処理すればそれらしくなる。また完熟していないいちごの先を少し薄いピンク色にすれば「い
 ちごだ」と分かってくれる。
                                              (以上この項終わり)

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『復讐の残響』ディビッド・ローン

2016年03月09日 | 読書

◇ 『復讐の残響』(原題: BLIND BAGE)  著者:ディビッド・ローン(David Lorne)
                      訳者:平田 敬   1998.6 新潮社 刊 (新潮文庫) 

  

  異色のサイコ・サスペンスである。
  舞台は風の町シカゴ。アメリカ第二の巨大な犯罪都市でもある。
  かつてハリウッドで活躍していた盲目の音響技師スパイク・ハーレックが主人公のシリーズ第3作目。

  ハ―レックは前作『音の手がかり』では掛かってきた電話から誘拐犯の所在を突き止め一躍英雄になった。
 今回の相手は病的な犯罪者ダニー・バリターノ。ダニーは、誘拐犯として追われていた自分の幼馴染の友人
 ニックを射殺した上に、自分を保釈違反の罪で刑務所に送ったシカゴ市警元刑事エドに復讐を企て、スーパ
 ーマーケットの駐車場で惨殺する。さらにエドに協力し誘拐犯ニックを追いつめたハーレックにも恨みを抱き、
 次の標的として狙う。
  殺されたヱドの元部下だったコワルスキー、その元相棒女性刑事デブラ(ハーレックの妻)、FBI捜査官
 マイクらは、次の標的はハーレックに違いないとと警戒を怠らなかったが、或る日不用意に散歩に出たハ―
 レックはダニーに捕まり廃屋に囚われる。バリターノはじわじわと相手を責め苦しめ、死にかける相手がも
 がき、のたうちながら死を迎える姿を見たいという病的な嗜好を持つ。そのために刑務所で身に付けた熔接
 技術を駆使し、水責め用の鉄の函を作り、ハーレックを閉じ込める。
  コワルスキーやFBI,妻のデブラ等はハーレックの囚われている場所を探し回る。

  バリターノには「赤毛でおっぱいが大きな娼婦」に異常な関心を示し、しかもことに及ぶやナイフや拳銃で
 殺害するという異常な性癖を持つ。既に2人の娼婦が犠牲になっている。デブラはこのバリターノの性癖に
 賭け、自分が囮となってバリターノの隠れ家(ハーレックの囚われている家)を突き止めようと嵐の街角に立
 つ。  
  そしてついにバリターノはこのデブラの網に引っかかった。
  バリターノとデブラの駆け引き、水責めから逃れようとあがくハーレック、別途の手立てでバリターノの家を
 突き止めようと苦闘するコワルスキーらの捜査隊…果たしてハーレックは水攻め函の窒息から逃れることは
 できるのか、スリリングな時間との競争が続く。
  クライム・ノベルでは日本よりもアメリカなどの方が銃やナイフなどが当たり前に使われるお国柄のせいか
 迫真性に富み断然面白い。
  このシリーズ第3作では、音を手掛かりとした犯人追跡ではなく、犯罪者の特異な性格、犯罪者の心理に
 潜む誇大妄想とサディズムを手掛かりに犯行解明に導くという点が意表を突く。

                                                      (以上この項終わり)

 


 柴田哲孝のハードボイルド『クズリ』を読む

2016年03月06日 | 読書

◇ 『クズリ』 著者 :柴田 哲孝  2015.11 講談社 刊

  

 柴田 哲孝の本を読むのは2冊目。綿密な取材で読ませた『下山事件―暗殺者たちの夏』は、著者柴田の
祖父が下山総裁暗殺の謀略組織の一員だっという因縁のある作品だけに実に迫力があった。
今度の作品はまさしくハードボイルドものであるが、殺しの場面が何度かあるものの、シチュエーションが平板
でこの本の帯にある「ハードボイルドサスペンス」というほどの緊迫感がない。登場する人物は主人公の殺し屋
”狼貛(ロンホワン)”、その愛人”春燕”、韓国の麻薬密売人、中国マフィアの殺し屋、在日中国人社会の顔役、
警察庁外事情報部国際テロリズム対策課担当官中瀬と荻原等々ハードボイルド作品としては不足はないもの
の、主人公以外はさほどの存在感がない。しかも主人公も国際手配のテロリストとしては緊迫感に乏しいし、
警察庁担当部署もいまいち追跡の焦点がぼけている。少し気になるのは中国人の会話は中国語そのままが
多いこと。中国黒社会の使う言葉が多いが勉強にはなる。期待していたがこの作品にはがっかりした。

 東京と横浜で立て続けに拳銃射殺事件が発生した。その銃弾の線条痕は32年も前に「クズリ」としてその筋
では知られた殺し屋の拳銃から発せられた銃痕の線条と同じものであった。亡霊のごとく甦った「クズリ」とは。
実はウクライナ人に追われて横浜に上陸した”狼貛”は、かつて知られた”クズリ”のロシア語:グログロの忘れ
形見であった。クロアチア国籍の「クズリ」こと「グーロ・ヴラトコヴィチ」は横浜中華街の料理店の屋根裏に潜み、
隠してあった拳銃S&W/M36を使い殺しの仕事を続ける。そこで深圳生まれの中国人”春燕”識り合い恋人関
係になる。韓国・中国・日本での麻薬取引のもつれから、卸元暴力団、密売人、仲介者入り乱れてのの殺し合い
が始まる。終盤で熾烈な銃弾戦になり盛り上がるのであるが…エピローグでがっくり。

ちなみに、「クズリ」(貂熊、gulo gulo)とは、体長1メートルほどのイタチ科の哺乳類動物。主にタイガ、ツンド
ラ地帯に生息する。雑食であるが、クマやムースなど自分より大きな猛獣にも平気で挑み、脊椎を噛み砕き死
に至らせるという凶暴性がある。(Wikipedia)
                                                       (以上この項終わり)


NHKルポルタージュ『老後破産―長寿という悪夢』

2016年03月02日 | 読書

◇NHKルポルタージュ『老後破産―長寿という悪夢』を読む
                        執筆者「NHKスペシャル取材班」
                        2015.7 新潮社 刊

  
   
   
2006年に放送されたNHKスペシャル『ワーキングプア』に次いで孤立する認知症高齢者、
  そして今回は『老後破産』。今日本社会が抱える頭の痛い問題のひとつに取り組んだ。
  2014.9.28放送された番組で紹介し切れなかった高齢者問題の現実も含めて描き直した
  ルポが本書の内容である。

   26日の新聞で昨年行った国勢調査の集計の一部が明らかになった。高齢者の独身所帯
  が明らかに増えた。およそ600万人。年収が生活保護水準を下回る人がおよそ半数いる
  という。このうち生活保護を受けている人が70万人。残る人たち200数10万人の人たちは
  年金収入だけでぎりぎりの生活を送っている。もし病気や介護が必要になったりすれば、
  たちまち生活が破綻してしまう。これが「老後破綻」と名付けた現代日本社会の
実態である。

   取材スタッフは一過性のインタビュ―だけではなく、何カ月にもわたってフォローを行ってい
  る。
   「長寿という悪夢」と副題にあるように、長寿は必ずしもすべての人にとって幸せではない。
  健康寿命の平均が72歳といわれるように平均寿命が83歳といっても安心できない。病気で
  あっては単に生物学的に長生きしているにすぎない。しかも健康であっても生活保護ギリギリ
  あるいはそれ以下の生活にあえいでいる人たちが何百万人いるかもしれないという現実を
  知ると、暗澹とせざるを得ない。十把ひとからげで一億総活躍社会などと絵空事を唱えてい
  る場合ではないのではないか。

   「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という日本国憲法
  第25条の掲げる生存権の拠りどころ。生活保護の対象となるには厳しい条件がある。自宅
  があって、多少の預金があって、年金も貰っている。こんな人は生活保護は受けられない。
  しかしそれでも老後破産をまぬかれない。それはなぜなのか。生活保護予備軍というか、隠
  れ生活保護者はなぜ発生するのか。本書はその実態の一部を詳らかにしてくれた。

   介護サービスが利用したくてもできない。医者に行きたくても行けない。要は自己負担のお
  カネがないから。生活保護世帯になれば介護サービスや医療費も免除になるのに、ボーダ
  ーの人たちはこの恩恵は受けられず生活費のねん出にあえいでいる。いわば限界低所得
  者である。
   では家族がいればこうした状況から抜け出せるのかというと必ずしもそうではない。中途
  半端な家族の関わり合いで老後破産回避の道が遠ざかることも多いという。
   老後破産の高齢者を「仕方がないと切り捨てるのか、問題解決に向けて一歩を踏み出すの
  か」このルポの取材陣の訴えはこれである。

  
 年金だけでも夫婦二人なら何とかやっていけた。しかしどちらかが先に亡くなると途端に
  生活は苦しくなる。年金は減る。住宅費,光熱水料は変らなく掛かる。病気にでもなって身
  体が不自由になったら家事も満足にできなくなる。この人たちの多くは、国民の税金で賄う
  生活保護は出来れば受けたくないという気持ちがある。一種のプライドと罪悪感である。だ
  から食費1日100円で我慢しながらもがんばっている。

   ルポルタージュの内容は、事実が淡々と語られるだけに迫力があって、いちいち身につま
  される。「
若いうちににちゃんと老後のことを考えていなかったからだ」、「自業自得だよ」、
  「自己責任でしょ」では片づけられない事情がある。
   進行する少子高齢化、拡大する貧富の格差、限界困窮階層の増大これらがもたらす社会
  の歪み現象…先行きに明るい展望の開けない社会に不穏な空気が生まれなければいいが。
  80年前の2.26の日を思う。
 
                                             
(以上この項終わり)