◇ 『復讐の残響』(原題: BLIND BAGE) 著者:ディビッド・ローン(David Lorne)
訳者:平田 敬 1998.6 新潮社 刊 (新潮文庫)

異色のサイコ・サスペンスである。
舞台は風の町シカゴ。アメリカ第二の巨大な犯罪都市でもある。
かつてハリウッドで活躍していた盲目の音響技師スパイク・ハーレックが主人公のシリーズ第3作目。
ハ―レックは前作『音の手がかり』では掛かってきた電話から誘拐犯の所在を突き止め一躍英雄になった。
今回の相手は病的な犯罪者ダニー・バリターノ。ダニーは、誘拐犯として追われていた自分の幼馴染の友人
ニックを射殺した上に、自分を保釈違反の罪で刑務所に送ったシカゴ市警元刑事エドに復讐を企て、スーパ
ーマーケットの駐車場で惨殺する。さらにエドに協力し誘拐犯ニックを追いつめたハーレックにも恨みを抱き、
次の標的として狙う。
殺されたヱドの元部下だったコワルスキー、その元相棒女性刑事デブラ(ハーレックの妻)、FBI捜査官
マイクらは、次の標的はハーレックに違いないとと警戒を怠らなかったが、或る日不用意に散歩に出たハ―
レックはダニーに捕まり廃屋に囚われる。バリターノはじわじわと相手を責め苦しめ、死にかける相手がも
がき、のたうちながら死を迎える姿を見たいという病的な嗜好を持つ。そのために刑務所で身に付けた熔接
技術を駆使し、水責め用の鉄の函を作り、ハーレックを閉じ込める。
コワルスキーやFBI,妻のデブラ等はハーレックの囚われている場所を探し回る。
バリターノには「赤毛でおっぱいが大きな娼婦」に異常な関心を示し、しかもことに及ぶやナイフや拳銃で
殺害するという異常な性癖を持つ。既に2人の娼婦が犠牲になっている。デブラはこのバリターノの性癖に
賭け、自分が囮となってバリターノの隠れ家(ハーレックの囚われている家)を突き止めようと嵐の街角に立
つ。
そしてついにバリターノはこのデブラの網に引っかかった。
バリターノとデブラの駆け引き、水責めから逃れようとあがくハーレック、別途の手立てでバリターノの家を
突き止めようと苦闘するコワルスキーらの捜査隊…果たしてハーレックは水攻め函の窒息から逃れることは
できるのか、スリリングな時間との競争が続く。
クライム・ノベルでは日本よりもアメリカなどの方が銃やナイフなどが当たり前に使われるお国柄のせいか
迫真性に富み断然面白い。
このシリーズ第3作では、音を手掛かりとした犯人追跡ではなく、犯罪者の特異な性格、犯罪者の心理に
潜む誇大妄想とサディズムを手掛かりに犯行解明に導くという点が意表を突く。
(以上この項終わり)