読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

 『警視の週末(NOW MAY YOU WEEP)』を読む

2015年02月01日 | 読書

『警視の週末』(原題:NOW MAY YOU WEEP)
          著者:デボラ・クロンビー(Deborah Crombie)
          訳者:西田 佳子
          2007.7 講談社 刊 (講談社文庫)


  

 
先週2泊3日で那須高雄温泉に行ってきた。家を出た日は快晴であったが、翌日の
30日は粉雪ではあるが一日中雪で、宿を出ることもなく終日読書と温泉入浴に明け
暮れた。
 そして3日目。5センチほど積もった雪も上がり、茶臼岳山麓の中腹、海抜1,000m
にある旅荘の3階の窓から見下ろす那須高原はきらきらと朝日に輝いていた。
  那須高原とその近辺には「那須七湯」といって、那須湯本、大丸、北、三斗小屋、
、八幡、弁天、高雄温泉など著名な温泉がある。このうち高雄温泉と那須湯本(鹿の
湯)だけが硫黄分を含む白濁の湯で、江戸時代の「諸国温泉薬効鑑」では大関の
草津温泉に次いで関脇の座を占めている。ちなみに小結は諏訪である(西国の大関
は有馬温泉で関脇は城崎温泉)。

 今年初めての温泉旅行先をいつもの南伊豆ではなく那須温泉にしたのは、白濁の湯
と読書三昧を楽しむのが狙いであった。結果は狙い通り。往復の電車内での読書は、
那須があまりに近くておちおち読書もできなかったが、宿では雪に見舞われたおかげ
で外出も出来ず、酒を片手に窓外の小雪を見ながら落ち着いて本を読むことができた。
少し疲れたらうたた寝。気が向いたら温泉につかる。そのうちに夕食の時間になって生
ビールや地酒などを楽しむ。これを極楽と言わずして何というか。

 そこで持って行った本はデボラ・クロンビーの『警視の週末』。文庫本であるが、本体で
580ページある。帰りの電車でも一生懸命に読んだが読み切れなかった。
 ロンドン警視庁の警視ダンカン・キンケイドと女友達で同棲中の警部補ジェマ・ジエイ
ムズ。このコンビのシリーズ作品は世界中で翻訳され人気という(本作品は9作目)。
 『警視の週末』というが、実は本作では警視のダンカンは後半になって登場するが、事
件解決にはさほど貢献していない。
 
 相棒のジェマが友人のヘイゼルに誘われて出かけたスコットランドのハイランド(スコッチ
ウイスキー発祥の地)で、
殺人事件に巻き込まれた。料理教室の主催夫婦、参加者が疑
われる。殺されたのがヘイゼルの元彼とあってジェマは地元警察の警部とケンカしながら
も独自に犯人捜しの奔走する。
 事件の舞台がスコットランドのハイランド地方。しかもヘイゼルも被害者である彼女の元
カレもかつては著名なスコッチ蒸留所の末裔であって、3代も前の祖先の軋轢が事件の
背景のあるとあって、スコッチの製造過程、ハイランド地方の自然環境、ウィスキーの味
わい方などもていねいに説明されていて勉強になる。ちょうどNHKの朝ドラ「マッさん」で
スコッチウィスキー発祥の地ハイランドの話が出てくるので興味津々であったが、もとも
とハイランドの蒸留所の多くは、農家の主婦がたった一つの樽から始めたものだというこ
とも初めて知った。ウィスキーの琥珀色はピート(泥炭)で燻蒸されたオオムギの麦芽が
生み出したものと思っていたが、実は蒸留過程のポットスティルから出た蒸留液は無色
透明であって、オークのカスク(樽)で熟成する過程であの魅惑的な琥珀色が作られる
ということを知った。樽の中のウィスキーは熟成中に多いときは30%も蒸発する。これを
エンジェルス・シェア(天使の分け前)という。

 
 シリーズものなので、互いにバツイチのダンカンとジェマの子供との軋轢、親友ヘイゼ
ルの夫婦関係の崩壊、ヘイゼルの大学時代の友人ルイーズと夫やその弟、蒸留所の
買収を狙うバイヤー等々いろんな人物が登場し、ややこしい話も出る。また多少ご都合
主義的な部分もあり鼻白むところもあるが、謎解きよりもハイランドの自然環境の巧みな
描写とウィスキーの話で十分楽しめた。
                                        (以上この項終わり)

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