読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

ロバート・ゴッダード『封印された系譜』を読む

2013年01月29日 | 読書

◇ 『封印された系譜(上・下)』(原題=FOUND WANTING) 
                   著者: ロバート・ゴッダード(Robart Goddard)
                   訳者: 北田 絵里子  
                    2011.4 講談社 刊 (講談社文庫) 

    

  R・ゴッダードの最近作(20作目)。
  英国外務省に勤務するリチャード・ユースキン、出勤途上に別れた元妻に呼び出され、
 ケンブリッジ大学時代の親友マーティのためにアムステルダムまである品物をとどけて
 ほしいという頼みをきく羽目になる。
 元妻ジェマはユースティンと別れた後マーティと夫婦になった間柄。
  アムステルダムに届けるのは今は亡きマーティの叔父クレムの保存された書簡が入
 ったアタッシェケース。
  かつて大学時代の二人は帝政ロシアの最後の皇帝ロマノフ一族の系譜に興味を持ち、
 マーティの叔父クレムがかつて警視庁主任警部のころ、英国訪問中のニコライⅡ世の長
 女と次女を反逆者の襲撃から救った功績で皇帝から直々に謝辞を賜ったという自慢話を
 聞いていたこともあって、クレムの書簡の中にはロマノフ一族の膨大な隠し財産の謎が
 隠されているのではないかという期待がある。また、ロマノフ家ただ一人の生き残りアナ
 スタシアを自称するアンナ・アンダーソンとは本物なのか。はたしてこの真相も解き明か
 すことが出来るのか。歴史の謎ときの証拠をめぐる争いが展開される。
 
  このアタッシェケースの書簡をめぐって、トルマーというコングロマリット・ミョルニルの会
 長をはじめアナスタシアの足跡を追うアメリカ女性レジャイナ、いろんな人たちが暗躍し、
 何人もの人が死ぬ。
    舞台は英国ロンドンだけではなく、ブリュッセル、ケルン、ハンブルク、オーフス、コペン
 ハーゲン、ストックフルム、バルト海、ヘルシンキ、フィンランドのパイネン湖など北ヨーロ
 ッパ各地が舞台となる。紀行ミステリーと呼ばれる所以。

  主人公のリチャード・ユーズデンはとりたててタフガイではないし、銃も初めて持ったと
 いう普通の人であるが、なにしろ主人公なので不思議と危難をくぐりぬけ、最後に握った
 銃で悪役トルマーを撃ち倒す。 
  事件後ハワイトホールの外務省を辞め、トルマーの元妻が主催する財団で働くことにな
 る。
  R・ゴッダードの作品は何冊も読んでいるがこの作品はまるでケン・フォレットやジャック
 ・ヒギンズ張りの諜報員もののようなテンポの展開で、いつもの緻密な謎解きの作品とは
 また違った面白さがある。

 (以上この項終わり)

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