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癌と生きる 依存症と生きる

命がある限り希望を持つということ

ホルモン剤治療

2014-05-30 10:36:50 | 癌のこと
もう2週間以上前になるが、福島の友人一家が
往復2600キロを旅して、会いに来てくれた。私のためだけ
じゃないから、と言ってはくれたが、私の病気が大きなきっか
けだったことは疑いようがなく、うれしいやら、申し訳ないやら
で胸がいっぱいになった。

彼女とはすでに30年来のつきあい。お互い子育てをしている時期は
年賀状のやり取りくらいになっていたが
三年前の地震と原発事故の起きた時、2日ほど連絡が取れず
私は生きた心地がしなかった。そしてみんなが無事だと分かって
体中から力が抜けた。

そこから「言いっぱなしで聞きっぱなし」のメール交換が始まって
早3年。今でも福島の人たちには、当事者でなければ分からない
苦しみや怒り、悲しみ、そして不安や恐怖を抱えながら生活している。
久しぶりに会えて、飲んで笑って、思う存分おしゃべりしたけど
その言葉の端々にも、やはり放射能やこれからの生活への大きな
不安がのぞく。

原発事故が起きた時は、私もブログに記事を書いたりもしたが
部外者の意見や感想はあまり意味がない。
それで、いわきで「日々の新聞」という週間の新聞の発行に
携わっておられる安竜昌弘さんの「いわき日和」というブログ
にリンクをしている。風化していく震災や原発事故の記憶。
その時現地では何が起こり、どういう状況だったか。そして
その後、さらに現在、いわきの人たちは何を考え、どんな風に
暮しているのかの一端が、当事者の言葉で語られている大切な
記録だと思うからだ。

私は、依存症の問題や、震災、原発事故を経験して、この国を
動かしている上層部の人たちをまったく信用しなくなった。
ブログを始めた頃は、なかば腹いせや八つ当たりもあって
政治批判も書いた。しかし、最近はだいぶん人間が丸くなって
(嘘です)というより「彼らには何を言っても無駄だ」という
気持ちのほうが強くなって、あまり批判的なことは言わなくな
っていた。

けれども癌を告知されて、初診の病院で医療不信に陥り
さらにこの病気のことを調べていくうちに
「国や厚労省、医療界と製薬会社が推進する癌治療なんか
信用できるものか」という反抗心がムラムラと起こったことも
ものの勢いで無治療を選択した理由の一つだった。

しかし、少々落ち着いて、家族の抱える不安や、本当に
親身になって心配してくれる熊本や福島の友人の気持ち
を考えると、やはりそんな高校生のヤンキーみたいな
反発の仕方はさすがにあまりにも大人気ないかと反省もし
改めてホルモン剤治療を受けることにした。薬はアリミ
デックス錠。乳癌細胞の増殖を促すエストロゲンの合成
を抑える働きがあるのだという。

実は最初に治療の説明を受けた時に家族が「ホルモン
剤の治療はどうですか?」と先生に聞いたが、効ガン
剤をやらずに、ホルモン剤や放射線治療という選択は
ないという答えだった。それが電話で「抗がん剤は
やりません」と返事をしたら「それではホルモン剤を」
と言われて「あれ、この前それはできないって言わなか
ったっけ」と私の頭の中では??マークが点灯した。
その後再び考えを整理して、周りの人の不安を軽減でき
当面ガン難民にもならないための手段として、ホルモン
剤治療を選択したというわけだ。

先生は今回も「やはり一番効果があるのは効ガン剤」と
勧められたが「私がホルモン剤治療を受けようと思う
一番の動機は、病気がどうということではなく、家族の
不安を少しでも軽くしたいのと、後々周囲の人たちに
後悔の思いを残したくないためです」と説明したら
了解してもらえた。しかもホルモン剤治療に関しては
私の嫌いな同意書のサインもいらなかった。

というわけで、私の癌治療は「これは嫌です。
これをやります」という完全なオーダーメイド。
まだ飲み始めたばかりなので、副作用などは未知数。
ここに至るまでに、思考の混乱や論理の錯綜がたくさんあった
ことは自分でも自覚しているが、そこはまあ状況が状況なので
止むを得ないと大目に見ていただければと思います。

ただし私は自分のこととなると恐ろしくヘタレなので
たぶん何か出てきたら早々にギブアップしそうではあるが。
最低限こうしてモノ書きができる間は、治療もがんばろうかなと
柄にもなく殊勝なことを考えている今日この頃です。

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これからの治療について

2014-05-09 14:03:23 | 癌のこと

先月家族と一緒に検査の結果を聞きにいって
効ガン剤治療についての説明と同意書を預かってきました。
そろそろ返事をしなければいけなくなったので担当の先生に電話。

「あの、家族とも相談して抗ガン剤はやらないことにしたのですが」
「そうですか。それではホルモン治療のほうを」
「あっ、いえ、化学的な治療はやらないことにしました。これから
痛みが出たら痛み止めなどの緩和ケアをしていただけたらありがたい
のですが。そのために必要な検査は受けますので」
「ああ、分かりました。それじゃあ、経過を見ていきますので6月か
7月か都合のいい時にまた電話で予約を入れてくださいね」
「はい、ありがとうございます」

がんの拠点病院にもなっている総合病院なので、無治療といったら
なんていわれるかなぁと、どきどきしながら電話したのですが
こんな感じで拍子抜けするくらい、あっさりしたやり取りでした。

検査の結果を聞いた時にも、家族の誰もが「今すぐ治療してください」
「できることは何でもしてください」といった熱い雰囲気ではなかった
ので、先生にもそれなりに伝わるものがあったのか。
吉野さんの本を買いにジュンク堂に行った時、ガン治療についての
本が置いてある棚の隣の棚が、まるまるガンの標準治療にアンチの
立場をとる人たちのコーナーだったのにはちょっとびっくりして
「えっ、最近は治療しないのがトレンドなのか。じゃあ、もしかして
あたしって最先端?」などとお馬鹿なことを考えたりもしました。

最初にガンを告知された時から治療をしないという気持ちは、おおよそ
固まっていました。私には信仰心というようなものはほとんどないのですが
それでも人間は人知を超えた領域には過度に踏み込むべきじゃないと
思っています。その私にとって、末期ガンという今の状況は
もう人間があれこれできるラインを超えているように思えたわけです。

まるでSF映画のセットのような検査の機械で、体内の隅々を透視。
内臓は輪切りの画像。「骨ミンチってすごい名前やなぁ。どんな検査
なんやろう」とびくびくしてましたが、正解は骨シンチ(アチャー)
同意書にサインする度に、まるで自分の死刑執行の書類にサインを
しているような気分で、精神衛生上はなはだしくよくない。
でもこんな意気地なしでわがままな私なのに
心配した治療難民にもならず経過観察していただけるということで
病院やドクターの優しい対応には心から感謝しています。


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読書な日々

2014-05-06 15:44:52 | 癌のこと
G.W最終日。とはいってもダンナは祝日は関係ない仕事なので あまり実感はないのですが
昨日は珍しく糸島のほうの産直のお店に二人で 野菜や魚を買出しにいきました。
なんと350円という激安で仕入れたアンコウを、ダンナがさばいてくれて 夜はアンコウ鍋をおいしく
いただきました。

癌の診断が確定してから、三十数年ぶりに仕事を辞めたので現在無職。 毎日何をしているかと
いうと、掃除や洗濯など定番の家事をすませた後は ひたすら読書。病気がわかってからお見舞
いのつもりなのか子どもたちが 大量に運び込んできた本を片っ端から読んでいます。

まず癌関係の本が二冊。それに自分で買った、吉野実香さんの「癌と闘わない」 伊坂幸太郎の「モダ
ンタイムス」横山秀夫の「64」今野敏の「ヘッドライン」 吉田修一の「さよなら渓谷」と「東京湾
景 」映画になった「探偵はバーにいる」 と「半沢直樹」の原作「オレたちバブル入行組」。私は自分
では あまりベストセ ラー系の本を買わないので、どれもとても面白く読みました。 他にも映画館で
「白ゆき姫殺人事件」を観て、DVDで「そして父になる」を観て と、病気を口実にイン ドアライフを
満喫しています。

家に一人でいる時はあまりTVはつけないのですが、先日たまたまつけた らなんと WOWOWで「パン
ドラ」というドラマの無料放送をやってました。しかも「パンドラ」 シリーズ の第一作が全話無
料というのですごく得をした気分で録画しましたが これがタイムリーというか何と いうか、癌が
治る奇跡の効ガン剤「パンドラ」の 話。その夢の抗ガン剤をめぐって、政治家やら、大学 病院の
偉い先生やら、製薬 会社の人間やらが、文字通り血みどろの暗闘を繰り広げるという「アウトレ
イジ」 も真っ青な、全員悪人みたいなお話でした。

これとほぼ同時進行で、海堂尊の この前ドラマになった「螺鈿迷宮」の原作を読んでまして、こち
らは末期癌の 患者たちのいわゆる終末医療をめぐるミステリー。患者が続々謎の死を遂げる お話で
この 二つを抱き合わせで観たり読んだりしたら、もう恐ろしくって 病院になんかとても行けません
という のは半分冗談ですが(半分は本気)

本や映画やドラマのいいところは、何といってもそれに集中している間は、 現実のいろいろな悩みや
問題を忘れられることでしょう。それならギャンブル だってゲームだって、現実を忘れられると言わ
れるかもしれません。確かに 現実逃避という側面では同じと言えなくもありません。けれど小説や映
画が ギャンブルやゲームと決定的に違うのは、その世界が人間の玉手箱(まあ それこそパンドラ
の函のこともありますが)だということだと思います。

こうして手当たり次第に読んでいると、今という時代がどういう時代なのか どういう社会なのか、
どういう人間たちが、どういう風に生きているのか 生きて、働いて、傷つけて、憎んで、愛して。
色々な人間たちの考え方や 息遣いを理解すること、感じることができます。自分ではない人の生き
様 を生きることができます。その経験が、現実の人生を生きる時に、他人と 関わるための大きな
助けにもなります。

これまでの人生で、自分の手には 負えないほどの問題が起きて、精神的に も本当にどうしようもな
い状況に 陥った時でも、本を読むことは止めませんでした。書物の中に 答えを求めた というわけ
ではありません。本を読むことで、小説の中の誰かの人生に 出会うこと で、小さく縮こまってしま
った自分の脳を広げることができる ただ単純にその感じが好きなのだ と思います。

ここにきて、高校生の頃以来と言ってもいいくらい、まさに読書三昧の 日々を送れていることは
何やかやと大変だった私の人生に対する 神様からのささやかなごほうびなのかもしれません。


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乳癌の告知(その2)

2014-04-28 08:46:42 | 癌のこと

このブログを書き始めたのは2008年のG.Wの頃でした。
それから山あり谷ありで、そろそろ7年目に入ります。
初めはダンナのギャンブル癖と繰り返す借金に疲れ果てて
「王様の耳はロバの耳」ではないけれど どこにも吐き出しようのない気持ちを吐き出す場所として
ブログを書いていました。

ダンナの借金 を司法書士さんにお願いして任意整理をしてもらい完済できたのが2年前。
その間ずっと考え続けたのが、ギャンブル依存症はこれほど深刻な問題なのに
なぜほとんど有効な 対策がこうじられておらず、広く知られてもいないのかという疑問と怒りでした。

 それで個人の力でできることはほんのわずかですが、最近2年ほどは、
家族のギャンブルの問題で 苦しんでおられる方や
ギャンブル以外でもアルコールや最近ではネットなど様々な依存症のことで
悩んでおられる方のために、少しでも具体的に役に立つ情報を
発信できるようなブログにしよう と心がけてきました。

そして先日私自身のことで、癌を告知されるという大きな変化がありました。
 紹介を受けた総 合病院で、MRIやらCTやらフルコースの検査を受けて
先週の金曜日に家族と一緒に検査の結果を聞 きにいきました。

 左腋のリンパ節とあとは肝臓にそれらしき転移がパラパラ。
癌のステージとしてはⅣ、いちおう末期ということになります。
 ただ腫瘍マーカーの値は正常値であるとか、 患部以外の部分は
健康なので生活は普通にしていいとか、なかなか微妙な判定ではありました。

 現時点では手術はできない、まずは患部を小さくし、転移を防ぐためにと
お医者さんが強く勧められた、というかそれ以外には選択肢がないという風に
言われた効ガン剤治療(それも体が健康な 今のうちに強力なやつをというの
にはちょっとビビりました)については家族全員が反対ということで意見が一致しているので
そこはホッとしています。

 治療が効果をあげる確率はおおよそ30%程度。10人のうち3人のほうに入るか、
ダメな7人のほうに入るかは「やってみなければ分からない」のだということは
説明してくれたのが まだ若い女の先生だったので、漠然とではあるけれど認めていました。
 家族に対しても、とても心 配してくれる友人や職場の人に対しても、こうなるまで放置した
ことについてはまさに土下座でもして謝るしかありません。

 正直に言えば私が積極的な癌治療をしないという選択をしようとしている根底には
依存症の問題や 震災や原発事故を通じて感じ続けた、今の社会を動かしている上層部の人たちに
対する強い不信感や 怒りがあることも事実です。けれどそれが一番大きな動機というわけではありません。

 幸い私の乳癌は患部以外の他の部分はわりに普通です。

超のつく肉体労働だった仕事を辞めてからは体もずいぶん楽になったし、

特に辛い症状も今のところはありません。

ならばその健康な部分を 大切にして、自分がやろうとしていることや

やりたいことをやりながら今日一日を有意義に過ごし ていきたい。

 前にも書きましたが、依存者の家族との生活は、本当に「今日がなにごともなく 平穏に終わった」
という、そういう毎日の積み重ねでした。一年後、三年後、あるいは五年後 を想定することはできません。
それは依存者本人も同じで、今日一日ギャンブルをせず、平穏に 心身ともに健康に過ごせたことが
すなわち回復なのです。

 それで私なりにいろいろ考えた結果改めてこのブログのタイトルを「癌と生きる依存症と生きる」 にしました。
心ある方からは「そんなヤなものとばっかり生きないで、ほらもっとおいしいものを 食べるとか
おしゃれをするとか、楽しい生き方が他にいくらでもあるじゃない」と諭されそうですが
こればかりは持って生まれた自分の性癖というか何というか。

「癌を告知された」と話した時にダンナは最初「自分の責任だ」と言っていましたが 私としては
こうして自分が考えてみてもどうなるものでもないようなことをいっぱい抱え込んで ああでもない
こうでもないとあれこれ考えるせいでいつも頭の中が重たい、それも原因の一 つかなと思えるので
ダンナに責任転嫁をするつもりはありません。

 

 

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乳癌の告知(その1)

2014-04-20 08:08:28 | 癌のこと
先月の中旬に乳癌を告知されました。
長い間ダンナのギャンブル依存症に悩まされ、7年前に病気のことを知って
同時に司法書士さんにお願いして債務整理をし、2年前にその返済も終わって、
今後に向けて少しづつ生活を立て直しはじめたその矢先。

 今年の正月に読んだ高村薫さんの「冷血」の中の「巷には、俗に言う『ツキ
のない人生というやつがごろごろしているが、ここまで絵に描いたように不運
が続く男はほんとうに珍しかった」という一文が思わずフラッシュバックして
しまいました。

 その「絵に描いたように不運が続く男」戸田吉生は、クリスマスの前夜に歯
科医師宅に押し入り、幼い子供を含めた一家四人を惨殺した犯人のひとり。子
どもの頃から歯が悪く、長じて犯罪者となってからも、刑務所と歯医者通いを
反復する人生。
 殺人で逮捕されてからも、事情聴取よりまずは歯科の治療という状態だった
戸田に、追い打ちをかけるように歯肉癌が見つかったというくだりでした。
まったくこのブログを読まれている方からは「えっ、ネタじゃないの?」と思
われそうな展開になってしまいましたが事実です。

 左胸にかなり大きな腫瘍があるのに気づいたのは昨年の五月。「あれ、これ
は何?」とは思いましたが、たぶん子どもにおっぱいをやっていた時にかかっ
た乳腺炎の名残が、更年期になって慢性化したんだろうと思って、取り合えず
湿布をして放置してました。

 が、その内に表面が破れて何だかすごいことになってきました。さすがに
「ばい菌でも入ったら」と不安になって病院にいったら、いきなりの癌告知。
「左の乳癌で腋のリンパ節に転移。手術はできない」とのこと。
 実は私はそもそも「癌」というのは、体の奥深くにこそっと出来ていて、
精密検査みたいなことをしない限りみつからないものだと確信していたので、
乳癌に半年以上せっせとサロンシップを貼っていたバカ女ということになり
ます。

 その初診の日、エコーとマンモと生検というのをやって支払いが2万円。
「来週MRIを」と言われたので「それ、幾らですか?」と聞いたら「3万円
くらい」と言われて愕然としました。
「次の検査は月末にお給料が出てからではだめですか?」と言ったら、医師
は信じられないという表情で「経済的に厳しいなら生活保護ということも考
えたら」みたいなことを言いました。
 私としてはこの一連のやり取りにもの凄く違和感がありました。
 その日もし食事をしてなかったら、いやおうなくMRIまでやらされていた
はずで「何?この前のめりな感じは」と思いました。しかも数分前に癌を告
知した人間に「生活保護」という言葉を発する無神経が信じられなかったの
です。

 ダンナは普通に働いていますから治療のために保護を受けるとなれば、離
婚するか、ダンナが仕事を辞めて無職になるかというような話なわけです。
目の前にいるのは、家族もあって生活もある心と体を持った一人の人間なの
です。それを無視した「まずは治療ありき」の医師のこの姿勢は、普通の人
間の常識ではあり得ないと思えてしまったわけです。

 結局経済的な問題なども相談に乗ってもらえるという総合病院に紹介して
もらうという選択をして紹介状を書いてもらい、医師の苦虫を噛み潰したよ
うな顔をものともせず、そこを受診するのは次の給料が出てからという希望
を押し通して初診を受けたその病院とは縁を切りました。

 次の受診までには半月近く間があるので、いつものことながら癌という病
気についてや、治療法についてなどを主にネットでざっくりと調べました。
まず癌という病気自体が、個人の細胞もっと言えば遺伝子というレベルの、
とても個体差の大きな病気なのではないのかということです。

 病気の原因となるものも特定されているわけではなく、私のように進行
していれば、これなら大丈夫という確定した治療方法があるわけでもない。
 というより、すでに治癒という次元はとっくに超えて、延命をどうする
というレベルなのです。そしてどういう治療を選択してもすべてケースバ
イケースで、まさにやってみなければ分らないのだという当たりまではな
んとなく理解できました。

 そこで現在の癌治療は主に手術や抗ガン剤、放射線によって癌細胞にダ
メージをあたえ、他の臓器への転移や再発を防ぐことで、病気の広がりを抑
えるという治療方法なのだと思います。けれど癌の細胞にダメージを与える
ほどの治療は、当然健康な細胞にも影響を及ぼすはずです。つまり治療のメ
リットとデメリットは、私のような進行癌の場合はハーフハーフ、これまた
やってみなければ分からないわけです。

 だからこそ、有名人の人で、手術にしろ治療にしろ、最高水準の治療を
受けたはずの方が術後数ヶ月、あるいは一年未満で亡くなるというような
事例が起こるのだと思いました。

 そうこうする内に吉野実香さんという方の「癌と闘わずに。。」という
ブログに出会いました。吉野さんは乳癌を治療せず、すでに余命宣告され
た期間も過ぎておられますがとても自然体で、やさしいご主人とお子さんと、
3匹の猫ちゃんたちと、毎日を楽しく充実した時間を過ごしておられる。
 
 その感じが今の自分の思いに一番ぴったりきました。いろいろ見たり聞
いたりしても、私には医学的な難しい理屈はわかりません。でも同じ時間
とエネルギーを使うのであれば、それは癌という病気と、勝敗の分からない
闘いをやるよりも、自分がやりたいこと、やろうと思っていることのため
に使いたいたいとすんなりとそう思えました。

 けれどこの決断と結果はあくまでも自己責任です。それであとあと死ぬ
ほど苦しまないという保障は、これまたどこにもありません。
 自分ではそれを納得できても、たとえば家族に、同僚に、あるいは親し
い友人に何をどう伝えるかが悩ましいところではありました。(続く)