宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究チームは、小惑星探査機「はやぶさ2」による小惑星「リュウグウ」の探査活動に基づく研究成果をまとめた論文が、イギリスの科学雑誌「Nature電子版」に2020年3月16日(日本時間3月17日)に掲載されたと発表した。
論文の内容は次の通り。
小惑星探査機「はやぶさ2」到着前の予測に反し、小惑星リュウグウは隙間だらけの物質でできた天体であることがわかった。
リュウグウのようなC型(炭素質)に分類される小惑星は46億年前の太陽系形成時の始原的物質を保存している「化石」と考えられる。しかし、どんな物質がどのように集まって形成した天体なのかは、ほとんどわかっていない。
同研究チームは「はやぶさ2」に搭載された中間赤外線カメラ(TIR)を用いて、史上初のC型小惑星の全球撮像を連続1自転分実施し、取得されたデータを解析した。
その結果、表層の岩塊も周辺土壌もほぼ同じ温度であることがわかった。また、温度の日変化は小さいこともわかった。このことから、リュウグウ表面は温まりやすく冷めやすい(熱慣性が極めて低い)物質で覆われていることがわかる。すなわち、リュウグウ地表の岩塊も周辺土壌も多孔質な物質だということを示唆している。
地球のような岩石天体は、太陽系初期にふわふわのダストが集まって成長し形成したと考えられている。
しかし、マイクロメートルサイズのふわふわとした(密度の低い)ダスト粒子から、密度の高い岩石天体へとどのように成長するのかは、解明されていない。同研究成果から、リュウグウはふわふわのダストから稠密な天体が形成する過程の途中にある天体かもしれないことがわかった。