遅くなりましたが、ボブ・ディランの来日公演レポートです。大阪、名古屋、東京の3都市だけとはいえ、全14回公演というライヴ・ハウス・ツアー。しかも日ごとに演奏曲目が変わるという。これはもう奇跡ですよね。数年後には確実に伝説となっていることでしょう。何せボブ・ディランですからね~。ボブ・ディランをライヴ・ハウスで観れたなんて、今思い返しても鳥肌ものです。
マニアの方は2回、3回、いや全部? と複数回のステージを堪能されたことでしょうが、私は3月24日の1回だけ。東京より先に行われた大阪、名古屋のセット・リストが翌日にはネット上に飛び交い、初日1曲目の「Watching The River Flow」に驚き、目まぐるしく変わる演目の中に「Ballad Of Hollis Brown」や、「Don't Think Twice, It's All Right」、「I Don't Believe You (She Acts Like We Never Have Met)」、「The Lonesome Death Of Hattie Carroll」などを見つけて驚喜しました。そしてこんなにセット・リストが変わるのなら、他の日も行けば良かったとちょっぴり後悔したり。
なにはともあれ、雨が降る3月24日、ZEPP東京に行ってまいりました。フロアに入ると既にライヴ・ハウスならではの濃密な空気に満たされ、住人の居ない蒼く照らされたステージは何処か幻想的で、これから始まる現実離れしたステージへの期待を煽られます。そして場末のキャバレーを思わすような音楽にのってバンド・メンバーとボブ・ディランが登場。この登場シーンが妙に素敵でした。
1. Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again
2. It Ain't Me, Babe
3. Rollin' And Tumblin'
4. Mr. Tambourine Man
5. Cold Irons Bound
6. Sugar Baby
7. Desolation Row
8. Blind Willie McTell
9. Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)
10.Can't Wait
11.Highway 61 Revisited
12.If You Ever Go To Houston
13.Thunder On The Mountain
14.Ballad Of A Thin Man
(encore)
15.Like A Rolling Stone
16.Jolene
17.All Along The Watchtower
この日のセット・リストはこんな感じだったそうです。「だったそうです」というのは、私も今回はメモを取らなかったですし、ライヴで聴いただけでは聞き覚えがあっても曲名やらが判明しない曲も結構あったので。帰宅後に調べて「Blind Willie McTell」!!! みたいなね。
さて、いきなり「BLONDE ON BLONDE」から「Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again」でスタート。60年代の大名盤収録曲とはいえ、必ずしも代表曲ではない、こういう始まり方は嬉しいですね。ボブの声は近年の作品で聴けるのと同じく、呟くようなガラガラ声。昔のようなとんがった感じではありませんが、現在のボブでしか成し得ない深みがあります。バック・バンドが奏でるアダルトなスウィング感がボブの落ち着いた声に良く合います。
2曲目「It Ain't Me, Babe」はさらに遡って私の大好きな4枚目「ANOTHER SIDE OF BOB DYLAN」から。まだボブがフォーク・シンガーだった頃の曲ですが、ここでは完全に現在のボブの曲として歌われる。でも正直、雰囲気どころかメロディーまでも原曲の面影が無い程に崩されているので、ちょっと聴いただけではあの曲と判明しない感じでした。そしてこの曲がこの日ボブがギターを弾いた唯一の曲だったのではないでしょうか。
3曲目は「Rollin' And Tumblin'」。「MODERN TIMES」でボブがこの曲を歌っているだけで驚いたものですが、まさか生で聴けるとは。この曲の要となるスライド・ギターはチャーリー・セクストンが弾いてましたね。ボブはステージ端でキーボードを弾きながら歌うことが多かったので、自然とチャーリーがセンター位置になり、かなり目立ってましたね。ま、立っているだけで絵になる格好良いギタリストですよね。ただ妙にちょろちょろ動き過ぎ&ギター変え過ぎな感はありましたけど…。
続いてステージのバックには星空のような水玉のようなライトが映し出され、なにやらロマンチックな雰囲気に。そして静かに曲が始まり、ボブがゆっくり歌い出したその曲はまさかの「Mr. Tambourine Man」。オリジナルのギター弾き語りとはまた違う、うっとりするようなスロー・アレンジ。しかし出だしから題名を歌ってくれるのですぐ分かる。観客からもひときわ大きな拍手が。しかしこの大名曲も関西ではやらなかったんですよね~。もったいない!
「Cold Irons Bound」、「Sugar Baby」と近年の曲が続きますが、この「Sugar Baby」が素晴らしかった。近年のディランが持つ味わいはこういったちょっとロマンチックな雰囲気のスロー・ナンバーが良いんですよね~。枯れた優しさを伴うディランの歌声にジ~ンと来ちゃいました。また何処か孤独な感じに響くハープも素晴らしかった!
そして個人的にはこの日のハイライト「Desolation Row」。これも60年代の大名盤「HIGHWAY 61 REVISITED」から。1曲目の「Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again」にしろ、この「Desolation Row」にしろ、やっぱり電化時代の曲はアガりますよね。しかもこの曲はかなり昔の雰囲気が濃かった。ボブの歌声も思いのほか高揚感が高く。あの時代の“熱”みたいなものを感じさせられました。
「Blind Willie McTell」は今回のツアー中で最もレアな曲の一つでしょうね。この曲ではドニー・ヘロンがバンジョーを弾いて、いい具合に枯れた雰囲気を出していましたね。
ステージは終盤に差し掛かります。電化時代からのアップ・ナンバー「Most Likely You Go Your Way」と「Highway 61 Revisited」。この2曲はこの夜で最もロックな2曲でしたね。特に「Highway 61 Revisited」は熱かった! ボブがノリノリでキーボードを弾く姿に何か嬉しくなりましたね。そしてその間に挟まれた「Can't Wait」。こういったブルージーなスロー・ナンバーも現在のボブ・ディランならではと言える、怖いぐらいの説得力。圧巻のヴォーカルでした。
さらに最新作「Together Through Life」から私の大好きな「If You Ever Go To Houston」。ゆるやかなダンス・ナンバーですけど、やはり何処かロマンチック。ボブの枯れた歌声も相当に深い味わい。CDではデヴィッド・ヒダルゴのアコーディオンが演出していた柔らかく暖かい雰囲気をドニー・ヘロンがスティール・ギターで上手く表現していましたね。
本編ラストは「Ballad Of A Thin Man」。ボブはキーボードを弾きませんでしたね。オルガンの音色の無いこの曲にはやはり寂しさを感じますが、ボブの歌声はこの上なくディープ。あっという間に駆け抜けたディランのステージは、ライヴ・ハウスで見るロック・コンサートというより、大人の高級クラブのようでもあり、鄙びたキャバレーのジャズ・バンドのようでもありました。アダルトな魅力の中に独特の酩酊感があり、職人的な演奏の節々から猥雑な空気が溢れる。ボブの歌声は神か悪魔か? とにかく掴み所の無いディランならではの得体の知れないエネルギーに満ち溢れていました。
アンコールは3曲。何と言っても「Like A Rolling Stone」でしょう! ディランは「ライク・ア・ローリング・ストーン~」と決めのフレーズを歌うたびに観客へニヤリと笑みを向ける。どうだ、これが聴きたかったんだろ?といわんばかりに。観客はその都度歓声を上げ、腕を振り上げ応える。ライブ・ハウスでディランの歌う「Like A Rolling Stone」を聴くという、これは現実か?それとも夢か?
いやこれはディランが作り出した魔力の世界。重厚な「All Along The Watchtower」ももはや催眠状態で聴き、そして終わり、ディランとメンバー達がステージ中央に並ぶ様を恍惚と眺める。ディランの表情はどこか晴れ晴れとしていたような…。私は無我夢中で拍手を贈り、フロア全体が歓声で讃える。ステージを後にするディラン。
拍手を続ける我々をあざ笑うがごとくに客電がつき、否応なしに現実世界に引き戻される。なんか極上の夢から覚めた心地でした。
あ~、終わっちゃった…。
マニアの方は2回、3回、いや全部? と複数回のステージを堪能されたことでしょうが、私は3月24日の1回だけ。東京より先に行われた大阪、名古屋のセット・リストが翌日にはネット上に飛び交い、初日1曲目の「Watching The River Flow」に驚き、目まぐるしく変わる演目の中に「Ballad Of Hollis Brown」や、「Don't Think Twice, It's All Right」、「I Don't Believe You (She Acts Like We Never Have Met)」、「The Lonesome Death Of Hattie Carroll」などを見つけて驚喜しました。そしてこんなにセット・リストが変わるのなら、他の日も行けば良かったとちょっぴり後悔したり。
なにはともあれ、雨が降る3月24日、ZEPP東京に行ってまいりました。フロアに入ると既にライヴ・ハウスならではの濃密な空気に満たされ、住人の居ない蒼く照らされたステージは何処か幻想的で、これから始まる現実離れしたステージへの期待を煽られます。そして場末のキャバレーを思わすような音楽にのってバンド・メンバーとボブ・ディランが登場。この登場シーンが妙に素敵でした。
1. Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again
2. It Ain't Me, Babe
3. Rollin' And Tumblin'
4. Mr. Tambourine Man
5. Cold Irons Bound
6. Sugar Baby
7. Desolation Row
8. Blind Willie McTell
9. Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)
10.Can't Wait
11.Highway 61 Revisited
12.If You Ever Go To Houston
13.Thunder On The Mountain
14.Ballad Of A Thin Man
(encore)
15.Like A Rolling Stone
16.Jolene
17.All Along The Watchtower
この日のセット・リストはこんな感じだったそうです。「だったそうです」というのは、私も今回はメモを取らなかったですし、ライヴで聴いただけでは聞き覚えがあっても曲名やらが判明しない曲も結構あったので。帰宅後に調べて「Blind Willie McTell」!!! みたいなね。
さて、いきなり「BLONDE ON BLONDE」から「Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again」でスタート。60年代の大名盤収録曲とはいえ、必ずしも代表曲ではない、こういう始まり方は嬉しいですね。ボブの声は近年の作品で聴けるのと同じく、呟くようなガラガラ声。昔のようなとんがった感じではありませんが、現在のボブでしか成し得ない深みがあります。バック・バンドが奏でるアダルトなスウィング感がボブの落ち着いた声に良く合います。
2曲目「It Ain't Me, Babe」はさらに遡って私の大好きな4枚目「ANOTHER SIDE OF BOB DYLAN」から。まだボブがフォーク・シンガーだった頃の曲ですが、ここでは完全に現在のボブの曲として歌われる。でも正直、雰囲気どころかメロディーまでも原曲の面影が無い程に崩されているので、ちょっと聴いただけではあの曲と判明しない感じでした。そしてこの曲がこの日ボブがギターを弾いた唯一の曲だったのではないでしょうか。
3曲目は「Rollin' And Tumblin'」。「MODERN TIMES」でボブがこの曲を歌っているだけで驚いたものですが、まさか生で聴けるとは。この曲の要となるスライド・ギターはチャーリー・セクストンが弾いてましたね。ボブはステージ端でキーボードを弾きながら歌うことが多かったので、自然とチャーリーがセンター位置になり、かなり目立ってましたね。ま、立っているだけで絵になる格好良いギタリストですよね。ただ妙にちょろちょろ動き過ぎ&ギター変え過ぎな感はありましたけど…。
続いてステージのバックには星空のような水玉のようなライトが映し出され、なにやらロマンチックな雰囲気に。そして静かに曲が始まり、ボブがゆっくり歌い出したその曲はまさかの「Mr. Tambourine Man」。オリジナルのギター弾き語りとはまた違う、うっとりするようなスロー・アレンジ。しかし出だしから題名を歌ってくれるのですぐ分かる。観客からもひときわ大きな拍手が。しかしこの大名曲も関西ではやらなかったんですよね~。もったいない!
「Cold Irons Bound」、「Sugar Baby」と近年の曲が続きますが、この「Sugar Baby」が素晴らしかった。近年のディランが持つ味わいはこういったちょっとロマンチックな雰囲気のスロー・ナンバーが良いんですよね~。枯れた優しさを伴うディランの歌声にジ~ンと来ちゃいました。また何処か孤独な感じに響くハープも素晴らしかった!
そして個人的にはこの日のハイライト「Desolation Row」。これも60年代の大名盤「HIGHWAY 61 REVISITED」から。1曲目の「Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again」にしろ、この「Desolation Row」にしろ、やっぱり電化時代の曲はアガりますよね。しかもこの曲はかなり昔の雰囲気が濃かった。ボブの歌声も思いのほか高揚感が高く。あの時代の“熱”みたいなものを感じさせられました。
「Blind Willie McTell」は今回のツアー中で最もレアな曲の一つでしょうね。この曲ではドニー・ヘロンがバンジョーを弾いて、いい具合に枯れた雰囲気を出していましたね。
ステージは終盤に差し掛かります。電化時代からのアップ・ナンバー「Most Likely You Go Your Way」と「Highway 61 Revisited」。この2曲はこの夜で最もロックな2曲でしたね。特に「Highway 61 Revisited」は熱かった! ボブがノリノリでキーボードを弾く姿に何か嬉しくなりましたね。そしてその間に挟まれた「Can't Wait」。こういったブルージーなスロー・ナンバーも現在のボブ・ディランならではと言える、怖いぐらいの説得力。圧巻のヴォーカルでした。
さらに最新作「Together Through Life」から私の大好きな「If You Ever Go To Houston」。ゆるやかなダンス・ナンバーですけど、やはり何処かロマンチック。ボブの枯れた歌声も相当に深い味わい。CDではデヴィッド・ヒダルゴのアコーディオンが演出していた柔らかく暖かい雰囲気をドニー・ヘロンがスティール・ギターで上手く表現していましたね。
本編ラストは「Ballad Of A Thin Man」。ボブはキーボードを弾きませんでしたね。オルガンの音色の無いこの曲にはやはり寂しさを感じますが、ボブの歌声はこの上なくディープ。あっという間に駆け抜けたディランのステージは、ライヴ・ハウスで見るロック・コンサートというより、大人の高級クラブのようでもあり、鄙びたキャバレーのジャズ・バンドのようでもありました。アダルトな魅力の中に独特の酩酊感があり、職人的な演奏の節々から猥雑な空気が溢れる。ボブの歌声は神か悪魔か? とにかく掴み所の無いディランならではの得体の知れないエネルギーに満ち溢れていました。
アンコールは3曲。何と言っても「Like A Rolling Stone」でしょう! ディランは「ライク・ア・ローリング・ストーン~」と決めのフレーズを歌うたびに観客へニヤリと笑みを向ける。どうだ、これが聴きたかったんだろ?といわんばかりに。観客はその都度歓声を上げ、腕を振り上げ応える。ライブ・ハウスでディランの歌う「Like A Rolling Stone」を聴くという、これは現実か?それとも夢か?
いやこれはディランが作り出した魔力の世界。重厚な「All Along The Watchtower」ももはや催眠状態で聴き、そして終わり、ディランとメンバー達がステージ中央に並ぶ様を恍惚と眺める。ディランの表情はどこか晴れ晴れとしていたような…。私は無我夢中で拍手を贈り、フロア全体が歓声で讃える。ステージを後にするディラン。
拍手を続ける我々をあざ笑うがごとくに客電がつき、否応なしに現実世界に引き戻される。なんか極上の夢から覚めた心地でした。
あ~、終わっちゃった…。
まさに春の嵐でしたね。
まさかボブ・ディランがライヴハウス・ツアーをするなんて思いませんでした。やっぱりあの人は人智を超えてますね。
しかも昔の曲を結構やってくれましたし。
ただどうせなら3カ所だけじゃなくて、広島とか色々なところを回ってくれたら良かったんですけどね…。
それにしてもtakenokoyamaさんは素晴らしいLPコレクションをお持ちなんですね。
今日は何でレイドバックしてるのか?いつも楽しみにしていますよ~!!
ボブ・ディランの来日は、春の嵐のようでしたね!その都度、変わる演奏曲。アレンジひとつ、ふたつで曲の印象も変わってると思いますが、ステージに立っているディランを観れるだけで素晴らしいことと思います。
わたしは、行けなかったけど外野で騒いでいただけでも楽しかったですよ。
ZEPP東京では、1曲目に<メンフィス・ブルース・アゲイン>ですか、夢のような選曲ですね。後半の<やせっぽちのバラード>これも大好きな曲なので、あぁ~やっぱりうらやましいかぎりです。