言うは易し、行うは靖

三浦 靖の成幸者をめざす

行政視察その5

2010年11月05日 | Weblog
名寄市の「自治基本条例」について。

名寄市は北海道北部にあり、冬場は冷え込みが厳しく、1月の平均気温は全国の市の中では最も低いそうです。平成18年に隣接する風連町と合併し、人口は約3万人、面積は535㎢と大田市より人口は少なく面積は広いところです。基幹産業は農業で餅米の生産量は日本一で伊勢の赤福餅は名寄市の餅米が多くを占めているそうです。その他アスパラガスやカボチャの生産も盛んなようです。

「自治基本条例」とは、住民自治に基づく自治体運営の基本原則を定めた条例で、「自治体の憲法」とも言われ、条例の名称は自治体によって異なり「まちづくり条例」「まちづくり基本条例」あるいは「行政基本条例」など様々です。地域課題への対応やまちづくりを誰がどんな役割を担い、どのような方法で決めていくのかを明文化したもので、自治体の仕組みの基本ルールを定めた条例であり、多くの自治体では、情報の共有化や市民参加・協働などの住民自治の基本原則、自治を担う住民、首長・行政・議会等のそれぞれの役割と責任、情報公開、計画・審議会等への市民参加や住民投票など自治を推進する制度について定めています。平成13年に施行された北海道ニセコ町の「ニセコ町まちづくり基本条例」が最初と言われ、その後制定する自治体が急速に増え、現在も制定に向けて取り組んでいる自治体が多いようです。

名寄市は、本年4月に施行されたばかりですが、条例策定の経過で「市民懇話会」を発足し、市民が積極的に携わり、これからの市政運営とまちづくりを、未来を担う子どもから、これまで支えてきたお年寄りまで全ての市民で進めようとしています。
協働によるまちづくりを進める大田市においても参考になるのではないでしょうか。

現在、我々が取り組んでいる「議会基本条例」やこの「自治基本条例」の主役はまぎれもなく「住民」「市民」です。主役が自ら考え、行動することが求められています。今までのように、行政を「お上」と位置付け、お願いするだけの地方自治は終わろうとしています。また、行政も「協働」という綺麗な言葉に市民を踊らせ、市民サービスを無理矢理に押し付けることもできなくなります。それは、市民が本当に欲するサービスを公共がどこまで行い、市民自らがどこから行うかを「契約」しなければならないからです。





行政視察その4

2010年11月01日 | Weblog
夕張市の財政破綻による市民生活への影響と再建に向けた取組みについて。

夕張市は平成18年に「財政再建計画」を策定し、巨額の赤字を解消するため徹底した行政のスリム化と事務事業の抜本的な見直しを図るとともに、市民生活に必要な最小限の事務事業以外は原則廃止となりました。また、税率の見直しによる市税の増収図るとともに受益者(市民)負担の見直しによる収入の増加を見込むことになりました。

具体的には、市民税が個人均等割3,000円から3,500円に、所得割6%から6.5%に、固定資産税が1.4%から1.45%に、軽自動車税が現行税率の1.5倍(7200円から10800円)に増額、入湯税宿泊150円、日帰り50円も新設されました。また、ごみ処理は一律有料化、施設使用料も5割増、下水道使用料が10 m3あたり1,470円から2,440円に値上げ、各種交付手数料は150~200円の引上げを行い、市民の負担は非常に大きくなりました。
一方、行政側は、職員数を新規職員採用凍結や早期退職勧告により大幅に削減し、平成18年に309人いた職員が定年と自己都合を合わせ全職員の約半数が退職し、現在では145人になっています。早期退職者は、役職者が約7割を占め、部長・次長職は全員が、課長職は32人中29人、主幹職は12人中9人、係長・主査職は76人中45人、一般職の166人中46人が辞め、急な退職で市政の滞り・疲弊等が心配されていながらも、引き続きこの早期退職により人員削減計画の前倒しを実行するそうです。
給与についても、一般職平均30%の削減を行い、特別職は、市長が70%、副市長は64%、教育長は59%、議員は42%の削減となっています。

このような血の滲むような努力の結果、平成18年~20年の3年間で計画通りの31億円の赤字を解消し、平成21年から41年までの財政再生計画を策定し、再生振替特例債の借り入れなどを駆使して平成38年度までに322億円の償還を行う予定となっており、平成25年からは毎年約25億円(元金20億プラス利子)を返済することになっています。
再生計画の中では、①高齢者・子育て、教育②市民生活の安全安心・基盤整備③地域活性化・まちづくりについては懸案事項として限られた予算でありながらも、必要性・緊急性を十分に配慮することになっているようです。

時代の流れ、社会情勢の変化とはいえ、過去の失政が現代の人々を混乱させ、人口流出を防ぐための施策が結果として人口減少に拍車をかけてしまいました。
石見銀山と三瓶山の観光振興に力を入れている大田市は、夕張市の二の舞にならぬよう「行財政改革プラン」を着実に実行していかなければなりません。大田市議会は、チェックを怠らず、プランの実行に対してしっかり提言していくべきではないでしょうか。そんな中、行革特別委員長の手腕が試されていると思います。