風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

100M10秒の壁

2017-06-26 23:35:26 | スポーツ・芸能好き
 藤井聡太四段が、竜王戦決勝トーナメント1回戦で増田康宏四段に勝ち、公式戦で29連勝の新記録を樹立したというニュースが飛び込んで来た。快進撃はいつまで続くのか・・・しかし今日のブログは、この週末に行われた陸上の世界選手権代表選考会を兼ねた日本選手権で、サニブラウンが100Mに続いて200Mも制し、2003年の末続慎吾以来の2冠を成し遂げた快挙についてである。
 快挙と言いつつ、日本人にとって100M10秒の壁は厚い。今回の決勝では10秒0x台が5人もいて期待させたが、雨が降る悪コンディションの中、優勝したサニブラウンは自己記録を塗り替えるも10秒05、桐生祥秀(自己ベスト10秒01)は4位、山県亮太(自己ベスト10秒03)に至っては6位に終わった。伊東浩司が10秒00を出したのは1998年12月のことで、あれから18年が過ぎ、いまなお日本人は(追い風参考を除き)この記録に並ぶことすら出来ていない。
 私は高校時代に陸上部で中・長距離を専門にやっていたので、ついマラソンのデレク・クレイトンの世界最高記録を想いだす。1969年に出した2時間8分33秒6は、実にその後12年間も破られなかった。1981年に同じ豪州のロバート・ド・キャステラが塗り替えたのも僅か15秒だけだった。しかし一度、その記録が破られるや、その後の7年間で3度更新され、男子マラソンは2時間6分台に突入して驚いたものだった。それが今や、ケニアのデニス・キメットが2014年のベルリンで出した2時間2分57秒が歴代最高で、トップ10までは全て2008年以降の記録で、2時間4分15秒以内である。マラソン・シューズの技術革新が飛躍的に進んだせいもあろうし、その間、ケニアやエチオピアの選手が陸上に専念できる環境が整えられてきたせいもあろうが、閾値を超えたときの(もっと言うと、そのものではない、更に先を見据えた)記録更新の勢いは凄まじい。
 他方、日本人初の100M9秒台に最も近いと言われてきた桐生祥秀が10秒01を出したのは4年前、洛南高校3年生のときだった。当時の鮮烈なデビューをつい昨日のことのように思い出すが、その後4年間、足踏みしているのは、もしかしたら10秒の壁に拘っているせいではないかという気がする。その点、サニブラウンの強さは、その若さ(1999年3月生まれの18歳)やガーナ人のお父ちゃんの血もさることながら、目標を9秒58と言ってのける強気な姿勢にあるように思う。10秒の壁は、その先を見据える彼にあっては、あっさり破られるかも知れない。
 世界選手権の100M代表に選ばれたケンブリッジ飛鳥にはジャマイカ人のお父ちゃんの血が流れている。同じく代表に選ばれた飯塚翔太も、ともにリオ五輪の4x100Mリレー・メンバーだった。また桐生より一学年下の多田修平という伏兵が現れて、代表の座を勝ち取ってしまった。彼は、6月10日に行われた日本学生陸上競技個人選手権大会100m準決勝で、追い風4.5mながら9秒94と、日本国内の競技会で日本人選手として初の9秒台を出して話題になったばかりだ(決勝では自己ベスト10秒08)。桐生もうかうかしていられない。
 男子の陰に隠れてしまっているが、女子でも市川華菜が100Mと200Mの二冠を達成した。絶対女王・福島千里の100M8連覇と200M7連覇をそれぞれ阻止する快挙である。福島千里は長らく女子短距離界を引っ張って来たが、明日が29歳の誕生日で、彼女の時代もそろそろ終わるのだろうか。
 月並みだが実力の世界は厳しいものだ。そう思うにつけ、日の出の勢いとはいえ藤井聡太四段の29連勝の凄さは想像を超えている。
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