風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

したたかなイギリス

2017-08-22 23:17:56 | 時事放談
 イギリス・ケンブリッジ大学出版局は、先週末、中国当局にとってsensitiveな(つまり都合が悪い)論文300点以上(天安門事件やチベット関連など)について、中国当局の要請を受けて中国国内からのアクセスを遮断する措置をとったとの声明を発表して、私のような気の弱い人間はやれやれと悲嘆したものだった。ところが、舌の根も乾かない月曜日、同出版局はその措置を撤回することを決めたという。世界中の学術研究者から、「学問の自由を守るべきだ」とか「自分たちが好む文脈に合わない内容を検閲する中国政府が検閲を輸出しようとしている」などと批判の声が上がったことに意を強くして、「学問の自由」という大義のために立ち上がった構図だ。
 同出版局としては、当初、中国と直接対峙する道を選ばず、いったんは中国の圧力に屈した形にして(=自らの肉を切らせて)、その苦渋の決断を世界中に公表し(これは一種の恥さらしでもあるが、他の論文を引き続き中国国内で利用し続けられるようにするためと弁明はした)、世界中から非難(同出版局にとっては同情であり強力な援軍である)を集めることによって、結局、目的を達した(=つまり中国の骨を斬った)ように見える。もしや計算通りに事が運んで、ほくそ笑んでいるのではないかと勘繰るほどの、スピーディな対応だった。
 イギリスは老いたりと言えどもただの老いぼれではなく、その老練さに感心した次第なのだが、もしそうだとすると、このままでは済まないだろう。世界を敵に回した中国は、この件で深追いすることは出来ないかも知れないが、面子を失って、さて、どんな反撃(あるいは嫌がらせ)に打って出るのか・・・他人事ながら私のような気の弱い人間は気になってしまう。
コメント
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