風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

TPPをめぐって

2010-10-30 11:24:32 | 時事放談
 TPP参加を巡って、与党内部ですらも賛否分かれて議論沸騰し、政局になりつつあります。
 TPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement、日本語訳そのものですね、環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定)は、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの間で締結された頃(2006年)まではそれほど注目されていませんでしたが、最近になってアメリカやオーストラリア(さらにベトナムやマレーシア)も参加を表明するに及んで俄かに脚光を浴び、バスに乗り遅れるな、とばかりに、菅総理は、所信表明演説の中でTPP参加検討を表明したのに続き、10月8日の新成長戦略実現会議でも「EPA・FTAの一環として、環太平洋パートナーシップ協定交渉等への参加を検討し(中略)APEC首脳会議までに、我が国の経済連携の基本方針を決定する」との総理指示を出しました。このあたりは、APEC首脳会議での目玉政策を探していた総理側が、外務・経産省の戦略に乗っただけという裏話も伝わりますが、方向としては間違いなく正しい。27日にも、「日本は貿易で成り立つ国である一方、農業を大事にして行かなければならない国だ。両立する道筋を求めて行かなければならない」と、首相官邸で記者団の質問に答えています。
 TPPは、財・サービス(貿易、つまりFTA)だけではなくカネ(投資)やヒトの移動など幅広い分野の自由化を目指すものという意味でEPA(経済連携協定)の一つであり、全ての物品の関税を即時または10年以内に撤廃するのが原則のため、農林水産大臣が反発することは当然予想されましたが、相変わらず学級委員長レベルの意識しかない社民党・党首の発言には度肝を抜かれました。「様々な産業を破壊するのではないか。唐突に出てきて説明もよく分からないので、反対の立場で手をつないでいく」と、空気を読めないもう一方の巨頭である国民新党・代表と連携することで一致したそうです。韓国が、ASEANやアメリカに続きEUともFTAを締結して、日本の危機感が高まっているのは、別に昨日・今日に始まった話ではなく、韓国では2003年にFTAを通商政策の柱とすることを決定していました。農業を含む経済自由化の流れはもはや押しとどめることが出来ず、農業の産業競争力を高める必要性は、国内でも随分以前から議論され、小泉・安倍政権のもとで、2004年の食糧法改定により農水省主導の減反政策を廃止したことに続き、2007年には品目横断的経営安定対策と呼ばれる新型補助金を導入することにより、農水省の介入は極力抑えつつ、大規模農家を育成し、貿易自由化に向けた備えを進めてきたはずでした(その後、零細農家の不満を嗅ぎ取った小沢氏が戸別補償を打ち出して2007年参院選に勝った結果、福田・麻生政権以降、自由化に向けた動きは再び後退してしまいます)。それにも係らず、よく分からないけれども大変そうだから反対するというような素人以前のことを平気で口にするような方が、政権中枢に近いところにいることも驚きですし、そもそもこうした見識の方にも国会議員一人当たり1億円(諸経費含む)とも言われる国民負担をしているのも情けなくなります。
 「TPPを慎重に考える会」というのがあるそうですが、その会長を務める山田前農相は小沢一派ですし、「まずTPPありきではない」などと最近変節して慎重姿勢に転じた大畠経産相は鳩山氏側近で、所謂「小鳩」が菅総理に反対する構図が見えてくると報道されています。さすがの仙谷官房長官も、今は(明治維新と敗戦に続く)第三の開国の時であり、今の延長戦上で豊かさは保証されない、その危機意識を持って欲しいと訴えていますが、国としてかくあるべしといった骨太の議論を素通りして、あくまで自民党に反対し、政権交代を実現することを自己目的化して促成栽培した民主党の馬脚を顕わしてしまったというところでしょうか。
 TPPに限ると、もはや賛否を議論する段階ではありません。その点では、自民党・谷垣総裁の言葉の通りだと思います。「先ず政府が方針を出すなら、どうしたら農業を強化するかの方針を出さなければいけない。」 自民党に言われたくないと思うかもしれませんが。
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