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原田騒亂記_4

2012-11-17 05:55:57 | 信・どんど晴れ
「まあ、お金はばーちゃんに渡したから。」
兄くんは、私にそうつぶやいた。
本当に、大丈夫なのか。私には狐につままれたような氣持ちであった。
私が調理場近くで聞いた話は、なんなのかわからぬ。
朝からの仕事は客室での仕事。
原田にべったりの同僚との仕事なので、どうにも氣まずい。
「松本さん、」
同僚の一人が言う。
「お金が出てきたみたいだよ。松本さんがお金を盗んだようじゃないみたいだね。」
え。この前松本が盗んだ松本が盗んだと言っている奴が突如にこやかになる。
其れとは反対に、原田が、
「松本さん、加賀美屋の女将の座は私よ。」
とねっとりした声で言ってくる。なんだよ。私に迫ってくるな。
「加賀美屋の女将か。考えても居ない」
私は原田に恍惚けて見せた。
「嘘言いなさい。」
最初見たときCoolだった、原田が取り乱しているようだった。
もしかしたら、餓鬼どもだろうか。
新一さんはにやにやしていた。
夕方になって通行服姿の二人の兄弟が小学校から帰ってきた。
「佳奈ちゃん、今日はどうだった?」
弟君が聞いてきた。
「ああ。」
私は素っ気ないような、気の抜けた言葉を発した。
「佳奈、まあ、この前のお金を渡したのが効いたのかな。」
兄はへへという表情だ。
兄弟が小学校から歸ってくる2~3時間前、茶室で女将と原田が密談をしていたのを
たち聞きしていた。
私に見せた、感情的な顔よりもCoolだった。ただ聞きとれたのは
「それほど好きでもないのに、なんで私の下の息子と結婚するのですか?」
という女将の声である。
そのとき聞いた彼女の声は、冷静かつ冷たい物を感じた。
原田自身は、私の進行方向と違う場所に去っていった。
それから、夕食時になる前に原田と、土蔵にある加賀美屋が秘蔵している寳物を
称する物を、整理していた。
パリーン。不吉な音だ。
原田だった。
彼女自身、取り乱していた。いつも勝つ氣満々な女性が一変している。
「やっちまったな。これでお前がやったことがばれたならば加賀美屋の女将の座も
剥奪されちまう。私がやったことにしておく。」
と私は原田の表情を見た。
「松本さん、そこまでして私を勝たしたいの?」
原田は、にやりと笑った
「ああ。」
私は素っ気なく答えた。
「あなたを加賀美屋の女将か仲居頭に据えたい人間が存在するのに何故?」
原田は、表情を変えずに言う。
「私は加賀美屋もこの島もまっぴらだ。誰もが自分を御神輿にしたい氣持ちは分からんよ。」
と私も言う。
「そんな・・・。」
原田は顔が青くなった。アイツの頭の中には急度松本はと思って居るのだろう。
その後、織部焼を割ったのは自分だと述べた。
何故か、原田ではなくて、私が叱責された。
理由はこうである。
「旅館の寳物を割ったのはとてもいけないことです。其れよりもあなたがやったことではない
のに、一緒にいた人のせいにするのは、此處にいることが嫌だという気持ちがありありと見えます」
である。女将も私に固執している。
つづく
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