M3「新専門医制度、「延期も視野」と日医会長 拙速な改革で、地域医療に混乱を来す懸念」(https://www.m3.com/news/iryoishin/400338)。<以下引用>
<日本医師会会長の横倉義武氏は2月17日の定例記者会見で、新専門医制度について、「現状のまま改革を進めると、地域医療の現場に大きな混乱をもたらすことが懸念される。新制度が地域包括ケアシステム構築の阻害要因になってはならない」との危機感を示し、2017年度からの新制度開始について、延期も視野に入れ、まずは地域で研修病院群を形成することが優先課題であると主張した。さらに、専門医制度改革を主導する日本専門医機構と各学会の役割についても、「機構だけが独走することはあってはならない」(横倉会長)とし、整理が必要だとした。日医は、これらの点について、2月18日に予定されている厚生労働省の社会保障審議会医療部会で問題提起する方針。横倉会長が、新専門医制度の地域への影響を懸念するのは、(1)基本領域の専門医は高度急性期・急性期医療を担う医師の養成が主であり、今後の医療ニーズとは齟齬が生じる、(2)症例数や指導医数が多い都市部の大病院に専攻医が集中して、医師の地域格差がさらに拡大する――と見ていることが主な理由だ。各地域、特に地域密着型の医療を担う医療機関から、これらの点を不安視する声が出ているという。新専門医制度が地域医療に悪影響をもたらす懸念は、日本病院会をはじめ、各方面から出ており(『新専門医制度、「大学医局」復権の懸念 - 末永裕之・日病副会長に聞く』を参照)、がんをはじめ特定の領域に特化した分野の医師養成に支障を来すとの意見もある(『新専門医制、「がん」研修に支障も - 堀田知光・国立がん研究センター理事長に聞く』を参照)。日医も昨年12月、医師の偏在進行を防ぐために、指導医が在籍していない過疎地の中小病院などでも、一定の要件の下で研修を認めるよう提言した(『新専門医研修、「指導医不在でも一定要件下で認めるべき」』を参照)。既に日本専門医機構は、基本領域別のプログラム整備基準とモデル専門研修プログラムを作成、産婦人科と耳鼻咽喉科、病理、臨床検査については、2015年12月1日から研修プログラムの申請受付を開始している(『専攻医数、「激変回避」のため調整も- 池田康夫・日本専門医機構理事長に聞く』を参照)。18日の社保審医療部会の議題は、「新たな専門医の仕組みの準備状況について」。2017年度の新制度開始に向けた準備が進んでいるものの、同部会の議論の行方によっては、一定の見直しは避けられない。「機構だけが独走することはあってはならない」 横倉会長は、国民に分かりやすい透明性のある専門医制度にするという、理念自体は賛同するものの、運営に問題があるとした。専門医をめぐる背景事情として、横倉会長が挙げたのは、2025年の地域包括ケアシステム構築に向けた動き。2015年4月から地域医療構想の策定がスタート。2016年度診療報酬改定はそれを推進するための改定であり、2018年度には診療報酬と介護報酬の同時改定、医療計画と介護保険事業計画の同時見直しが控えている。「さまざまな改革が進む中、高齢社会においては急性期後の受け皿の整備と充実が必要。今後、増大するのは回復期や慢性期の医療を担う医師のニーズだが、新専門医制度は、高度急性期と急性期の医療を担う医師の養成が主であり、齟齬が生じている。このため各地域から不安の声が寄せられている」(横倉会長)。さらに大都市の急性期医療を担う病院に、専門医研修を受ける専攻医が集まることも懸念した。「新専門医制度は、指導医数が少ない研修施設を軽視する傾向が見られる」と横倉会長は指摘し、そのために昨年12月の提言を出したと説明。しかし、その対応が必ずしも進んでいないとした。「新たな専門医制度のスタートにより、地域包括ケアシステムのための人材確保が困難になると予想される。新たな制度が阻害要因になってはならない。拙速な見直しで地域医療に混乱が生じ、最終的に不利益を受けるのは国民」(横倉会長)。厚労省は今年1月、新専門医制度について、地域医療への影響を軽減するため、各地域で関係機関による話し合いの場を持つよう、都道府県に通知した。「地域医療に配慮した研修病院群の設定に当たっては、行政、大学、病院、医師会などの関係者が協議、連携することが不可欠」と指摘する横倉会長は、2017年度からの新専門医制度の開始の延期も視野に入れ、まずは地域の連携状況を把握して、地域における研修体制整備を優先すべきとした。横倉会長は、日本専門医機構と各学会との関係の整理も求められるとした。「現在は、機構が各学会の上に立つ構造になっている。しかし、専門医を認定する実質的な能力を持つのは各学会であり、各学会の専門医の認定過程について透明性を担保することが機構の役割」と横倉会長は述べ、この点について関係者の間でさらに議論を深めていく必要があるとし、「機構だけが独走することはあってはならない」と釘を刺した。日医は、日本専門医機構の社員であり、理事には日医幹部も名を連ねる。同機構の理事会などでも、問題提起はしてきたものの、軌道修正には至らず、社保審医療部会に議論の舞台が移ったとも言える。>
キャリアブレイン「新専門医、「回復・慢性期の配置薄くなる」- 日医会長、地域の研究体制整備を要望」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/48121.html)。<以下引用>
<2017年度から養成が始まる新専門医について、日本医師会の横倉義武会長は17日の記者会見で、現在検討されている新専門医の研修が高度急性期・急性期機能を担う医師に重点が置かれていることに触れ、「これから需要が増大する回復期や慢性期への医師の配置が薄くなる恐れがある」と指摘。地域医療への影響を最小限に抑えるため、地域の研究体制の整備を優先して進める必要性を挙げた。専門医をめぐっては、これまでは各学会が独自に認定してきたが、新制度では中立的な第三者機関の日本専門医機構が一元的に認定を行う。専門研修を行う基幹施設は、3月までをめどに専門医機構に研修プログラムを申請。6月にもプログラムを専攻する医師の募集を始める見通し。この日の会見で、横倉会長は「医療提供体制の中心となる地域包括ケアシステムの推進と新しい専門医の仕組みとの間にそごが生じている」と指摘。その理由として、専門医の研修を受ける「専攻医」が大都市の急性期医療機関に集中する可能性を挙げ、「(医師の)地域偏在が拡大する懸念も極めて強くなっている」と述べた。また、17年度から新たな専門医の仕組みが始まった場合、「地域包括ケアシステムを推進するための人材確保は一層困難になる」と指摘。導入を延期することも視野に入れ、地域の状況把握や研究体制の整備の必要があるとした。>
臨床研修制度を機に医師偏在が顕在化した地域が少なくないが、少々懸念されるのは、平成29年度から開始される「新たな専門医養成」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000078482.html)である。厚労省通知「専門研修プログラムの認定に向けた各都道府県の役割について」(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20160115_01.pdf)では「地域医療対策協議会等の場を活用し、専門研修を行う基幹施設及び連携施設(以下「研修施設」)、大学、医師会、病院団体、都道府県等の関係者が、専門研修について協議する場を設けること。」「本年1月から3月までを目途に行われる基幹施設から専門医機構へのプログラム申請にあたり、管内の研修施設におけるプログラムの内容を把握すること。」「各都道府県においては、把握したプログラムの内容を踏まえ、本年5月末の専門医機構によるプログラム認定までの間に、各都道府県内でプログラムの配置に明らかな偏在がないよう、また、研修施設の基準を満たし専門研修を実施する必要のある医療機関が研修施設から外れることのないよう、上記1の場等を活用して地域の関係者による協議、調整を図ること。」とあった。平成27年度全国厚生労働関係部局長会議(http://www.mhlw.go.jp/topics/2016/01/tp0115-1.html)の資料(http://www.mhlw.go.jp/topics/2016/01/dl/tp0115-1-03-02p.pdf)p40「新たな専門医の仕組みにおける地域医療への配慮の状況」では「厚生労働省・日本専門医機構において、地域説明会を開催し、都道府県・医師会・大学病院・地域の医療機関が連携してプログラムを作成するよう呼びかけ」とある。法定化されている各都道府県の地域医療支援センター(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/chiiki_iryou/index.html)の活動如何が問われるであろう。地域医療対策協議会は地域医療構想(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080850.html)だけではない。医師の需給に関する基礎資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000106726.pdf)p5「都道府県内の人口10万対医師数の較差」をみれば地域偏在があることがわかるが、それが今後どうなるか、である。
<日本医師会会長の横倉義武氏は2月17日の定例記者会見で、新専門医制度について、「現状のまま改革を進めると、地域医療の現場に大きな混乱をもたらすことが懸念される。新制度が地域包括ケアシステム構築の阻害要因になってはならない」との危機感を示し、2017年度からの新制度開始について、延期も視野に入れ、まずは地域で研修病院群を形成することが優先課題であると主張した。さらに、専門医制度改革を主導する日本専門医機構と各学会の役割についても、「機構だけが独走することはあってはならない」(横倉会長)とし、整理が必要だとした。日医は、これらの点について、2月18日に予定されている厚生労働省の社会保障審議会医療部会で問題提起する方針。横倉会長が、新専門医制度の地域への影響を懸念するのは、(1)基本領域の専門医は高度急性期・急性期医療を担う医師の養成が主であり、今後の医療ニーズとは齟齬が生じる、(2)症例数や指導医数が多い都市部の大病院に専攻医が集中して、医師の地域格差がさらに拡大する――と見ていることが主な理由だ。各地域、特に地域密着型の医療を担う医療機関から、これらの点を不安視する声が出ているという。新専門医制度が地域医療に悪影響をもたらす懸念は、日本病院会をはじめ、各方面から出ており(『新専門医制度、「大学医局」復権の懸念 - 末永裕之・日病副会長に聞く』を参照)、がんをはじめ特定の領域に特化した分野の医師養成に支障を来すとの意見もある(『新専門医制、「がん」研修に支障も - 堀田知光・国立がん研究センター理事長に聞く』を参照)。日医も昨年12月、医師の偏在進行を防ぐために、指導医が在籍していない過疎地の中小病院などでも、一定の要件の下で研修を認めるよう提言した(『新専門医研修、「指導医不在でも一定要件下で認めるべき」』を参照)。既に日本専門医機構は、基本領域別のプログラム整備基準とモデル専門研修プログラムを作成、産婦人科と耳鼻咽喉科、病理、臨床検査については、2015年12月1日から研修プログラムの申請受付を開始している(『専攻医数、「激変回避」のため調整も- 池田康夫・日本専門医機構理事長に聞く』を参照)。18日の社保審医療部会の議題は、「新たな専門医の仕組みの準備状況について」。2017年度の新制度開始に向けた準備が進んでいるものの、同部会の議論の行方によっては、一定の見直しは避けられない。「機構だけが独走することはあってはならない」 横倉会長は、国民に分かりやすい透明性のある専門医制度にするという、理念自体は賛同するものの、運営に問題があるとした。専門医をめぐる背景事情として、横倉会長が挙げたのは、2025年の地域包括ケアシステム構築に向けた動き。2015年4月から地域医療構想の策定がスタート。2016年度診療報酬改定はそれを推進するための改定であり、2018年度には診療報酬と介護報酬の同時改定、医療計画と介護保険事業計画の同時見直しが控えている。「さまざまな改革が進む中、高齢社会においては急性期後の受け皿の整備と充実が必要。今後、増大するのは回復期や慢性期の医療を担う医師のニーズだが、新専門医制度は、高度急性期と急性期の医療を担う医師の養成が主であり、齟齬が生じている。このため各地域から不安の声が寄せられている」(横倉会長)。さらに大都市の急性期医療を担う病院に、専門医研修を受ける専攻医が集まることも懸念した。「新専門医制度は、指導医数が少ない研修施設を軽視する傾向が見られる」と横倉会長は指摘し、そのために昨年12月の提言を出したと説明。しかし、その対応が必ずしも進んでいないとした。「新たな専門医制度のスタートにより、地域包括ケアシステムのための人材確保が困難になると予想される。新たな制度が阻害要因になってはならない。拙速な見直しで地域医療に混乱が生じ、最終的に不利益を受けるのは国民」(横倉会長)。厚労省は今年1月、新専門医制度について、地域医療への影響を軽減するため、各地域で関係機関による話し合いの場を持つよう、都道府県に通知した。「地域医療に配慮した研修病院群の設定に当たっては、行政、大学、病院、医師会などの関係者が協議、連携することが不可欠」と指摘する横倉会長は、2017年度からの新専門医制度の開始の延期も視野に入れ、まずは地域の連携状況を把握して、地域における研修体制整備を優先すべきとした。横倉会長は、日本専門医機構と各学会との関係の整理も求められるとした。「現在は、機構が各学会の上に立つ構造になっている。しかし、専門医を認定する実質的な能力を持つのは各学会であり、各学会の専門医の認定過程について透明性を担保することが機構の役割」と横倉会長は述べ、この点について関係者の間でさらに議論を深めていく必要があるとし、「機構だけが独走することはあってはならない」と釘を刺した。日医は、日本専門医機構の社員であり、理事には日医幹部も名を連ねる。同機構の理事会などでも、問題提起はしてきたものの、軌道修正には至らず、社保審医療部会に議論の舞台が移ったとも言える。>
キャリアブレイン「新専門医、「回復・慢性期の配置薄くなる」- 日医会長、地域の研究体制整備を要望」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/48121.html)。<以下引用>
<2017年度から養成が始まる新専門医について、日本医師会の横倉義武会長は17日の記者会見で、現在検討されている新専門医の研修が高度急性期・急性期機能を担う医師に重点が置かれていることに触れ、「これから需要が増大する回復期や慢性期への医師の配置が薄くなる恐れがある」と指摘。地域医療への影響を最小限に抑えるため、地域の研究体制の整備を優先して進める必要性を挙げた。専門医をめぐっては、これまでは各学会が独自に認定してきたが、新制度では中立的な第三者機関の日本専門医機構が一元的に認定を行う。専門研修を行う基幹施設は、3月までをめどに専門医機構に研修プログラムを申請。6月にもプログラムを専攻する医師の募集を始める見通し。この日の会見で、横倉会長は「医療提供体制の中心となる地域包括ケアシステムの推進と新しい専門医の仕組みとの間にそごが生じている」と指摘。その理由として、専門医の研修を受ける「専攻医」が大都市の急性期医療機関に集中する可能性を挙げ、「(医師の)地域偏在が拡大する懸念も極めて強くなっている」と述べた。また、17年度から新たな専門医の仕組みが始まった場合、「地域包括ケアシステムを推進するための人材確保は一層困難になる」と指摘。導入を延期することも視野に入れ、地域の状況把握や研究体制の整備の必要があるとした。>
臨床研修制度を機に医師偏在が顕在化した地域が少なくないが、少々懸念されるのは、平成29年度から開始される「新たな専門医養成」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000078482.html)である。厚労省通知「専門研修プログラムの認定に向けた各都道府県の役割について」(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20160115_01.pdf)では「地域医療対策協議会等の場を活用し、専門研修を行う基幹施設及び連携施設(以下「研修施設」)、大学、医師会、病院団体、都道府県等の関係者が、専門研修について協議する場を設けること。」「本年1月から3月までを目途に行われる基幹施設から専門医機構へのプログラム申請にあたり、管内の研修施設におけるプログラムの内容を把握すること。」「各都道府県においては、把握したプログラムの内容を踏まえ、本年5月末の専門医機構によるプログラム認定までの間に、各都道府県内でプログラムの配置に明らかな偏在がないよう、また、研修施設の基準を満たし専門研修を実施する必要のある医療機関が研修施設から外れることのないよう、上記1の場等を活用して地域の関係者による協議、調整を図ること。」とあった。平成27年度全国厚生労働関係部局長会議(http://www.mhlw.go.jp/topics/2016/01/tp0115-1.html)の資料(http://www.mhlw.go.jp/topics/2016/01/dl/tp0115-1-03-02p.pdf)p40「新たな専門医の仕組みにおける地域医療への配慮の状況」では「厚生労働省・日本専門医機構において、地域説明会を開催し、都道府県・医師会・大学病院・地域の医療機関が連携してプログラムを作成するよう呼びかけ」とある。法定化されている各都道府県の地域医療支援センター(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/chiiki_iryou/index.html)の活動如何が問われるであろう。地域医療対策協議会は地域医療構想(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080850.html)だけではない。医師の需給に関する基礎資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000106726.pdf)p5「都道府県内の人口10万対医師数の較差」をみれば地域偏在があることがわかるが、それが今後どうなるか、である。