保健福祉の現場から

感じるままに

民主党マニフェストとがん検診事業

2009年09月30日 | Weblog
補正予算執行停止や来年度概算要求見直しが話題になっている。がん検診事業に関して、現場サイドから、今後どうなるのか、という声が聞かれる。例えば、女性特有のがん検診推進事業(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan10/index.html)がまさに補正予算事業であり、来年度概算要求にも掲げられている。しかも、旧政権下で始まったもので、単年度事業である。
しかし、本当に、がん検診事業が縮小されるのであろうか。というのは、民主党の政策集(http://www.dpj.or.jp/news/files/INDEX2009.pdf)(http://www.izai2.net/minsyu.html)では、「乳がんや子宮頸がん、大腸がん、肺がん、胃がんなど有効性が高いがん検診の受診率を大幅に向上させるよう、受診しやすい体制を整備します」とされ、マニフェスト(http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/pdf/manifesto_2009.pdf)では、「乳がんや子宮頸がんの予防・検診を受けやすい体制の整備などにより、がん検診受診率を引き上げる」とされていたからである。そもそも、がん対策基本法(http://www.ron.gr.jp/law/law/gan_ki.htm)は、ウィキペディア(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8C%E3%82%93%E5%AF%BE%E7%AD%96%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%B3%95)に出ているように、民主党が最初に法案を提出し、与党案と一本化して成立したものである。2006年5月22日の参議院本会議にて民主党の山本孝史議員が自らのがんを告白、法案の早期成立を訴えた姿に感動を覚えた方は少なくないであろう。がん対策推進法(http://www.ron.gr.jp/law/law/gan_ki.htm)第9条による国がん対策推進基本計画(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_keikaku.html)や同第11条による都道府県がん対策推進計画(http://ganjoho.jp/public/news/2008/plan.html)において、がん検診受診率50%の目標値が設定されている。
平成19年度地域保健・老人保健事業報告(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/c-hoken/07/index.html)によると、平成19年度の市区町村が実施したがん検診の受診率は、「胃がん検診」11.8%、「肺がん検診」21.6%、「大腸がん検診」18.8%、「子宮がん検診」18.8%、「乳がん検診」14.2%である。また、平成19年国民生活基礎調査(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-19-1.html)では、「過去1年間にがん検診を受診した者」は、「胃がん検診」男性32.5%・女性25.2%、「肺がん検診」男性25.7%・女性21.1%、「大腸がん検診」男性27.5%・女性22.7%、「子宮がん検診」21.2%、「乳がん検診」20.3%(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa07/3-8.html)に留まっている。
仮に予算見直しでがん検診事業が縮小されるようなことになれば、明確な公約違反といえるであろう。そういえば、10月はピンクリボン月間であり、今年から「がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン月間」(http://blog.goo.ne.jp/miraikibou/e/16d4e35801d777fc352c13515516bffd)である。この中で、「今後のがん検診事業がどうなるかわからない」では、あまりに格好悪いであろう。
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抽出調査の問題

2009年09月30日 | Weblog
この記事は注目である。

「データ乖離、透析実施の内科診療所の抽出増が原因」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/24537.html)。<以下一部引用>
<外来で透析を行う内科診療所の影響を除外した上で集計すると、メディアスとの差が著しく縮小したといい、これらの医療機関の抽出率が高くなったことが、データの乖離につながったと結論付けた。>

中央社会保険医療協議会での基礎資料となる調査で、少々理解しにくい調査が行われている。なぜ、透析実施医療機関が多く抽出されたのであろうか。今回のことは、政府調査は抽出の仕方によって、統計資料が大きく変わることが証明されたということであろう。
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HPVワクチン報道

2009年09月30日 | Weblog
HPVワクチン承認の報道(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/24528.html)(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090928-00000500-san-soci)がされているが、ヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)のことをもっと知る必要があるように感じる。ウィキペディア(http://ja.wikipedia.org/wiki/HPV)で出ているが、HPVの型は子宮頸癌と密接に関連する高リスク群と発癌に直接関係しない低リスク群に分けられる。今回承認された「商品名Cervarix(サーバリクス)」はHPV16, 18型であって、高リスク群のすべてではない。先日、専門家から聞いたところでは、わが国では16、18型以外の高リスク群が欧米より多いとのことである。そういえば、最近の日経メディカルで「性感染による“欧米型”B型肝炎が急増中」の記事(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t058/200909/512351.html)が掲載されていた。エイズもそうだが、感染症では、地域によって微生物の型が異なることは、ある意味常識かもしれない。血液型さえも人種や地域で大きく異なっているのである。今般、HPVワクチンが国内で承認されたが、国内ではどれほど有効なのか、基礎的なデータ(例えば、年齢階級別の型別HPV感染率など)の公開が不可欠と感じる。世界ではHPVワクチンの予防効果は約70%程度と見積もられている(http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/ohashi/gyne/gynecology_cancer/womb_cervix_cancer_and_hpv.html)が、わが国ではどうなのであろうか。また、①HPV16、18型以外による場合が少なくないこと、②HPVワクチンは既感染のウィルスによる病変の予防にはならないこと、から子宮頸がん検診を省略できるものではないことを正確に理解する必要があるように感じる。
こんなネット記事もある。

「子宮頸がんのワクチン(Gardasil)予防接種に不安がよぎる死亡事例」(http://mediasabor.jp/2008/02/gardasil.html)。

今般認可されたのは、Gardasilではなく、Cervarixである。
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