12月15日の第3回保険者による健診・保健指導の円滑な実施方策に関する検討会資料(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/s1215-8.html)(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb14GS50.nsf/vAdmPBigcategory40/5766A16CBC91CA9949257249000AD05A?OpenDocument)が公開されている。資料(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/dl/s1215-8b.pdf)によると、退職・転居等により加入する医療保険者が変わった場合の健診データの保険者間の移動は「例外規定」とされたこと、保険者におけるデータ保存期間の義務付けは5年分(加入者でなくなった場合は翌年度末まで)とされたこと、法律の「特定保健指導」は「動機付け支援及び積極的支援」を表すとされたこと、等が新たに整理されている。しかし、地域保健の現場では、資料をみて不安がどれだけ軽減されるであろうか。まず、被用者保険の被扶養者の特定健診・保健指導である。資料では、被扶養者の特定健診は健診機関の全国組織と契約するか、居住する市町村国保の枠組みを利用するか、のいずれかが可能とし、代表医療保険者による簡便な委託契約方法が提案されている。問題は、特定健診と特定保健指導が同じ機関で実施されるとは限らないことである。全国保健センター連合会の調査研究報告書39P~(http://www.zenporen.or.jp/zenporen/tyousa/17sisetu.pdf)にあるように、基本健診は医療機関等への委託の方が多いが、事後指導は直営で実施される場合が大半であり、市町村国保による特定健診・保健指導についても同様のパターンが予想される。被扶養者が、市町村国保委託の医療機関や健診機関において特定健診を受診したとして、特定保健指導がその機関で実施されるかが、問われることになる。また、その際、特定保健指導の単価についても大きな課題となるであろう。次に、特定保健指導の実施者について、資料(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/dl/s1215-8b.pdf)では「確保可能」とされていることに、不安を感じる方が少なくないかもしれない。確保可能とする計算の前提として、受診率60%、特定保健指導の利用率20%としていることに加え、健診受診者の「17.8%が動機付け支援、16.5%が積極的支援」とされている。しかし、標準的な健診・保健指導プログラム暫定版(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu/index.html)に基づく千葉県九十九里町における準備事業の判定結果(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/11/dl/s1109-5b.pdf)では、基本健診受診者(40~64歳)の26.8%が動機付け支援レベル、28.8%が積極的支援レベルと判定されており、40~74歳の特定保健指導が必要とされる割合はもっと高くなるはずである。また、所属する医師、保健師、管理栄養者の数をもとに、特定保健指導実施者の確保は可能としているが、果たしてどうであろうか。例えば、市町村には保健師22313人、管理栄養士1542人が所属しているが、このうち、老人保健事業の基本健診の事後指導に従事している人数はどれくらいであろうか。平成16年度地域保健・老人保健事業報告によると、平成16年度の個別健康教育実施人員は全国で指導開始25975人(高血圧3005、高脂血症11040、糖尿病7165、喫煙4765)、指導終了21831人(高血圧2677、高脂血症9613、糖尿病6120、喫煙3421)、平成14年度は指導開始26765人、指導終了22560人(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/c-hoken/02/kekka2.html#10)であり、現場の実績としては全く伸びていない。特定保健指導の積極的支援は現状の個別健康教育に近いが、市町村の保健師や管理栄養士の数が大幅に増えない限り、円滑な特定保健指導の実施にはつながらないかもしれない。そのほか、資料(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/dl/s1215-8b.pdf)に示されているように、①医療機関受診者の取り扱い、②労働安全衛生法による健診や保健指導との調整、③75歳以上の保健事業の取り扱い等も課題である。さらに、④特定健診・保健指導とがん検診や骨粗鬆症健診等との連携、⑤65歳以上における生活機能評価等との連携も大きな課題であろう。とはいえ、特定健診・保健指導の実績に基づく、各保険者に対する後期高齢者支援金の加算・減算措置は平成25年度から(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/tdfk-01d.pdf)であり、平成20年度の初めから完全な形での厳格実施を考えなくてもよいのかもしれない。それがもっとも円滑な実施につながる秘訣かもしれない、と感じるこの頃である。
興味深い統計資料が公開されている。平成17年の患者調査の概況(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/05/index.html)と医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/05/index.html)である。これらの資料は、都道府県格差を意識してまとめてあるように感じる。まず、人口10万対の受療率(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/05/02-03.html)について、入院は高知2263~埼玉・ 千葉771の2.9倍の格差、外来は佐賀7168~神奈川4647の1.5倍の格差である。また、平均在院日数(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/05/kekka2-3.html)は、高知55.4~長野27.3の2.0倍の格差となっている。入院についての格差が大きく、高知が目立っているが、これは療養病床が多いからであろう。人口10万対の療養病床 (http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/05/kekka1-2.html)は、高知1022.4~神奈川142.7で7倍以上の格差がついている。さて、療養病床の再編に関して、来年夏(~秋)までに、都道府県地域ケア整備構想が策定されるが、注目されるのは、「地域ケア整備構想」のモデルプランが作成されている自治体(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/tdfk22.pdf)である。この中には療養病床数が多い高知も含まれている。療養病床については、日本医師会「療養病床の再編に関する緊急調査」(http://www.med.or.jp/nichikara/kaigo/index.html)、同「平成18年度緊急レセプト調査報告6~9月診療分」 (http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/11/dl/s1129-6e.pdf)、日本療養病床協会「2006年7月改定による医療保険療養病床の影響度調査」(http://www.ryouyo.jp/enquete.html#0609eikyou)の結果が公表されているように、全国的に大きな課題となっているが、療養病床が多い地域ほど、その調整が大変なのはいうまでもないであろう。「地域ケア整備構想」は法律には規定されていないが、各都道府県が策定する構想は、第1期医療費適正化計画(H20~24)、医療計画(H20~24)、第4期介護保険事業支援計画(H21~23)に反映されることになっている。つまり、地域ケア整備構想が今後の医療制度改革全体のカギを握っている。来月、高知の先生を招いて研修会が開催されるが、きっと学ぶべき点は多いであろう。ところで、先般、日本銀行高知支店が、報告書「高知県の医療について」を発表している(http://www3.boj.or.jp/kochi/kohyo/1810k.pdf)。その中で、「療養病床削減の影響は県内総生産の約1%」とされているが、今後の医療のあり方は金融経済にもある程度影響を及ぼすかもしれない、と感じるこの頃である。