バレエの発表会を観て来た。テレビで見ることはあっても、実際に見るのは初めての気がする。客員も含めて、男子の出演者は4人いたが、知り合いの男の子の踊りが一番美しかった。3歳くらいの女の子は隣りの姉さんたちの動きに合わせて一生懸命に踊っていたが、その姿が余りにも愛らしく、見ている私は涙してしまった。3時間に及ぶ長い公演だったが、飽きることなく美しく素晴らしかった。
教室の先生が主役を務めた特別プログラム『二上山夢験』は圧巻だった。語りも演奏も素晴らしかったし、先生は裸体で踊っているような迫真の舞であったが、残念なことに私はこの物語を知らない。地獄に落ちた男が、「自分は誰だ、どこにいる」と問う苦闘の姿を舞で見せる。子孫を残してこなかったと気づいて巫女と交わる。踊りはふたりの息がぴったり合い、情交を見事に語っていた。
苦悶と妖艶、でもなぜなのかと思ってしまった。大阪の人には物語が分かっているのだろうが、話を知らない私は素晴らしさとは裏腹に、飲み込めなくてイライラ感が残った。知り合いの男の子に出会ったら、「君が最高だった」と言葉を送ろう。男の子をバレエに導いたのは、彼の母親なのだろうか。彼女も幼い時にバレエ教室に通っていたのかも知れない。
私たちジジババは、小4の孫娘のことを心配している。カミさんは「あの子が何時間もユーチューブばかり見ているのは、他にやることが無くて退屈だからよ。今度はどこか連れて行きましょう」と言う。別の世界を見せることは大切だと私も思う。私たちは、子どもたちが関心がある無しにかかわらず、著名な音楽家の発表会には連れて行ったし、旅行にもよく出かけた。役に立ったかどうかではなく、別の世界を見て欲しかった。
私が困っているのは、小4の孫娘が「セミはね、朝と夕方に鳴くのはオスで、夜に鳴くのはメスなの」と教えてくれたことだ。私はすぐ、「それは間違っている」と言えなかった。彼女の気持ちを傷つけずに正しい答えを見つけ出すにはどうしたらよいのだろう。小学校の教師だった義弟夫婦に尋ねたら、「どうしてそう思ったの?と聞いてみたら」と言う。「先生がそう言った」と答えたら、さて、次はどうしようか。