天気予報通りにうす曇りの一日だった。午後3時頃には雪も舞ったが、すぐに止んでしまった。風はないが底冷えする。朝、西の空を見ると伊吹山に朝日が当たり、神々しいほど輝いていたが、いつの間にか空は雲に覆われて薄暗い。明日は市の補助金をいただくために、大和塾がどういう事業を行うか、プレゼンテーションしなくてはならない。大和塾の第50回市民講座に姜尚中先生を招く件だ。
姜尚中先生といえば誰でも知っていて、「凄い人を呼ぶのね」となりそうなものだが、「誰?」と知らない人もいる。知っている人は諸手を挙げて賛成かといえば決してそうでもない。嫌いな人もいるし、反感を抱いている人もいる。みんながみんな、自分と同じであることはなく、だからこそ違う考えの人も拒否せずに受け入れなくてはいけない。安倍首相が「逃げずに憲法改正について堂々と議論しましょう」と野党に迫るのも、野党の側に「憲法改正ではなく、武力そのものを破棄せよ」と言える人がいないと見越しているからだ。
60年安保改定を推進した安倍首相の祖父、岸信介首相は、安保の次に憲法改正による再軍備と軍事力の強化を目指していたが、実現には至らなかった。1957年に現行憲法下でも核武装は可能だと発言していたし、首相になって初めての正月、伊勢神宮に参拝するのが通例なのに、東海村の原子炉を視察している。原子力開発は「平和利用」の下で軍事力と結びついているからだ。岸信介首相は満州建設に情熱を燃やした人、いわば信念の人である。安倍首相は祖父を乗り越えたいのだ。
大和塾の最初の頃の季刊誌を見ていたら気になる文章がいくつかあった。「今の日本はどこへ行こうとしているのか」「私たちは何を得て、何を失ってしまったのでしょうか」「イラク開戦の時、ひとりのアメリカの女子高校生が周りの圧力にも屈せず、反戦の声を挙げました。勇気ある行動に快哉を禁じえませんでした。市民の勇気ある行動も必要です」「最も必要なことは市民社会の成熟ではないでしょうか」。平成19年の発行のものなのに今も変わりない。
歴史は繰り返されるけれど、元に戻るわけではない。新しい姿に変えて現れる。そうなるとやはり大事なことは市民自身が「成熟」することにある。受け入れ、議論し、見つけ出す、これが成熟社会だろう。