友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

『ブンナよ、木からおりてこい』を観て

2015年07月15日 18時35分24秒 | Weblog

 名演の7月例会は劇団青年座の『ブンナよ、木からおりてこい』。先回、私の市で友人たちが演じた作品なので、ぜひ観たいと思った。青年座の作品は俳優たちの声が大き過ぎてうるさく、舞台の演出も凝り過ぎていて、友人たちの作品の方が落ち着いて観ていられた。原作は水上勉氏で、子ども向けの物語である。主人公はトノサマガエルのブンナ。今居る所より、もっと広い素晴しい世界があるはずだとシイノキに登っていく。しかしそこは、トビが捕えたエサを置いておく所だった。

 トビに捕えられ傷ついたスズメ、モズ、ネズミ、ヘビが、悟り切ったようなことを言いながら、いざトビがやって来ると命惜しさに相手を差し出してしまう。土壇場では本性がむき出しになるわけだが、その醜さがテーマなのかと思った。「この世は弱肉強食なのだ。強いものが生き残る」というセリフもある。理屈ではなく、現実を生き抜くために、人は強くなければ生きていけないと、戦前の子どもに言い聞かせたのだろうかと作者の意図を考えた。けれども、調べてみると作品は1980年に発表されている。

 しかも、自衛隊員に蜂起を呼びかけた三島事件を意識した作品とある。ブンナが生きて戻ることが出来たのは、シイノキの天辺で傷ついて死んだネズミにウジがわき、羽化して虫となってブンナが食べることが出来たためだ。仏教の生命の連鎖を窺うことが出来る。生きていくため、カエルは虫を食べる、ヘビはカエルを食べる、トビはヘビを食べる。こうして命は次の命を支えていく。「命と命が繋がって、みんな生きている」と考えれば、感謝が生きる基本だと分かる。

 水上氏は三島事件をどのように意識していたのだろう。武力では何も世界は変わらない、命と命が繋がっているように感謝の気持ちを持って淡々と生きていきなさい。そう作品で答えたのだろうか。今、国会で安保関連法案が自民・公明党によって委員会で可決され、明日の本会議に上程される。「強くなければ、国は守れない」と自民・公明党は考えているようだけれど、世界はまだ弱肉強食時代なのか、これを変えていくのが政治なのではないのか。人の人としての生き方とは何だろう。

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