友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

アンジェラ・アキさんの『手紙』

2009年02月21日 15時16分53秒 | Weblog
 平成20年度NHK全国学校音楽コンクールの中学校の部の課題曲に選ばれた『手紙』が今、卒業を前によく歌われているそうだ。孫娘の中学校でも「卒業生を送る会」で、先生たちが合唱するという。作詞・作曲はアンジェラ・アキさんという日本人の父とイタリア系アメリカ人の母のもとに生まれたダブルスタンダードの個性派シンガーソングライターだ。プロフィールを見ると1977年生まれというから、私の次女よりも4つ年下である。

 中学卒業までは日本で暮らしていたアンジェラさんが10代の時に、30歳の自分に宛てた手紙なのだそうだ。「今、負けそうで 泣きそうで 消えてしまいそうな僕は誰の言葉を信じ歩けばいいの?」と問う。そして彼女は「自分とは何でどこへ向かうべきか 問い続ければ見えてくる (略) 今 負けないで 泣かないで 消えてしまいそうな時は自分の声を信じて歩けばいいの」と答え、「人生の全てに意味があるから 恐れずにあなたの夢を育てて keep on believing (略) いつの時代も悲しみを避けては通れないけれど 笑顔を見せて 今を生きていこう」と結ぶ。

 歌詞を読んで気がついた。孫娘にぜひ聞かせたいと言っていたけれど、本当は私に聞かせたかったのか。確かにあの頃、どう生きることが一番よいことなのか、自分がこれからどうなっていくのか、悩んでいた。迷っていた。10代の頃は大人になれば答えは出ると思っていた。孔子は「30にして立つ。40にして惑わず。50にして天命を知る。60にして耳順う。70にして心の欲するところに従いて矩を踰えず」と言っていた。孔子のような聖人でなくても、その歳になればある程度は、いや年齢を重ねれば、自ずと見えてくるだろうと思っていた。

 ところが60代の半ば近くになっても何もわからない。未だに煩悩の世界にある。自分のやろうとしたことがわかったわけではないが、やっていることが自分の仕事なのだとは思った。迷うようなゆとりがないままに、やり遂げることに全力だった。確かに年老いて人の意見が素直に聞ける。まだ、70までには時間がある。「心の欲するところに従う」ことは間違いなくできるしやってきたことだが、問題は「規範を踏み外さない」にある。そのことを考えると気は重い。やはり孔子のようには生きられない。

 アンジェラさんの歌の中には情熱的なものが結構ある。「あなたの愛は真実に溢れていたにもかかわらず 私は手元を他と比べては満足できずにいた」(A song for you)。「愛で死ぬならキスして殺して」(Kiss from a rose)。「別れた方が二人のため 誰もがきっとそう言うだろう 理屈の手で 正義の目で 毎日裁かれる (略) あなたに捧げられるただ一つのものは この愛のうた 愛のうただけ たとえ妥協に追われても 絶望の影踏まれても この愛のうたを歌うんだ まだ眠りの中のあなたを後にする 愛のうたを歌うんだ」(愛のうた)は具体的だ。想像だけでは創れないような悲しい恋の歌だ。

 「自分の声を信じて歩けばいい」のだが、自分だけなら煩悩の泥の海であってもかまわないけれど、そこが人の「生」の悲しさかもしれない。さて、今晩は4度目の『60歳の集い』があるが、どんな話ができるのだろう。
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