みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0139「変わりたい」

2018-01-14 18:44:00 | ブログ短編

「もう、つまんない」これがあたしの口癖(くちぐせ)になっていた。
 彼と暮(く)らし始めた頃(ころ)、毎日が楽しくて、こんな日がずーっと続くと思ってた。
「洗濯物(せんたくもの)、たたんどいたよ」彼はいつものようにあたしに微笑(ほほえ)みかける。
 あたしは膨(ふく)れっ面(つら)をして、「やろうと思ってたのに、何で先(さき)にやっちゃうのよ」
「ごめん。でも、ほら、君は忙(いそが)しそうだから…」
「忙しくたって、それくらいやれるわよ。もう、勝手(かって)なことしないで」
「だから、謝(あやま)ってるじゃないか」彼は困(こま)った顔をしてあたしを見つめる。
 これは、いつものちょとした喧嘩(けんか)。すぐに仲直(なかなお)りして、また元通(もとどお)りになるって――。でも、そう思っていたのは、あたしだけだったのかもしれない。彼がどんな気持ちでいるのかなんて、全然(ぜんぜん)考えていなかった。
 彼から突然(とつぜん)別れようって言われたとき、あたしは彼のこと責(せ)めたわ。彼のことがどうしても許(ゆる)せなかった。
 ――彼と別れて、初めて気づいたの。彼はあたしのこと、ちゃんと考えてくれていた。でもあたしは、ずっと彼に甘(あま)えてばかり…。彼は出て行くとき、心配(しんぱい)そうな顔をしてあたしを気づかっていた。なのにあたしは、声をかけるどころか顔を見ようともしなかった。
 今でも、彼のことは好きよ。――あたし、変わりたい。もっといい女になって、彼に会いに行くの。またふられてもいい、嫌(きら)われてもいい。もう一度、告白(こくはく)するんだ。
<つぶやき>不変(ふへん)の愛(あい)はないのかも。あっちこっちぶつかりながら、育(そだ)てていくものです。
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