みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0150「超人サプリ」

2018-01-30 19:04:48 | ブログ短編

「さあ、いよいよ我々(われわれ)の研究(けんきゅう)も最終段階(さいしゅうだんかい)に入った」
 等々力(とどろき)教授は感慨深(かんがいぶか)げに言った。「これから人体実験(じんたいじっけん)を始めようと思う」
「でも…、誰(だれ)が実験台(じっけんだい)に…」助手(じょしゅ)の立花(たちばな)は不安(ふあん)な面持(おもも)ちで訊(き)いた。
「それはもちろん、君しかいないじゃないか。この研究を外部(がいぶ)にもらすわけにはいかん」
「でも、僕(ぼく)なんかじゃ。お役(やく)に立ちそうも…」
「何を言ってるんだ。前回(ぜんかい)のパワースーツは問題(もんだい)があったが、今度のはただ飲(の)み込めばいいだけだ。この小さな錠剤(じょうざい)をな。そうするだけで超人(ちょうじん)に変身(へんしん)できるんだ」
 教授(きょうじゅ)は尻込(しりご)みしている助手に薬(くすり)を手渡(てわた)し、
「いいか、どんな超人になりたいか、強く念(ねん)じるんだ。そして、これを飲み込む」
 助手は祈(いの)るような思いで錠剤を飲み込んだ。教授は目を大きく見開き、助手を見つめる。だが、いくら待っても何の変化(へんか)もしなかった。教授は訊いた。
「立花君。君はいったい、どんな超人になりたかったんだ?」
「それは、ちょっと言えません。でも、実験は成功(せいこう)したんじゃないかと…」
「どこが成功なんだ! 何も変わってやしないじゃないか」
「変わらなかったから成功なんです。だって…、変わるなって、念じてましたから」
<つぶやき>こりない教授の実験はいつまで続くのでしょう。果(は)たして、助手の運命(うんめい)は?
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