みけの物語カフェ ブログ版

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0545「しずく24~落ちる」

2019-05-16 18:32:19 | ブログ連載~しずく

 月島(つきしま)しずくが叫(さけ)んだ瞬間(しゅんかん)、急に自分の身体(からだ)が軽(かる)くなった。身体の上に乗っていた重石(おもし)が外(はず)れた感じ…。
 ――何が起こったのか、しずくには理解(りかい)できなかった。自分の身体が宙(ちゅう)に浮(う)いているのだ。しかも、校舎(こうしゃ)の屋上(おくじょう)から飛び出している。当然(とうぜん)のことだが、しずくの身体は地面(じめん)に向かって落下(らっか)を始めた。何も考える余裕(よゆう)などなかった。死の恐怖(きょうふ)を感じる時間すらあるはずもない。
 ――突然(とつぜん)、誰(だれ)かに腕(うで)をつかまれて、しずくは校舎(こうしゃ)の壁(かべ)に身体をしこたまぶつけた。
 しずくはやっと我(われ)に返って、大きく息(いき)を吐(は)いた。今まで呼吸(こきゅう)をすることすら忘(わす)れていたのだ。しずくは荒(あら)い息のなか、自分がどういう状況(じょうきょう)におかれているのかを理解した。と同時に、恐怖(きょうふ)が全身(ぜんしん)を駆(か)け回った。叫び声が喉元(のどもと)まで出かかった時、上から声が聞こえた。
「ちょっと、動かないで! 静かにしてなさい」
 それは、柊(ひいらぎ)先生の声だった。先生は手すりから身(み)を乗(の)り出して、しずくの腕をつかんでいた。しずくは上を見上げて、心もとない様子(ようす)で小さく肯(うなず)いた。
「まったく、何やってるのよ。あなたには、自覚(じかく)ってものが――」
 先生が何か言っているのだが、しずくの耳(みみ)には入らなかった。先生は、今は何を言ってもムダだと感じたのか、ため息をついて、しずくの身体をグイっと引っ張り上げた。
<つぶやき>しずくは自分の能力(ちから)に気づいていない。そして運命(うんめい)を受け入れる準備(じゅんび)も…。
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