みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0667「パートでスパイ」

2019-09-24 18:28:39 | ブログ短編

「局長(きょくちょう)。何なんですか、これは?」
「やあ、J君(くん)。あらぁ、見つけちゃった? さすがだね。良いアイデアだろ」
「冗談(じょうだん)じゃありませんよ。スパイの募集(ぼしゅう)を新聞広告(しんぶんこうこく)に出すなんて、非常識(ひじょうしき)です」
「でもね、ほら、上の方から経費削減(けいひさくげん)しろってうるさいんだよね。もちろん、この広告費(こうこくひ)は私のポケットマネーで、あれしてるから…」
「そういうことじゃなくて、スパイの仕事(しごと)は誰(だれ)でもできることじゃ――」
「それは分かってるよ、私もね。だがね、スパイの養成(ようせい)には金もかかるし、それにいま活動(かつどう)している局員(きょくいん)も高齢化(こうれいか)ときてる。ここは目先(めさき)を変えてだね…」
 局長は履歴書(りれきしょ)の束(たば)を取り出して、「ほら、こんなに応募(おうぼ)が来てるんだよ。こんなこと今までなかったことじゃないか。これほど反響(はんきょう)があるなんてびっくりだ」
「ほんとにやめて下さい。上の方が、そんなこと許可(きょか)するわけないじゃないですか」
「それは大丈夫(だいじょうぶ)だよ、話はついてるから。試験的(しけんてき)に一人採用(さいよう)してもいいことになってる。そこでだ、私が一人選(えら)んでおいた。主婦(しゅふ)なんだけどね、これがなかなかいい娘(こ)なんだ」
「主婦? 主婦をスパイにするんですか? そんなのあり得(え)ないでしょ」
「いや、主婦目線(めせん)は役立(やくだ)つと思うんだけどなぁ。とりあえず、週(しゅう)三日のパートということで、どうだろうか? 先方(せんぽう)には、明日からということで連絡(れんらく)しといたから――」
<つぶやき>これは間違(まちが)いなく局長の好みが入っていると思うんですが…。大丈夫なの?
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