みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1161「特技」

2021-11-22 17:44:39 | ブログ短編

 あなたは、今までにどれくらいの人と出会(であ)いましたか? そのすべての人の顔(かお)は覚(おぼ)えられませんよね。まして、すれ違(ちが)っただけの人は記憶(きおく)に残(のこ)ることなどないはずです。
 でも、彼女の場合(ばあい)は違っていました。彼女は、出会ったすべての人の顔を忘(わす)れることができないようで…。彼女にとって、それは苦痛(くつう)になっていました。
 ――ある日。彼女は、友達(ともだち)から付き合っている彼を紹介(しょうかい)されました。とっても優(やさ)しそうな顔をした男性――。でも、彼女はその顔に見覚えが…。ちょうど一週間前、ホテルのロビーですれ違ったのです。友達とは違う女性と部屋へ向かおうとしていました。
 彼女は思わず言ってしまいました。ホテルで美しい女性といたのを見てしまったと。その男性は驚(おどろ)いた顔をして、何とかその場を誤魔化(ごまか)そうと…。彼女は、そんな彼を見て、
「別に責(せ)めてるわけじゃないのよ。あなたと一緒(いっしょ)にいた女性、あたし会ったとこあるの。一ヶ月くらい前かなぁ。ある男性と会っていたわ。昨日(きのう)の昼間(ひるま)、あなたと会っていた人よ」
 男性は呟(つぶや)いた。「昨日、会ってた…? まさか、親父(おやじ)と……」
「あら、そうなの? でも、とっても親(した)しそうでした。腕(うで)を組(く)んだりして…」
 男性は急(きゅう)に駆(か)け出して行ってしまいました。残(のこ)された友達は、彼女を見て…。彼女は、
「ごめん。でも、あの人は止(や)めた方がいいかもよ。あなたにはふさわしくないと思う」
<つぶやき>もしこんな特技(とくぎ)があったら、何か役(やく)に立てることがあるのかもしれませんね。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1160「しずく147~別れ」 | トップ | 1162「鬼だった」 »

コメントを投稿

ブログ短編」カテゴリの最新記事