樋口(ひぐち)みおが投(な)げ飛ばした相手(あいて)は目黒(めぐろ)だった。あまりのことにみおは言葉(ことば)が出ない。目黒は起き上がると、ばつが悪(わる)そうに言った。
「あ、あれだ…。ちょっと…たまたま、通(とお)りかかっただけで…」
「もう、所長(しょちょう)。どうしてここに? どこからつけてきたんですか?」
「どこからって…、それは…。しかし、君(きみ)も…なかなかやるじゃないか。見直(みなお)したよ」
「ああ、子供(こども)の頃(ころ)から父に仕込(しこ)まれたんです。自分(じぶん)の身(み)は自分で守(まも)るようにって」
「そうか…。それはいい。でも、まだまだだぞ。僕(ぼく)が、本気(ほんき)を出したら…」
これは負(ま)け惜(お)しみってとこでしょうか…。話しを先(さき)へ進めましょう。例(れい)のチャラ男(お)と会う日になって、待(ま)ち合わせの場所(ばしょ)には目黒を初めとして鬼瓦刑事(おにがわらけいじ)まで駆(か)けつけていた。だが、どうしたのかみおが約束(やくそく)の時間(じかん)になっても姿(すがた)を見せなかった。目黒はみおに電話(でんわ)をかけた。しかし、応答(おうとう)がない。目黒は鬼瓦に言った。
「まずいな…。何かあったのかもしれない。あいつに話しを聞くんだ」
二人はチャラ男に駆(か)け寄(よ)った。鬼瓦が警察(けいさつ)を名乗(なの)ると、チャラ男はひるんだ様子(ようす)で、
「あの…、僕は…何もしてませんよ。かんべんして下さい」
泣(な)きそうな顔になっている。どうやら、いかつい顔の鬼瓦に怖(お)じ気(け)づいたようだ。こいつを締(し)め上げたら悪事(あくじ)のひとつやふたつは出てきそうだと、鬼瓦は思った。
<つぶやき>みおはどこへ消(き)えてしまったんでしょう。このチャラ男が犯人(はんにん)なのかなぁ?
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