このレストランで働(はたら)き始めて二年。新しい出会(であ)いを求(もと)めて始めたのだが、期待(きたい)どおりにはいかなかった。客層(きゃくそう)はおっさんばっかだし、たまに格好(かっこ)いいのが来ても女連(おんなづ)れ。若い男が一人で来る時もあるけど、どれもこれもカスばっかで…。
どうして私の周(まわ)りには、そんなのしかいないんだろう。こんなんじゃ、ここで働いてる意味(いみ)ないじゃん。私は、転職(てんしょく)を考え始めていた。
そんな時だ。私にとって、ど真(ま)ん中のストライク男が現(あらわ)れた。他のウエイトレスが見とれている間(ま)に、私はフライング気味(ぎみ)に素早(すばや)く水を持って行く。彼が席(せき)に着(つ)くのと同時(どうじ)にコップを彼の前に置いた。間近(まぢか)で見ると、もう、うっとりするような…。私は危(あや)うく注文(ちゅうもん)を聞き漏(も)らすところだった。私は、自分では最高(さいこう)の笑顔を彼に振(ふ)りまいた。
オーダーを通す時の優越感(ゆうえつかん)といったら…。他のウエイトレス達は、口をあんぐり開けちゃって。恨(うら)めしそうな視線(しせん)を私に向ける。もう彼は私のものよ。誰(だれ)にも渡(わた)さないからね。この件(けん)に関(かん)しては、先輩(せんぱい)も後輩(こうはい)もないんだから。早い者勝ちよ。
オーダーが出来上がって、私は背筋(せすじ)を伸(の)ばして颯爽(さっそう)と彼のもとへ急いだ。あとは彼の連絡先(れんらくさき)を聞き出して…。私の中でいろんな妄想(もうそう)が膨(ふく)らんだ。だが、世の中そう甘(あま)いもんじゃなかった。どこからともなく一人の女が現れて、何のためらいもなく彼と同じ席に…。
私は思わず足を止めて、心の中で叫(さけ)んだ。「ウソだ~ぁ! そんなのアリ~ぃ!」
<つぶやき>お店の裏側(うらがわ)では、こんな攻防(こうぼう)が続いているのかもしれません。ホントかな?
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