みけの物語カフェ ブログ版

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0806「コレクター」

2020-02-15 18:11:39 | ブログ短編

 とある場末(ばすえ)のバー。ほの暗(ぐら)い店内(てんない)のカウンターで一人で呑(の)んでいる若い女性。その女性の横に中年の男が座(すわ)った。バーテンに酒(さけ)を注文(ちゅうもん)すると、男は女性に話しかけた。
「見かけない顔だね。ここは初(はじ)めてかい?」
「ええ、そうよ。旅行(りょこう)をしてるの、いろんな所を見て回ってるのよ」
「そう、それはいい。…君(きみ)は、綺麗(きれい)な髪(かみ)をしてるね。とても艶(つや)があって、素敵(すてき)な黒髪だ」
「ああ…、ありがとう。そんなこと言われるの、初めてだわ。うれしい」
「もしよかったら、君の髪に、ふれてもいいかな?」
 男は、女性の長い髪に手を伸(の)ばし一束(ひとたば)すくい取ると、その匂(にお)いを嗅(か)ぐように顔を近づけた。そして、女性の耳元(みみもと)でささやいた。
「これから僕(ぼく)と付き合わないかい? 面白(おもしろ)いものを見せてあげるよ」
 女性は突然(とつぜん)立ち上がると、男の胸倉(むなぐら)をつかんで言った。「警察(けいさつ)よ! あなたを逮捕(たいほ)します」
 それを合図(あいず)に、数人の客(きゃく)が立ち上がり男に拳銃(けんじゅう)を向けた。男は驚(おどろ)いて手をあげて、
「ちょっと、待ってくれ。俺(おれ)は、別に、何もしてないだろ…」
 女性は男の腕(うで)を締(し)め上げて、「女性の髪を切り取って殺(ころ)すなんて、最低(さいてい)な男ね」
 男は、有無(うむ)も言わさず連行(れんこう)された。――その様子(ようす)を、バーの隅(すみ)で見ていた男。かすかに笑(え)みを浮(う)かべた。テーブルに隠(かく)された男の手は、女性の髪の束を愛撫(あいぶ)していた。
<つぶやき>怖(こわ)いです。連続殺人(れんぞくさつじん)なのかな? 女性を口説(くど)く時は、間違(まちが)われないようにね。
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