神崎(かんざき)つくねはそれに答えて、「しずくは、あなたの親友(しんゆう)だった娘(こ)よ。みんなの記憶(きおく)から消(け)されてしまったけど、あたしの大切(たいせつ)な従姉妹(いとこ)でもあるわ。しずくは……」
つくねは突然(とつぜん)の頭痛(ずつう)に襲(おそ)われて、その場にしゃがみ込んだ。頭痛はすぐに治(おさ)まったが、つくねは何かのイメージを受(う)け取ったようで、驚(おどろ)いた表情(ひょうじょう)を浮(う)かべていた。
柊(ひいらぎ)あずみがすぐに駆(か)け寄(よ)って来て、「ねえ、大丈夫(だいじょうぶ)? 何か――」
「いえ、平気(へいき)です。心配(しんぱい)しなくても…」つくねはそう言うと、あずみの身体(からだ)につかまって立ち上がった。その時、あずみの耳元(みみもと)にささやいた。
「これから、何があっても手を出さないで。何もしないって約束(やくそく)して」
「えっ、なに? 何を言ってるの…」あずみはつくねを見つめた。
――突然、屋上(おくじょう)へつながるドアが音を立てて開いた。そして、数人の男たちがドタドタとなだれ込んできた。瞬(またた)く間に、三人は男たちに囲(かこ)まれてしまった。あずみは、つくねたちをかばうように前に立った。一人の男があずみの前に出て来て、
「神崎つくねは…。君(きみ)たちの中にいるだろ? 出てきなさい」
あずみが答えて、「あなたたち、誰(だれ)なの? つくねをどうするつもり」
「我々(われわれ)は警察(けいさつ)だ。ある事件(じけん)の容疑者(ようぎしゃ)として、神崎つくねを捜(さが)している。御協力(ごきょうりょく)下さい」
「事件って…、つくねがどんな事件に関(かか)わってるっていうの?」
つくねは、すっと前に出ると言った。「あたしです。神崎つくねは…」
<つぶやき>これは突然の展開(てんかい)です。今度はつくねが狙(ねら)われたのでしょうか。それとも…。
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