20XX年。この時代(じだい)、男性の数が極端(きょくたん)に減(へ)ってしまっていた。男性が産(う)まれにくくなってしまったようで、その原因(げんいん)は今だに解明(かいめい)されていない。
彼女の周(まわ)りでも、結婚相手(けっこんあいて)がなかなか見つからず、四十以上も年上(としうえ)の男性と結(むす)ばれた娘(こ)も出てきている。誰(だれ)もが手当(てあ)たり次第(しだい)に男性を求(もと)めていた。もう高学歴(こうがくれき)とか高収入(こうしゅうにゅう)、顔(かお)の善(よ)し悪(あ)しなんて言ってられなくなっているのだ。
彼女の勤(つと)めている会社(かいしゃ)である噂(うわさ)が流(なが)れた。この春に入社(にゅうしゃ)する新入社員(しんにゅうしゃいん)の中に、男性がいると…。独身(どくしん)の女性たちは色めき立った。私服(しふく)選(えら)びや、お化粧(けしょう)に余念(よねん)がない。でも、彼女は普段(ふだん)と変わらずに落ち着いていた。今さらあせっても仕方(しかた)がないと思っているのだ。
他の娘(こ)たちは忘(わす)れているようだ。新入社員が配属(はいぞく)される前には研修(けんしゅう)があるということを…。もうその時点(じてん)で、同期(どうき)で入社する女性たちの物色(ぶっしょく)が始まっている。普通(ふつう)に考えれば、若(わか)い男性が選ぶのは若い女性に決まっている。だって、選(よ)り好(ごの)み仕放題(しほうだい)なんだから…。
彼女は密(ひそ)かに新入社員たちの情報(じょうほう)を集(あつ)めていた。これはもはや犯罪(はんざい)ぎりぎりの行動(こうどう)だった。なぜこんなことをしているのかというと、それはもちろん弱味(よわみ)を握(にぎ)るためだ。人は何かしら秘密(ひみつ)をもっているものだ。彼女はそれを利用(りよう)して、弱肉強食(じゃくにくきょうしょく)の世界(せかい)でマウントを取ろうとしているのだ。今年こそ、確実(かくじつ)に男性を手に入れなくてはならない。そうしないと、両親(りょうしん)が見つけてきた超不細工(ちょうぶさいく)な男と一緒(いっしょ)にならなくてはいけないから…。
<つぶやき>やっぱりこれは必死(ひっし)になっちゃいますよね。愛(あい)せる人と結ばれたいじゃない。
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