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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1171「蜜の味」

2021-12-13 17:47:37 | ブログ短編

 あたしは不幸話(ふこうばなし)が大好きだ。不幸な人が他にもいると思うと、嬉(うれ)しくなってしまう。友達からは、そんなのよくないよって言われるけど、人の不幸は蜜(みつ)の味(あじ)がするのよ。
 友達と不幸比(くら)べをしたら、間違(まちが)いなくあたしが一番だわ。だってあたしは、産(う)まれた時から不幸だったから。家は貧乏(びんぼう)で、子供の頃(ころ)からちゃんと食事(しょくじ)もできなかった。欲(ほ)しいものがあっても、買ってもらえるわけもなくずっと我慢(がまん)してた。
 あたしは不幸から抜(ぬ)け出したくて、必死(ひっし)になって勉強(べんきょう)したわ。そんなあたしを見て、友達は陰(かげ)で笑(わら)ってた。あたしはちゃんと見てたわよ。あたしは誓(ちか)ったわ。そんな人たちよりも絶対(ぜったい)に幸(しあわ)せになってやるって。その頃からかな、不幸話が好きになったのは…。
 でも、本当(ほんとう)に不幸な話しってそんなにないわよ。お気に入りの服(ふく)を汚(よご)してしまったとか、友達と喧嘩(けんか)したとか…。それが何よ。たいしたことないじゃない。告白(こくはく)したのに断(ことわ)られたとか、付き合ってた彼が浮気(うわき)した。これは、ちょっと笑えるかなぁ。
 本当の不幸ってのは、こんなもんじゃないわよ。あたしの話を聞いたら、きっとみんなは涙(なみだ)を流(なが)すわ。でも、あたしは話さないわよ。同情(どうじょう)されたくないし、そんな目で見られたくもない。あたしは、あたしの力で幸せをつかみ取ってやるのよ。ぬるま湯(ゆ)に浸(つ)かってるような生活(せいかつ)をしている人たちを、絶対に見返(みかえ)してやるから――。
<つぶやき>ちょっと屈折(くっせつ)してますね。でも、こんな貪欲(どんよく)な人が幸せを引き寄(よ)せるのです。
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