みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0066「パワースーツ」

2017-08-29 19:19:40 | ブログ短編

 とある研究所(けんきゅうじょ)。ここで世(よ)にも恐(おそ)ろしい実験(じっけん)が行われようとしていた。
「立花(たちばな)君。とうとう完成(かんせい)したぞ」等々力(とどろき)博士は助手(じょしゅ)にスーツを手渡(てわた)した。
「先生…」助手は尻込(しりご)みしながら、「これは、まさか…」
「わしが開発(かいはつ)したパワースーツだ。これを着ると超能力(ちょうのうりょく)が使えるようになるんだ」
 博士が手渡したのは、どう見ても普通(ふつう)の背広(せびろ)にしか見えなかった。
「いいから、着たまえ。これからテストを始めるぞ」
「先生、僕が実験台(じっけんだい)になるんですか?」
「当たり前じゃないか。君は私の片腕(かたうで)なんだぞ」
「でも…。電気(でんき)がビリビリっとか、気分(きぶん)が悪くなったりとか、そんなことに…」
「立花君、何を言ってるんだね。そのための実験じゃないか。安全性(あんぜんせい)を確認(かくにん)するんだ」
「そうなんですけど…。この前のときだって、もう少しで命(いのち)を落とすところ――」
「君は大げさだな。ちょっとした配線(はいせん)のミスじゃないか。たいしたことじゃない」
 助手は気が進(すす)まなかったが、仕方(しかた)なく背広を着ることにした。博士(はかせ)はリモコンのスイッチを入れて、「どうだね? 何か、こう、変化(へんか)は感じられないか?」
 突然(とつぜん)、洋服掛(ようふくか)けに掛けてあったパワースーツが火花(ひばな)を散(ち)らして燃(も)えあがった。それを見た博士は驚いた様子もまったくなく、一人でうなずくと呟(つぶや)いた。
「なるほど…。これはちょっとした配線のミスだ。立花君、次は完璧(かんぺき)なものにするぞ」
<つぶやき>実験は、成功しそうにありませんよね。立花君には、転職(てんしょく)を勧(すす)めたいです。
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