年末(ねんまつ)の休日。私は部屋の大掃除(おおそうじ)にとりかかった。ずぼらな私にとっては、一大決心(いちだいけっしん)だった。今年は仕事(しごと)もうまくいかず、付き合っていた彼にはふられて…。さんざんな年だったから、来年こそはと気分(きぶん)を新(あら)たにしたかったのだ。
押(お)し入れに入っているものを全部引っぱり出しみて驚(おどろ)いた。こんなにいろんなものが詰(つ)め込んであったんだ。もう忘(わす)れてしまった思い出もびっくり箱のように飛び出してきた。
ほこりをかぶったせんべいの箱。そこには子供の頃(ころ)のへたな字で、<だいじなもの>と書かれていた。蓋(ふた)を開けてみると、懐(なつ)かしいものがいっぱい入っていた。ひとつずつ手にとって…。あの頃の楽しかった思い出や、いろんなことが泉(いずみ)のようにわいてきた。
きらきら輝(かがや)くスーパーボール。ここに入ってたんだ。これをくれた男の子。名前…、なんだったかな…。同級生(どうきゅうせい)の子だったけど、あんまり遊(あそ)んだ記憶(きおく)がない。でも、これをもらったときのことは憶(おぼ)えている。<これを持ってると、良いことがあるんだぞ>そう言って、突然(とつぜん)渡されて…。あっ、たしかその子、転校(てんこう)したんだ。今、どうしてるのかな?
私はスーパーボールを陽(ひ)にかざしてみた。ちょっと汚(よご)れてしまっているけど、今でもきらきら輝いている。私は、なんだか嬉(うれ)しくなった。これを持ってると、きっと良いことがありそうな、そんな気がした。私って、ほんと単純(たんじゅん)なんだから…。
<つぶやき>大掃除は大発見のチャンス。でも、早くやっつけないと年を越しちゃうよ。
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