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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1484「本妻と複妻」

2025-01-19 16:25:52 | ブログ短編

 僕(ぼく)が家(いえ)に帰(かえ)ると、とんでもない光景(こうけい)が目に飛(と)び込んできた。妻(つま)と、僕の愛人(あいじん)だった女が一緒(いっしょ)にいるのだ。まるで昔(むかし)からの友人(ゆうじん)のように…。この二人はいつからの知(し)り合いだったんだ? まさか、愛人の方(ほう)から妻に近(ちか)づいたのか?
 きっと、僕から別(わか)れ話をしたからその腹(はら)いせに…。何て女だ! ちゃんと手切(てぎ)れ金(きん)を充分(じゅうぶん)に渡(わた)して、納得(なっとく)したじゃないか。それを…こんなことまでして…。まさか、僕との関係(かんけい)を妻にばらすつもりなのか? もしそうなったら、離婚(りこん)ってこともあり得(え)る。
 僕は平静(へいせい)をよそおって妻に訊(き)いてみた。二人はどういう知り合いなのか。すると妻は、高校(こうこう)のときの後輩(こうはい)だと…僕に紹介(しょうかい)して、「陸上部(りくじょうぶ)で一緒だったのよ」
 これは衝撃(しょうげき)だった。僕は愛人の経歴(けいれき)などまったく興味(きょうみ)がなかったから…。ちゃんと確(たし)かめればよかった。こんなつながりが妻とあったなんて…。まさか、それを承知(しょうち)で、こいつは僕に近づいたのか? でも、何のために?
 愛人は、僕とは初対面(しょたいめん)って感(かん)じで接(せっ)してくる。僕は必死(ひっし)に動揺(どうよう)を隠(かく)した。大丈夫(だいじょうぶ)だ。妻は、そういうことにはうとい方だから、気づくことはないだろう。きっと…。
 三人で食事(しょくじ)をしているあいだ、僕はこれから何が起(お)きるのか戦々恐々(せんせんきょうきょう)だった。愛人がとんでもないことを言い出さないかとビクビクしていた。おかげで料理(りょうり)の味(あじ)などまったく分からなくなっていた。これは拷問(ごうもん)だ。僕は最後(さいご)まで耐(た)えることができるのか?
<つぶやき>まるで副菜(ふくさい)のようにつまみ食(ぐ)い。いけませんよ、ちゃんとバレてますから。
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1483「不具合」

2025-01-09 16:41:55 | ブログ短編

 彼は疲(つか)れ切(き)っていた。身(み)も心(こころ)もぼろぼろで何をする気力(きりょく)もわかない。そんな彼のことを、かいがいしく世話(せわ)をやくものがいた。でも、それは彼の恋人(こいびと)でも家族(かぞく)でもない。あいつだ。
 死神(しにがみ)は彼に言った。「ねえ、旦那(だんな)。そろそろお願(ねが)いしますよ。こっちにもノルマってのがありまして、そうそう旦那に貼(は)りついているわけにもいかないんで…」
 男の方はまだ死(し)ぬ気(き)にはなれないようだ。言葉(ことば)を濁(にご)す。
 死神は、「ほんとは一週間前だったんですよ。旦那が死ぬことになってた日は…」
 男は大きなため息(いき)をつく。死神はほとほと困(こま)った顔(かお)をして、
「悪(わる)いと思ってるんですよ。あたしが一日早(はや)く姿(すがた)を見せてしまって…。そんで、旦那が死ぬ機会(きかい)を逃(のが)してしまったんですよね。ほんと、申(もう)し訳(わけ)ない」
 男はこれみよがしにまたため息をつく。死神はますます困りはてて、
「これでもねぇ、旦那が気持(きも)ちよく逝(い)けるように努力(どりょく)してるつもりなんですよ」
 男は死神に背(せ)を向(む)けてしまった。死神は、どうしようもなくなって、
「でもねぇ、これはあたしのせいじゃないんですよ。前にも話しましたが、地獄(じごく)のシステムってやつが不具合(ふぐあい)を起(お)こしましてね。今、地獄じゃ大騒(おおさわ)ぎになってるんですよ。死ぬはずの人間(にんげん)がやって来ないもんだから…。やっぱ、あれですよねぇ。天国(てんごく)の真似(まね)なんかするから、こんなことになっちゃって…。天国のヤツらは大喜(おおよろこ)びしてるかも、…ですよね」
<つぶやき>不具合はいつになったら解消(かいしょう)するのでしょうか? でも、このままの方が…。
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1482「未来人」

2024-12-23 16:38:48 | ブログ短編

 彼は未来(みらい)からやって来た。それも非合法(ひごうほう)なやり方(かた)で…。もし、時空警察(じくうけいさつ)に見つかればただではすまない。ずいぶんとお金(かね)がかかったが致(いた)し方ない。彼には目的(もくてき)があった。それは理想(りそう)の女性(じょせい)と巡(めぐ)り合うこと…。
 彼のいた時代(じだい)は超個人主義(ちょうこじんしゅぎ)が主流(しゅりゅう)だった。誰(だれ)もが自分(じぶん)の意見(いけん)を主張(しゅちょう)し、張(は)り合っていた。それは恋愛関係(れんあいかんけい)にも及(およ)んでいた。どっちが主導権(しゅどうけん)を握(にぎ)るかが重要(じゅうよう)で、愛情(あいじょう)や思いやりなど二の次(つぎ)になってしまった。彼は、そんなことにほとほと嫌気(いやけ)が差(さ)していた。だから、過去(かこ)へ行くことにしたのだ。時代をさかのぼれば謙虚(けんきょ)な女性が必(かなら)ずいるはずだ。
 彼は正(ただ)しかった。この時代へ来てまもなく、彼は理想の女性と出会(であ)うことができた。そして、一緒(いっしょ)に暮(く)らし始めるまでにそれほど時間(じかん)はかからなかった。彼女はいつも優(やさ)しく接(せっ)してくれた。彼のことを気づかって世話(せわ)をやく。彼は彼女との生活(せいかつ)を失(うしな)いたくないと思い始めた。彼女のことを心底(しんそこ)から愛(あい)してしまったのだ。
 だか、そんな幸(しあわ)せも長くは続(つづ)かなかった。ある疑念(ぎねん)が彼を悩(なや)ませたのだ。なぜこんな素晴(すば)らしい女性が自分(じぶん)なんかと一緒にいるのか? 本当(ほんとう)に自分のことを愛しているのか…。もしかしたら、自分は欺(だま)されているのでは…。彼はこの苦(くる)しみから逃(の)れようと彼女に問(と)いただした。すると、彼女は平然(へいぜん)と答(こた)えた。
「あたし、時空警察なんです。あなたを元(もと)の未来へ送還(そうかん)します。――あたし思うんですけど、こんな犯罪(はんざい)を犯(おか)さなくても、あなたを好(す)きになる女性はいたと思いますよ」
<つぶやき>そんなこと言われても…ですよね。でもじっくり周(まわ)りを見回すと、いるかも?
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1481「時間」

2024-12-10 16:40:40 | ブログ短編

 彼は数(かぞ)え切(き)れないほど生(う)まれ変(か)わっていた。大変(たいへん)なこともたくさんあったが、いろんな人たちと出会(であ)い人生(じんせい)を楽(たの)しんでいた。
 あるとき、彼は面白(おもしろ)そうな本(ほん)を手に入れた。その本にはタイムマシンのことが事細(ことこま)かに書かれてあった。彼は何度(なんど)も何度も読み返(かえ)した。
 それ以来(いらい)、彼は生まれ変わるたびにタイムマシンを造(つく)ることに熱中(ねっちゅう)した。今まで出会ってきた人たちとまた会いたい。そして、彼が最初(さいしょ)に生まれた時(とき)へ戻(もど)りたくなったのだ。
 しかし、何度も生まれ変わって研究(けんきゅう)を続(つづ)けてみたが、タイムマシンを完成(かんせい)させることはできなかった。それでも彼はあきらめなかった。彼には時間(じかん)はたっぷりある。いつか必(かなら)ず完成(かんせい)させることができるはずだ。彼は確信(かくしん)していた。
 ――彼は不思議(ふしぎ)な夢(ゆめ)を見るようになった。今まで彼が出会ってきた人たちが現(あらわ)れる夢。しかも、最後(さいご)を迎(むか)えるときの…。いろんな別(わか)れがあった。病気(びょうき)で亡(な)くなったり、殺(ころ)された仲間(なかま)もいた。そして愛(あい)した人の死(し)もあった。深(ふか)い悲(かな)しみが、夢の中で彼を苦(くる)しめた。
 人と別れることには慣(な)れていたはずだった。彼の決意(けつい)は揺(ゆ)らぎはじめた。また会ってどうするんだ? 人はいつかは死ぬんだ。それを変えることはできない。そうだけど…。
 彼は何日も、何か月も考(かんが)え続けた。そして、続けようと決(き)めた。それでも、彼らと再会(さいかい)したいのだ。まだ話したいことがいっぱいある。後悔(こうかい)をなくしたいのだ。
<つぶやき>悔(く)いのない人生。もしそんな生き方ができたら、それが一番の幸(しあわ)せかもね。
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1480「せいてんのへきれき」

2024-12-01 16:37:25 | ブログ短編

 朝(あさ)、目覚(めざ)めると、まったく知(し)らない場所(ばしょ)にいた。ここは…、どこなんだ?
 起(お)き上がって周(まわ)りを見回(みまわ)す。まるで、子供部屋(こどもべや)だ。いや、子供部屋そのものだ。身体(からだ)に違和感(いわかん)を感(かん)じて手を見ると、小さくなっている。身体が全部(ぜんぶ)縮(ちぢ)んでしまったようだ。いや、違(ちが)う! 俺(おれ)は…子供になってるんだ。しかも女の子…?
 俺はベッドから出ると部屋の中を歩(ある)き回った。そして、考(かんが)えた。どうしてこんなことになってしまったのか。でも、何も思いつかない。だって、昨夜(ゆうべ)はちゃんといつも通(どお)りに、自分(じぶん)の部屋でベッドに入って眠(ねむ)りについたはずだ。それなのに…。
 こうなったら自力(じりき)で、自分の家(いえ)に帰(かえ)らなくては。でもどうやって…。そうだ、金(かね)だ。お金がなくては話(はなし)にならない。部屋の中を探(さが)し回ったが、見つかったのはブタの貯金箱(ちょきんばこ)だけだった。しかも、小銭(こぜに)しか入ってない。そりゃそうだ。小学生(しょうがくせい)が札束(さつたば)を貯(た)め込(こ)んでいるわけがない。ここは…、しばらくこの家にいるしかない。そう思い至(いた)った。
 幸(さいわ)いなことに、この家の大人(おとな)は子供を大事(だいじ)に扱(あつか)っているようだ。それは、この部屋の様子(ようす)を見れば分かる。きっと多少(たしょう)のわがままも聞(き)いてくれるんじゃないのか?
 ここで、俺はハッとした。そうだ、今日は大切(たいせつ)な商談(しょうだん)があるんだ。どうするんだよ!
 子供の姿(すがた)じゃ行けないし…。もし、元(もと)に戻(もど)らなかったら? 小学生からやり直(なお)しかよ。
<つぶやき>ここはポジティブに考えて。別(べつ)の人生(じんせい)を歩(あゆ)んでいくのもありかもしれません。
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