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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1489「忘却日記」

2025-03-09 16:02:15 | ブログ短編

 彼女は、三年間付き合っていた彼から突然(とつぜん)、別(わか)れを告(つ)げられた。そろそろ結婚(けっこん)を考(かんが)えていた彼女にとって、それは思いもよらないことだった。だって、喧嘩(けんか)なんかしたことないし、別れる理由(りゆう)がまったく分からない。
 彼女は意気消沈(いきしょうちん)してしまった。会社(かいしゃ)に行っても仕事(しごと)が手につかない。そして、ミスを連発(れんぱつ)してしまった。見かねた先輩(せんぱい)が手を貸(か)してくれて、事無(ことな)きを得(え)たのだが…。彼女はますます落(お)ち込んでしまった。
 会社からの帰り道(みち)。彼女はふらっと本屋(ほんや)に立ち寄(よ)った。そこで彼女は何かに引(ひ)き寄せられるように、日記帳(にっきちょう)が並(なら)べられている棚(たな)の前で足(あし)を止めた。彼女には日記をつける習慣(しゅうかん)など無(な)かった。なぜそうしたのか分からないが、彼女は手にした日記帳を買(か)って家に帰った。
 寝(ね)る前に、彼女は日記帳を開(ひら)いた。そして、彼とのことを思いつくままに書(か)きつづった。最後(さいご)には、彼に対(たい)しての恨(うら)みつらみを吐(は)き出していた。
 翌日(よくじつ)、彼女は何だかスッキリした顔で出社(しゅっしゃ)した。彼とのことを知っている同僚(どうりょう)が、彼女を気づかって声をかけた。
「大丈夫(だいじょうぶ)なの? もう、あんな人のことなんて忘(わす)れちゃいなよ」
 でも、彼女はきょとんとした顔(かお)で、「なにそれ? そんなことより――」
 彼女は、彼のことなどすっかり忘れてしまったのか…。まるでなかったことのように、彼女の頭(あたま)の中から消(き)え去(さ)ってしまったようだ。
<つぶやき>こんな日記帳があれば…。でも、彼はなぜ別れを切り出したのか。気になる。
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1488「未来の恋人」

2025-02-27 17:16:11 | ブログ短編

 あたしの前に突然(とつぜん)、恋人(こいびと)を名乗(なの)る男性(だんせい)が現(あらわ)れた。その人(ひと)のこと、あたしはまったく知(し)らないのに、どうしてあたしの恋人だって言えるのよ。ほんと、変(へん)な人…。
 その人はあたしにこう言ったの。「一年後(ご)の未来(みらい)から来たんだよ」
 それが本当(ほんとう)なら、来年(らいねん)になったら、あたしはこの人と付(つ)き合うことになるの?
 あたしは、にわかには信(しん)じることができなかった。そもそも、こんなあたしなんかを好(す)きになる人が現れるなんて…。その人はこうも言ったわ。
「君(きみ)にお願(ねが)いがあるんだ。今年中(ことしじゅう)に、よそへ引(ひ)っ越(こ)してくれないか」
 えっ? あたしは訊(き)き返(かえ)しそうになるのをグッとこらえた。なんで…、あたしが引っ越さなきゃいけないのよ。お金(かね)だってかかるんだから…。訳(わけ)を言ってよ。
 すると、その人は…。「そうしてくれないと…、来年、君と出会(であ)ってしまうから…」
 ええっ? それって、あたしと別(わ)れたいってこと? 最初(さいしょ)から、付き合いたくないからそんなことを…。その人は、何かを誤魔化(ごまか)すように、
「あの、詳(くわ)しくは話せないんだ。これは、とってもデリケートな問題(もんだい)でね。そこは、理解(りかい)してもらいたいんだ」
「そんなこと言われても…。あたしにだって仕事(しごと)の都合(つごう)もあるし、ムリです」
 その人はがっかりした様子(ようす)で、「そうだよね。やっぱりダメかぁ。じゃあ、これで失礼(しつれい)するよ。他(ほか)の方法(ほうほう)を考(かんが)えるから…」
<つぶやき>いったい何があったのか。そうまでして別れたいなんて、よほどのことかも。
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1487「発掘競争」

2025-02-14 16:36:17 | ブログ短編

「爆破(ばくは)するって…」助手(じょしゅ)の安井(やすい)が目を丸(まる)くして言った。「教授(きょうじゅ)、なにバカなことを言ってるんですか。あの辺(あた)りには、新種(しんしゅ)の化石(かせき)が埋(う)まってるかもしれないんですよ。そんなことをしたら…、粉々(こなごな)になってしまいます」
「かまわんさ。あいつに発見(はっけん)されるよりはましだ。あの辺りは、わしが発掘(はっくつ)するはずだったんだ。それを横取(よこど)りしやがって…。あいつに功績(こうせき)をわたしてたまるか…。許(ゆる)せんのだ!」
「教授、落(お)ち着(つ)いてください。また次(つぎ)のチャンスがありますよ」
 教授は安井の肩(かた)を強(つよ)くつかんで、「わしには時間(じかん)がないんだ。この身体(からだ)が……。すぐに爆薬(ばくやく)を用意(ようい)するんだ。すべてをぶち壊(こわ)して、あいつを落胆(らくたん)させてやるんだ。そして、二度とわしの邪魔(じゃま)ができんようにしてやる。そうでもしないと、わしの気(き)がおさまらない」
「教授、そんなことダメです。考(かんが)え直(なお)してください。そうだ。実(じつ)は、この場所(ばしょ)から少し北(きた)へ行ったところで見つけたんです。有望(ゆうぼう)な地層(ちそう)が露出(ろしゅつ)しているところを…。きっと新種が見つかるはずです」
「それは…ほんとうか? 間違(まちが)いないんだな」
 教授は立ち上がると、「何をしている。すぐに向(む)かうぞ。あいつより先(さき)に行かないと…。今度(こんど)こそ、わしが…。わしが、新種を発見するんだ」
「はい、教授。あいつの鼻(はな)を明(あ)かしてやりましょう」
<つぶやき>こんなことがあったとか、なかったとか…。人間(にんげん)はいろいろ欲(ほ)しがるよね。
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1486「未来からの忠告」

2025-02-06 16:37:21 | ブログ短編

 僕(ぼく)は変(へん)なおじさんから声(こえ)をかけられた。その人は僕のことをよく知(し)っているみたいなのだが、僕はまったく見覚(みおぼ)えがない。そのおじさんは僕に言った。
「なぁ、ちゃんと勉強(べんきょう)しろよ。そうじゃないと、困(こま)ったことになるんだよ。それと、同(おな)じクラスに相崎(あいさき)かなえってヤツがいるだろ。あいつとは絶対(ぜったい)に付(つ)き合うな。告白(こくはく)されてもホイホイついて行くんじゃないぞ。約束(やくそく)しろ!」
 このおじさん…なに言ってるんだろ? 確(たし)かに、相崎かなえはクラスメイトにいるけど、僕に告白なんかするわけがない。美人(びじん)で僕のことなんか相手(あいて)にするわけが…。僕は、
「あの…。なんでそんなこと言うんですか? おじさんには関係(かんけい)ないじゃ――」
「あるだよ」おじさんは間髪入(かんぱつい)れず答(こた)えた。「まぁ、詳(くわ)しくは言えねえけど…。いいか、これだけは言っておく。あの女には絶対に近(ちか)づくな。地獄(じごく)を見たくなかったらな」
「地獄って…、どういうことですか?」
「だから、詳しくは言えねえんだよ。それと、今度(こんど)の期末試験(きまつしけん)、絶対に赤点(あかてん)なんかとるんじゃねぇぞ。お前(まえ)の将来(しょうらい)がかかってるんだ。死(し)にもの狂(ぐる)いで勉強しろ」
「僕は…勉強は好(す)きじゃないから。それに、赤点はいつものことだし…」
「分かってるよ、そんなことは。でもな、そんなことやってたから、こんな人間(にんげん)になっちまったんだよ。いいか、好き嫌(きら)いの問題(もんだい)じゃないんだ。人生(じんせい)かかってるんだぞ!」
<つぶやき>これは未来(みらい)から来た自分(じぶん)なのかなぁ。相崎かなえと何があったんでしょう。
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1485「危険なカオリ」

2025-01-29 16:30:07 | ブログ短編

 僕(ぼく)は、ひょんなことから会社(かいしゃ)の後輩(こうはい)の娘(こ)と関係(かんけい)を持(も)った。関係といってもキスまでだけど…。でも、これはまったく事故(じこ)のようなもので、「ごめん」ですむはずだった。それなのに…、それからというもの、僕はこの娘(こ)に悩(なや)まされることになった。
 とにかく彼女はおかしいのだ。どんどん僕との距離(きょり)を詰(つ)めてくる。彼女の中では、もう結婚間近(けっこんまぢか)の恋人同士(こいびとどうし)になっているようだ。キスしかしてないのに…何でそうなるんだよ。だって、彼女だって知っているはずだ。僕には妻(つま)も小さな子供(こども)だっていることを…。なのに…。僕はどうしたらいいんだ? 僕が何を言っても、彼女には――。
 休日(きゅうじつ)。妻が子供を連(つ)れて出かけているときだ。ひとりで家にいると彼女から電話(でんわ)がかかってきた。これから会(あ)いたいと。僕は迷(まよ)ったが出かけることにした。待(ま)ち合わせは、どういうわけか住宅街(じゅうたくがい)…。彼女は先(さき)に来ていた。そして僕にこう言ったのだ。
「さぁ、行きましょ。内見(ないけん)の予約(よやく)をしてあるの。とっても素敵(すてき)なお家(うち)よ」
 僕は唖然(あぜん)とした。僕が足(あし)を止(と)めたのを見て、彼女は僕の腕(うで)を力一杯(ちからいっぱい)つかんで言った。
「どうしたの? これから二人で住(す)む家(いえ)なんだから、あたしは二人で決(き)めたいの」
「ちょっと待ってくれ。僕は…結婚してるんだ。だから、君(きみ)とはそういう…」
「もう、そんなこと心配(しんぱい)してるの? 大丈夫(だいじょうぶ)よ。もうすぐ…ひとりになれるんだから」
「なんで…、なんでそんなこと。まさか、妻に…。君は、何をしたんだ!」
<つぶやき>どうなってしまうのかな? これは、サイコパス的(てき)なあれなんでしょうか。
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