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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1400「しずく195~成長」

2023-07-12 17:35:13 | ブログ連載~しずく

 月島貴志(つきしまたかし)はあまりにつながる装置(そうち)のパネルを外(はず)し始めた。でも、ネジが固(かた)く締(し)めつけられていて作業(さぎょう)が進(すす)まない。みかねた水木涼(みずきりょう)が、「私に任(まか)せて。これくらいなんでもないわ」
 涼は能力(ちから)を使ってネジを動かした。次々(つぎつぎ)にネジが外れて飛(と)んでいく。貴志は、
「ありがとう。後はパネルを外して、中がどうなってるか確認(かくにん)して…」
 その間(あいだ)、アキは後(うしろ)で立ちつくしていた。自分(じぶん)に助(たす)けることができるのか葛藤(かっとう)しているようだ。アキの心の中に聞き覚(おぼ)えのある声が聞こえた。それは、ハルの声だ。
「もう、何してるの? ここは、やるしかないでしょ。私もついてる。心配(しんぱい)ないわ」
 アキは大きく肯(うなず)くと、あまりのそばへ行き手をかざした。そして、あまりの身体(からだ)の状態(じょうたい)を調(しら)べ始めた。涼は二人の様子(ようす)を見て、目頭(めがしら)が熱(あつ)くなった。
 その時、装置の前にエリスが現れた。みんなに緊張(きんちょう)が走る。涼はすかさず呟(つぶや)いた。
「今度は私の番(ばん)ね。後(あと)は頼(たの)んだわよ。ここは私がくい止(と)める」
 貴志はリュックサックから刀(かたな)の柄(つか)のようなものを取り出して、
「これ使って。そこのボタンを押(お)すと剣(けん)のようになるから」
「おお、助(たす)かる。じゃあなぁ」
 涼が下を見ると、エリスがニヤリと笑(わら)って、手招(てまね)きをしていた。涼は駆(か)け下りて行きながら思った。「こんなとき飛べたらいいのに…。どうして私は飛べないのよ」
<つぶやき>格好(かっこ)悪くてもいいんです。でも、涼だけで大丈夫(だいじょうぶ)なのか? 心配ですよね。
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1395「しずく194~救出」

2023-06-22 17:25:51 | ブログ連載~しずく

 あずみたちが飛(と)び出た場所(ばしょ)は、あの巨大(きょだい)な装置(そうち)がある研究室(けんきゅうしつ)だった。月島(つきしま)しずくはすぐにみんなに指示(しじ)を出した。先(ま)ず、アキと貴志(たかし)、水木涼(みずきりょう)には日野(ひの)あまりの救出(きゅうしゅつ)を。そして、柊(ひいらぎ)あずみと神崎(かんざき)つくねには敵(てき)の攻撃(こうげき)を防(ふせ)ぐことを頼(たの)んだ。しずくは、
「ここへの入口(いりぐち)は二ヵ所よ。私がふさいでおいたわ。でも、能力者(のうりょくしゃ)はどこから来るか分からないから、充分(じゅうぶん)に気をつけてね。私はこれから初音(はつね)たちを連れ戻(もど)してくる。きっと助(たす)けになるはずよ。それまで持(も)ちこたえてね」
 あずみは、「分かったわ。ここは任(まか)せて。あなたも気をつけてよ」
 しずくは姿(すがた)を消(け)した。あずみはアキに、「あまりを助けてあげて。私たちはこの研究室の中を確認(かくにん)しましょう。まだ誰(だれ)かいるかもしれない」
 アキたちは装置に取り付けられている階段(かいだん)を上がり、装置の中央部分(ちゅうおうぶぶん)にたどり着いた。そして、あまりを見つけて愕然(がくぜん)とした。涼が思わず呟(つぶや)いた。
「何だよ、これ…。どうやって助ければいいんだよ」
 貴志が装置を確認しながら、「大丈夫(だいじょうぶ)…。何とかなるかもしれない」
 アキは声を震(ふる)わせて言った。「ムリよ。あたしには…。どうすればいいのよ…」
 貴志が強(つよ)い口調(くちょう)で言った。「しっかりしろよ! 僕(ぼく)が手伝(てつだ)うから。これでも機械(きかい)は得意(とくい)なんだ。父さんの手伝(てつだ)いもしてたから、きっと上手(うま)くいく」
<つぶやき>無事(ぶじ)に助け出すことができるの? この先(さき)、壮絶(そうぜつ)な戦(たたか)いが待っているかも。
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1390「しずく193~戦いへ」

2023-06-02 17:28:15 | ブログ連載~しずく

 みんなは無言(むごん)で出された食事(しょくじ)を平(たい)らげた。そこへ、柊(ひいらぎ)あずみに月島(つきしま)しずくからテレパシーが届(とど)いた。あずみは感情(かんじょう)を抑(おさ)えて今どこにいるのか問(と)いただした。しずくは勝手(かって)なことをしたのを謝(あやま)ると、これからして欲(ほ)しいことを頼(たの)んだ。
 交信(こうしん)が終(お)わると、真(ま)っ先に神崎(かんざき)つくねが声を上げた。「今の、しずくからでしょ?」
 あずみは真顔(まがお)で答(こた)えた。「ええ、そうよ。あまりを助(たす)けに行くわよ。アキ、あなたもよ。あなたの能力(ちから)が必要(ひつよう)みたいなの。来てくれるわよね」
 アキは顔をこわばらせたが、「分かったわ。あたしも…がんばる」
 水木涼(みずきりょう)がアキの頭をなでながら、「よし、よく言った。私がちゃんと守(まも)ってやるからな」
 アキは子供扱(こどもあつか)いされるのがイヤなようで、涼から逃(に)げ出すと、「もう、やめてよね」
 月島貴志(たかし)があずみに駆(か)け寄(よ)ると、「僕(ぼく)もいいですか? 力(ちから)になりたいんです」
 あずみは肯(うなづ)いて、「もちろんよ。しずくも待ってるって言ってたわよ」
「えっ、姉(ねえ)ちゃん知ってるんですか? なんだ…。びっくりさせようと思ってたのに…」
 みんなは笑(わら)いに包(つつ)まれた。その時、ピンクウサギが現れた。あずみが言った。
「さあ、準備(じゅんび)して。私たちの戦(たたか)いの始(はじ)まりよ」
 みんなはてきぱきと準備を調(ととの)えた。あずみは千鶴(ちづる)に声をかけた。「後(あと)はお願(ねが)いね」
 千鶴は、「なに言ってるのよ。ちゃんと戻(もど)って来なさい。みんなもね」
<つぶやき>これからどんな戦いが待っているんでしょう。みんなは無事(ぶじ)に戻れるのか?
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1385「しずく192~大トカゲ」

2023-05-13 17:35:39 | ブログ連載~しずく

 川相姉妹(かわいしまい)は誰(だれ)にも気づかれないようにトラックから出た。そして、月島(つきしま)しずくが通ったのと同じ扉(とびら)を開(あ)けて中へ入った。しかしそこは、あの大男が現れたときと同じ荒涼(こうりょう)とした枯(か)れ野原(のはら)だった。二人は戻(もど)ろうとしたが、扉はすでに消(き)えていた。
 琴音(ことね)が警戒(けいかい)して言った。「お姉(ねえ)ちゃん、気をつけて。またあいつが現れるかも…」
 初音(はつね)は、琴音と背中合(せなかあ)わせになって、いつでも能力(ちから)が使えるように身構(みがま)えた。どこからか女の声が聞こえた。二人がそちらに目をやると、岩(いわ)の上に身体(からだ)を黒いマントで覆(おお)っているメイサがいた。目だけが異様(いよう)にギラギラ輝(かがや)いている。初音が思わず声を上げた。この目には見覚(みおぼ)えがあった。あの洞窟(どうくつ)にいた女だ。しずくが最強(さいきょう)の敵(てき)になると言ったあの…。
 初音は、「あいつは強敵(きょうてき)よ。気をつけないと、こっちがやられるわ」
 メイサは笑(わら)いながら言った。「そうね。あなたたち、あたしには勝(か)てないわ。でも、心配(しんぱい)しないで。あなたたちの相手(あいて)をするのは、あたしじゃなくてこの子(こ)よ」
 メイサが指差(ゆびさ)すと、そこに巨大(きょだい)なトカゲが現れた。二人は思わず後(あと)ずさる。メイサは、
「あたしのことは気にしないで。ここでゆっくり見物(けんぶつ)させてもらうから」
 琴音は、「冗談(じょうだん)じゃないわよ。こんなのとどう戦(たたか)えばいいのよ」
 初音はそれに答(こた)えた。「やるしかないわ。力を合(あ)わせれば、何とかなるわよ」
 大トカゲはすでに狙(ねら)いをつけていた。ゆっくりと二人に近づいて行く。
<つぶやき>幻覚(げんかく)の世界(せかい)では何でもありなんでしょうか? 二人はこいつを倒(たお)せるのか…。
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1380「しずく191~約束」

2023-04-23 17:29:56 | ブログ連載~しずく

 月島(つきしま)しずくが螺旋階段(らせんかいだん)を降(お)りきると、そこには大きな鉄(てつ)の扉(とびら)があった。しずくがその扉に手を触(ふ)れると、しずくの身体(からだ)は扉の中へ吸(す)い込まれていった。
 扉の中は大きな研究室(けんきゅうしつ)だった。巨大(きょだい)な装置(そうち)が並(なら)んでいて、まるで化学工場(かがくこうじょう)のようだ。何人もの研究員(けんきゅういん)が忙(いそが)しく働(はたら)いていて、その中をしずくは歩いて行く。装置の中央(ちゅうおう)あたりに、しずくは日野(ひの)あまりの姿(すがた)を見つけた。しずくは思わず息(いき)を呑(の)んだ。
 あまりは装置の中に組(く)み込まれていた。身体は装置とチューブでつながれ、頭には何本も電極(でんきょく)の針(はり)が突(つ)き刺(さ)さっている。あまりは生(い)きているのか? しずくは、彼女の頬(ほお)に手を当(あ)てた。しずくはホッとした。温(ぬく)もりがあった。まだ、生きている。でも、どうやって助(たす)けるのか? ムリに装置から引き離(はな)すと、あまりの命(いのち)もどうなるか分からない。
 そこへ、研究員たちがやって来た。計器(けいき)のチェックをしているようだ。一人が言った。
「まだ子供(こども)なのに…。この娘(こ)、どうなるんですかねぇ? かわいそうに…」
 もう一人が小声で咎(とが)めるように、「おい、誰(だれ)かに聞かれたら大変(たいへん)なことになるぞ。同情(どうじょう)なんかするな。どうせもう助からないよ。こいつはもう、この装置の部品(ぶひん)なんだから」
 研究員たちが立ち去(さ)ると、しずくはまた、あまりの頬にふれた。能力(ちから)を使いあまりの心の中へ入り込む。しずくの目から涙(なみだ)があふれてきた。あまりはあきらめてはいなかった。生きようと必死(ひっし)でもがいていた。しずくは必(かなら)ず助けると、あまりと約束(やくそく)をした。
<つぶやき>まさかこんなことになってるなんて…。彼女を助けることはできるのか…。
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