茶雅馬茶道教室 ~MIHO企画~

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黒文字「雨情楊枝」を求めてGO!

2010年08月27日 | Weblog
お茶席で黒文字は当たり前のようにお菓子とセットとして扱われます。
月例でも黒文字を一緒にお出ししていますが普通の黒文字と違うのですがお分かりになった方はいらしているでしょうか。
あの「黒文字」少々ぶっさいくだとおもいませんでしたか?実は伝統技術で受け継がれている技法のひとつでした。
貞恭庵でお出ししている黒文字は、千葉の農家のおじいさまがひとつひとつ手作りの物を使用していました。
地元の物産館で求めたものでしたが、今回この物産館に行っても無くとても探しました。
行き着くところこの黒文字には名があり「雨情楊枝」というのでした。この技法を守っていらした方の作でした。

ところで、「雨情楊枝」ってご存知ですか?

雨城楊枝は千葉県の特産物の一つです。
その製造は江戸時代にさかのぼるもので、上総久留里藩の藩士の間に内職としてはじめられ、久留里付近の山中に多く自生する黒文字の木を材料として実用品のみを作成。
明治の末年になるといわゆる細工楊枝が考案され、趣味豊かな民芸品として広く知られるようになり、東京にも沢山出荷されていたようです。
呼び名も昭和の中頃に、それまでの上総小楊枝から久留里城の異名である雨城の名を冠して、”雨城楊枝”と名称を変えて現在に至っています。

私の探していた方は今年春にお亡くなりになってしまったおじいちゃまでした。
でもこの方の奥様にお会いすることができました。
突然電話してにも関わらず、迎えてくれて家に訪ねてしまいました。場所は久留里の山奥でした。
生前時間があっては一生懸命作成した「雨情楊枝」が沢山山のように箱に入ってました。
小さい黒文字に細工されてとても細かい作業でした。
「うちの人暇さえあれば一生懸命作っていたんだよね。こんなにあるけど小さいでしょう?使えないんじゃないの?もともと仕事退職してから手習いで始めたことだから練習が多いでしょうね?羊羹屋さんに頼まれて頑張っていたんだよね?」

おばあちゃまの話を聞いて「数少ないですが、手元にあるおじいちゃまの黒文字です!」と袋を差出したら驚いて下さりました。ビニール袋には作成者として奥様の名前が書かれていたからです。
私は奥様が作っていたのかと思っていたので違うことにびっくりでしたが、おじいちゃまの優しさだったのだと理解して袋をお見せすることにしたのでした。
するとおばあちゃま「へ~え~私の名前で登録していたんだ~!知らなかったわ~!」「楊枝の木は沢山あるんだけと、私はできないからね~!おじいちゃんよくやってなね~。」とちょっと思い出して下さったのか、おじいちゃまのお話をして下さいました。
おばあちゃまは今も畑仕事をしているようですが、優しくほのぼのな方なんです。そんな方の旦那様だからか、おじいちゃまの雨情楊枝は優しいタッチで暖かです。
何人かも作品を目にしてきましたが、箱の中の作品を見て心があることに驚きました。
箱いっぱいに優しさが伝わってきました。
少々短く、また細工がされていて賑やかに見えがちですがその黒文字を観ていたら皆様にお披露目したくなりました。
おばあちゃまが使えるのなら持っていっていいよ!と言われ譲って戴くことにしました。
「雨情楊枝」は千葉の久留里周辺で受け継がれていますが、大事な文化だと思いました。
貞恭庵で少しでも地域の特産品を広め伝えることができたらと少々意欲が出てきました。

黒文字の名は若枝の表面にでる斑紋を文字に見立てたものといわれていますが現代ではあまり使われいませんが、香料として化粧品、石鹸などに盛んに使われていたようです。
また枝(烏樟)や根(釣樟)を薬用にもだそうです(養命酒など)。

おじいちゃまの思い出の「黒文字」と伝統文化の「雨情楊枝」楽しみにしていて下さい。