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谷崎潤一郎『細雪』中巻

2009-05-21 14:24:00 | ノンジャンル
 谷崎潤一郎が'47年に発表した「細雪」中巻を読みました。
 妙子は奥畑の生活力に疑問を持ち、人形作りを止めて洋裁を本格的に習い始める一方、舞の師匠に教えに来てもらい踊りの会に参加します。そんな折り、大雨で山津波が起き、妙子は寸でのところを写真家の板倉に助けられます。隣人の家族の一部がドイツに帰るのを横浜で見送るために、幸子と悦子が上京し、鶴子の家で台風に会って恐怖を味わい、旅館に移ったところへ奥畑から妙子と板倉の仲を疑う手紙が届き、幸子らは芦屋に帰ります。隣人の残りの家族がドイツに帰った後、妙子が洋裁を習うためにフランスに行きたいという話に本家が反対したのをきっかけに、妙子が奥畑に愛想尽かしをして板倉と結婚約束をしていることを幸子は知り、妙子にそれを断念することを説得してもらうため、舞の会を口実に雪子を芦屋に呼びます。妙子の人形作りの弟子だったロシア人の旅立ちを幸子たちは見送り、その帰りに馴染みの鮨屋で楽しい時間を過ごします。恒例の京都への花見の後、悦子が猩紅熱を発症し、その看病のために雪子の帰京が遅れます。そしてその病気が峠を超えた頃、妙子は本家が預かる自分の財産を取り戻すために、幸子とともに上京しますが、板倉が耳の手術の後具合が悪くなったとの報があり、妙子はすぐに病院に駆けつけます。その後、幸子は鶴子から板倉と妙子との噂が雪子の縁談に影響している事実を知らされますが、ほどなく板倉は壊疽で片足を切断されたあげくに亡くなってしまうのでした。
 ここでは板倉の酷い死だけでなく、舞の師匠も亡くなり、また山津波でも多くの死者が出たことに言及されます。加えて、階級、身分といった問題が前面に出ていて、板倉と妙子との関係では「丁稚上がり」という差別的な言辞も飛び出し、上巻でのほんわかした感じとは違って、何かえげつなさを感じさせるような文章も見られます。執筆が戦時中であったことも影響しているのかもしれません。ただ、そうした中でも次々に起こる出来事が飽きさせず、先へ先へと読ませる力を持っている文章でもあります。下巻に期待です。