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阿川佐和子『婚約のあとで』

2009-04-30 16:10:00 | ノンジャンル
 朝日新聞の特集記事「2008年 感動と発見の一冊」で挙げられていた、阿川佐和子さんの'08年作品『婚約のあとで』を読みました。女性の名前がタイトルになっている8つの短編からなっている本です。
 「波」は、ニューヨークに一年転勤で行っている剛士と婚約中の波が、ニューヨークから帰る飛行機で知り合った中年男性から、結婚は急いでするもんじゃないと言われる話。
 「碧」は、波の妹で海洋研究所に勤める碧が、父の知人と密会する一方、同僚の文太に強引にキスされるのを拒めないという話。
 「真理」は、インダストリアル・デザイナーの真理が、化粧品会社の企画部の波と仕事をしながら、恋人のマー君をもてなす方法を考えるという話。
 「優美」は、二人の子供を持つ優美が、自分のビーズの作品を友人の紹介で店に置いてもらうようになりますが、その店のオーナー会社の企画部の波と出会い、波の妹が自分の夫の浮気相手であることを知るという話。
 「凧」は、もうすぐ50才になり、真理のアシスタントをしている凧が、息子をもうけた夫と離婚した後にも、まだ夫と性生活を続けているという話。
 「宙」は、盲目の宙の父が、碧と駆落ちする一方、宙は恋人と結婚などせず、一緒にいられるだけで幸せだと思う話。
 「花」は、結婚5年目の花が、友人で妊娠した碧が家で飼っていたミジンコを碧に渡すために引き取りに行く話。
 「波」は、無事子供を産んで、晴れて結婚式を挙げた碧に会った波が、結婚を決意し、ニューヨークに向かう話、です。
 タイトルの女性がその話の話し手になっていて、少しずつ全体の話が進むという、凝った構成になっています。が、打海文三さんほどではないにしても、語り口が饒舌で、私は途中で読むのを諦めました。また、語り手の女性たちも個性に乏しく、変に冷静に周囲を見ていて、感情移入しがたいものでした。タレントとしての阿川さんには好感を持っていたので、残念です。凝った作りの短編小説を読んでみたい方にはオススメかも。

浜なつ子『アジア行きの男たち』

2009-04-29 15:04:00 | ノンジャンル
 浜なつ子さんの'01年作品「アジア行きの男たち」を読みました。
 「カンボジアで事業をはじめたところ、次々と騙され財産を失った会社経営者。ところが、闇のプノンペンで出会ったのは、子猫のようにかわいいベトナム人女性だった‥‥。」「『日本だとみんな忙しくて遊んでくれないから』と、世界で一番面白い国フィリピンに渡った元消防団員。」「ゲバラを尊敬し、労働組合の専従として活動してきた運動家。その夢と挫折。やがて彼がフィリピンで見いだした己の姿は、結婚手続きのアシスト業者だった。」「盗難手形に手を出して逃げた先がバンコク。微笑みの国・タイで人生のはかなさを語る元編集プロダクション社長。」「四十歳を過ぎてバンコク辺りでぐれているのは、いい子ゆえに『失敗した過去』を取り戻そうとしているせいなのか。追い詰めても追い詰めても、自分をつかめない元優等生。」「そしてあのタマモトさん。一九七三年、日本国中を騒がせた『玉本ハーレム事件』の玉本さんがカンボジアのアンコール遺跡の近くに住んでいるという。さっそく訪ねたのだが‥‥。」以上がまえがきに書かれていた本書の内容です。最後の玉本ハーレム事件というのは、タイで15才から19才の12人の女性と結婚し、幼すぎて結婚できない少女2人を養女としていたことで、婦女暴行、幼年者の人身売買の容疑で逮捕され、5年の懲役の判決を受けた日本人の事件のことです。
 浜さんの文章はご本人の思い入れの強い文章で、それに同調できないと読むのが苦痛になり、飛ばし読みし始めてしまいます。本書も同様で、前掲のまえがきの文でも分かるように、何か週刊紙の見出しを見ているようで、読んでいて食傷気味になりました。最後の玉本さんの文についても、結局本人には会えずじまいで、尻切れとんぼに終わっていました。週刊紙的な長文に耐えられる方にはオススメです。


井上荒野『切羽へ』

2009-04-28 18:36:00 | ノンジャンル
 ソニーのCD倶楽部の冊子に国連人口基金による2008年国別の平均寿命ランキングが載っていました。男性1位の国はアイスランドで80.3才、2位は香港で79.5才、3位が日本とスイスで79.1才。女性1位の国は日本で86.2才、2位は香港で85.2才、3位がスペインで84.3才でした。日本が突出して1位だと思っていましたが、意外な国が日本と肩を並べていました。厚生労働省による2005年の都道府県別ランキングでは、男性1位が長野で79.8才、2位が滋賀で79.6才、3位がわが神奈川で79.5才。女性は1位が沖縄で86.9才、2位が島根で86.6才、3位が熊本で86.5才、わが神奈川は86.3才で18位でした。これもちょっと意外な結果でした。これでいくと私の母は平均まで生きたとしてもあと9年は生きられる計算になりますが、できれば20年以上元気でいてほしいと思ったりしています。

 さて、朝日新聞の特集記事「2008年 感動と発見の一冊」で挙げられていた、井上荒野さんの「切羽へ」を読みました。2008年の直木賞を受賞した作品です。
 小さな島で小学校の保健室の先生をしている私は、画家の夫と暮らしています。学校には9人の生徒と、校長先生、教頭先生、唯一の教師である30過ぎの月江がいますが、新任の音楽の先生として、若い男性の石和が赴任してきます。夏休みに私たち夫婦が東京に滞在している間に、私がよく訪ねていた、一人住まいの老人のしずかさんが入院してしまいます。そしてある日、月江の不倫相手である本土さんの妻が島を訪ねてきて、月江とつかみ合いのケンカをし、その結果、本土さんは妻と一緒に東京に帰ってしまいます。一人になった月江は石和と肉体関係となり、結婚することにしたと私に言いに来ます。冬になり、今度は本土さんが島に戻ってきて、石和とケンカになり、石和は島を去ります。月江はまた本土さんと復縁し、結婚はあきらめます。そんな折り、入院して度々淫夢を見ていた老女のしずかさんが亡くなります。春になると、私は夫の子供を授かるのでした。
 文体はとても読みやすいのですが、淡々とした日常が描かれるだけで、事件が起こっても、それは何のカタルシスを感じさせるものでもなく、なぜこの作品が直木賞を受賞したのか、理解できませんでした。それよりも井上さんがあの井上光晴さんの娘さんであることを知って、ビックリしました。暇な時間のある方にはオススメです。

浜なつ子『そんなアジアに騙されて』

2009-04-27 14:19:00 | ノンジャンル
 今日、厚木市のつつじが丘公園と愛川町のあいかわ公園に母とツツジを見に行ってきました。先日鎌倉で見た美しいツツジ、全体が薄いピンク色で、中心が濃いビンクのツツジは「あけぼの」と言うそうです。咲きはまだ1、2分といったところで、盛りはこれからのようです。また満開の頃を狙って行ってみようと思います。

 さて、浜なつ子さんの'01年作品「そんなアジアに騙されて」を読みました。日本人で東南アジアに移住した人々の話です。
 登場するのは、ナショナルチームの代表に選ばれるほどのバレーボール選手でありながら、就職先で東南アジアのプラント建設をしているうちにサウジアラビアのナショナルコーチになるために退職し、湾岸戦争で失業して、それ以降サモアのバレーチームのコーチになることを夢見ながら、底辺の生活を続けるベトナム在住の男、ベトナム戦争前は資産家の娘だった義母が博打で借金をしまくり困る、ベトナム在住の男、元バックパッカーで、現在は日本人の妻とバンコクで惣菜の宅配業を営む男、ベトナムでビジネスチャンスを伺う男、カンボジアで印刷業を営む男、バンコクで焼酎の代理店を営む男らです。アルジェリアでは売春を行なうのが女性受刑者であるとか、カンボジアで6才から12才までの子供の売春がおおっぴらに行なわれているとか、バングラデシュに乞食の巣窟と化しているフェリーがあるとか、興味深い話もありましたが、ここでもまた著者が当事者になりきって話を進めたりするところに、違和感を覚えました。東南アジアの国々が置かれている生活状況を知りたい方にはオススメです。

とり・みき『ロボ道楽の逆襲』

2009-04-26 15:00:00 | ノンジャンル
 23日発行のフリーペーパー「R25」に、クリント・イーストウッドの映画に出て来た車、グラン・トリノに関する記事が載っていました。フォードが72年に作ったヴィンテージ・カーですが、燃費は何とリッター1.5km! 現在リッター20km、30kmと言っているのに、何という数字! こんな車を作っていたとは、どんなにフォルムがカッコよかろうと、許せるものではありません。ちょっとビックリしました。

 さて、朝日新聞で紹介されていた、とり・みきさんの最新短編集「ロボ道楽の逆襲」を読みました。
 表題にもなっている「ロボ道楽の逆襲」は、今までに見たこともないギャグマンガで、画面転換が一つのコマだけで行なわれ、次から次へと新しいエピソードが続き、と思っていると以前に出て来たキャラクターがまた出てきたりして、話についていくのが大変なのですが、ギャグが抱腹絶倒なので、一気に読めてしまいました。
 この作品以外にも、つげ義春氏のような不思議なタッチのマンガや、水木しげる氏やみなもと太郎氏のマンガをコピーした作品、マンガにおける擬音語の歴史を、実際にその漫画を描くことによってたどった作品など、とり・みきさんの才能を感じさせる作品が目白押しでした。今までのとり・みき作品のファン以外の方にもオススメです。