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横山裕一『トラベル』

2009-05-14 18:13:00 | ノンジャンル
 月刊ソトコトで紹介されていた、横山裕一さんの'06年のマンガ「トラベル」を読みました。
 シンプルな線で極端に簡略化された、だ円形の頭を持つ無表情の3人の若い男性が、自動販売機で600円分の切符を買い、自動改札機を通り、アフロのような頭の店員がいる売店の前を通って、編みがさのようなものを被った3人の運転手が並ぶ電車に乗り込みます。天井は透明で、宇宙空間が見えます。3人は動き出した列車の車内を歩き出しますが、車両が変わる度に座席の形が変わり、様々な人に見つめられます。通路が2つある車両、同じキャップと服を着た大勢が座る2階席、コンパートメントや人が寝ている寝台がある車両を通っていると、窓からは変わった飛行機が真上を通過するのが見えます。次々と狭い通路を人とすれ違い、突如空から差し込む無数の光の筋に車両内は黒白のコントラストになり、多くのテレビを人が見ている車両を過ぎてから、自動給水機で水を飲み、キャンデーのような店員の売店で、2人がタバコとライターを買うと、次の車両でやっと3人は席につきます。窓の覆いを上げると不思議な山や荒れ地が見え、急に住宅街になります。やがてそれは植物に覆われた建造物になり、広い水上を通る鉄橋にさしかかると、筏が下を横切り、線路わきに漁師や無数の水鳥が。草や小石をはね飛ばして列車が進むと、すれ違う列車の窓にくっきりと人の顔が見えます。雨が降リだし、雷が鳴りますが、止んだ後は夕日が差し、田舎の駅に到着すると乗り込んできた客は3人のそばに座って本を読み始めます。大きな鉄塔の真下、断崖絶壁の壁の中、ダムの淵を通り、山地に差しかかると2人がタバコを吸い始め、吐かれた煙は直進します。登山者や狼、鹿の群れ、猟師達のそばを列車は通り過ぎ、突然都会に入ります。噴水、踏切に並ぶ無数の人。モデルルームの下、20車線道路の上、無数の人が通路を占めるデパートの中を通り、やがて5つの電車と平行して進み、ターミナル駅に到着。再出発すると向かいの電車には髪の上に目がある男が。巨大な看板のわき、男たちが談笑する橋の下、黒ペンキを壁にストライプ柄に塗る男達のわきを過ぎ、突如現れる黒い影はヘリコプターのものです。1人が腕時計を見ると、無人駅が見え始め、3人はそこで降ります。長い登り階段の果ての自動改札口を出て、林の中を歩いて行くと、巨大な石が等間隔に並ぶ荒波すさぶ海岸に出るのでした。
 一切台詞はありませんが、雨などの音が感じられます。カット割りも独特で、数カットで一つの意味を持ち、最初のカットだけでは何の意味があるのか分からないことが多々ありました。絵もシンプルな直線で書かれた独特のもので、いわゆるマンガといったイメージではなく、イラストと呼んだ方がふさわしいものでした。単純なストーリーながら次はどんなことが起きるのか、どんな絵が待っているのかワクワクしてしまう面白さで、最後にそれぞれの絵を説明する註がついているのにも笑いました。一風変わったマンガを読みたい方にはオススメです。