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増村保造監督『悪名 縄張荒らし』その2

2021-09-30 00:04:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 翌日、モンキーパークに来た5人。お絹は貞とお照と自分の分のラムネは買うが、朝吉の分はわざと買わず、ラムネを飲んで「あー、おいしい」と言う。「サルはいいなあ。オスとメスが何匹も一緒に仲良く暮らしているから」と貞にこぼす朝吉。琴糸は自分が16の時の写真を朝吉に見せる。「みなさん、ありがとうございました。うち、生まれてからこんなに親切にしてもろうたことありません。九州に帰ります。朝吉さん、ほんとうにありがとうございました。一生忘れません。お絹さん、朝吉さんはよか人よ。こんな人めったにおられんとよ。大事にしておくんさいね」と琴糸は言うと、彼女に背を向けている朝吉を残して、去っていく。
 数日後、落とし前をつけに、松島の縄張りの真ん中の廓に来る朝吉と貞。やがて大芝組の連中が「顔を貸してくれ」と現われ、「松島の元締めから待ったがかかった」と言う。「長五郎の親分だ」と貞。「とにかく生身の体で連れて来いと頼まれた」と子分。「まな板の上に乗せてもらおうか」と店を出る朝吉。
 元締めのところへ連れていかれると、元締め(中村鴈治安郎)は「私の子分の長五郎をひどい目に合わせたそうだな。私はあんたを殺すより生かして使いとうなった。長五郎の持っていた松島の縄張りを扱ってみてくれないか?」と言う。包帯だらけの長五郎も出てきて「私からもお頼み申します」と言って来る。元締めは「因島のイトさんの了解は得ている」とも言う。朝吉は元締めの申し出を引き受ける。
 二人は長五郎の子分だった連中を連れて、お絹とお照が働く店にやってくるが、そこに貞の元子分がやってきて、ヒモにしていた女を、女を監禁して売春させている源八(財津一郎)にさらわれたと訴えてきた。 貞は元子分と源八のもとを訪れるが、源八は「自分は空手の名手で、そっちの脅しに屈するような人間ではない」と言う。貞は一方的に源八をやっつけて、貞の元子分の妻を引き取ることになる。元子分はすぐに妻を抱こうとするが、妻は金をもらわないとそういう気分になれないと言って、拒否する。源八は、元子分の妻を連れて行き、新世界を牛耳るカポネの親分の話を元子分にする。結局、貞の元子分は妻を源八にまた取られたまま、貞のもとへ戻って来る。
 翌日、朝吉たちは荷車を引いて、源八のもとを訪れ、家の物を外へ次々と持ち出す。「女を食い物にしている男など大阪に置いておくわけにいかない」と言った朝吉は源八をやっつけると、「源八の女房に恨みのある者はどついたれ」と貞はいい、女たちは源八の女房を袋叩きにする。家具類は荷車に積み、立ち退き料だけを源八に渡して、それ以外の金は全部朝吉がもらった。朝吉は女たちに平等に金を渡してあげ、「これを持って国に帰り」と言う。そこへ元締めが現われ、松島で働けばきれいなベベ着て金も稼げるぜと言うと、皆松島へ行くことになってしまう。
 射的で遊ぶ朝吉。するといつの間にかヤクザに囲まれ、黒ずくめの男が実弾を使って射的の的を撃っていった。「カポネや」と自己紹介する黒ずくめの男。「空手の源八は俺の舎弟だ。それを承知でかわいがってくれたのか?」「文句あるかい?」「松島の元締めがバックに付いたからといって、大きな顔をさらしたらあかんで。まあ、ええわあ」と立ち去るカポネ。
 カポネ「元締めはん、カポネだす」元締め「これは珍しいな。何しに来たん?」「ちょっと廓で遊ばせてもらおうと思うてん」「そら、おおきに、ごひいきに。どや、ええ子置いてるやろ? 足抜きさせようと思ったら困るで」「また、これや。かないまへんなあ。わいところの源八っいう舎弟が、元締めはんとこの朝吉いうお方にえらいどつかれましたんや」「それは面目丸つぶれやなあ」「つぶれすぎて困ってまんのや。どないしたらよろしいおまんなんやろ?」「それ、きっぱりと切ってくれ」「ほな、そないさしてもらいます。おおきに」。
 「村上朝吉」の表札。朝食をかっこむ朝吉。不機嫌なお絹。「昔は廓の女を助けてくれたのに、今は廓の女をしばりつけている。私、最近少し変なの」と言ったお絹は、「お照ちゃんにはやや子ができたっていうのに」と泣き出す。「今夜俺が作ったる」と朝吉。


(また明日へ続きます……)

増村保造監督『悪名 縄張荒らし』その1

2021-09-29 00:10:00 | ノンジャンル
 増村保造監督、宮川一夫撮影、富田勲音楽、勝プロダクション製作の1974年作品『悪名 縄張荒らし』をDVDで観ました。
 サイト「MOVIE WALKER PRESS」のあらすじに加筆修正させていただくと、
 軍鶏の賭けに負けた朝吉(勝新太郎)。
「昭和十二年、中国大陸に戦火起る」の字幕。夜の繁華街。赤線廃止の運動をする人々。河内に百姓が嫌いで両親から勘当されたが、奉納相撲大会で優勝した賞金二十円を持って、仲間を引き連れ、大阪松島遊廓に繰り出した男がいた。朝吉である。そこで、朝吉は九州から売られて来たと言う、琴糸(十朱幸代)と意気投合した。ところが一同がドンチャン騒ぎをしているところへ、吉岡組の一の子分・モートルの貞(北大路欣也)が乗り込み険悪な空気。
 翌朝、貞は子分(藤田まこと)らを引き連れて朝吉たちを待ち伏せしたが、逆にのされてしまう。そんな朝吉の腕を見込んだ親分の吉は、客分として招いた。
 ところが、朝吉が吉岡の賭場で大儲けして席を立ったために、「勝ち逃げするのか」と因縁をつけられ、また喧嘩になりそうになる。
 朝吉は、その足で琴糸に会いに出かける。琴糸は大事なお客を怒らせたとして折檻され、死にたいと思っていた。その金で琴糸を身請けしようとするが額が少なすぎたために、朝吉は琴糸を連れて逃げることにする。ところが丁度その時、吉岡組が喧嘩のために全員出動となり、朝吉はやむなく琴糸を吉岡の妻に預けた。しかし吉岡の妻は琴糸のいる廓が別の親分・長五郎の縄張りだと言って、すぐにここを出るように琴糸に言う。その吉岡は喧嘩を恐れて、警察に連絡し、とりあえず新世界の親分が仲裁してくれることになる。帰って来た吉岡を長五郎の子分の大岩が待っていたが、朝吉も琴糸も姿を見せないため、吉岡は後で二人を松島のもとへ届けると言って、一旦大岩に帰ってもらう。
 トラブルに巻き込まれたくない吉岡は助っ人代を朝吉に渡し、組を出て行ってもらうが、それを見た貞は、遂に頭に来て、吉岡から受けた盃を返上し、隣家のお絹とお照(太地喜和子)を連れ出した。
 二人は大岩と出会い、顔を貸すが、拳銃を朝吉が持っているとだまされた大岩は喉元にドスを突き付けられ、その場を去る。
 そして朝吉と貞は兄弟固めの盃を交わし、お絹とお照を連れて宝塚の温泉へ泊りに行くことにする。
 その頃、琴糸は吉岡のもとを訪れていた。運悪く、その場に長五郎とその子分らが乗り込んだ。長五郎の子分らからリンチを受ける吉岡。朝吉は男の人と風呂に入るのは初めてだというお絹と一緒に時間を過ごし、初夜を迎えるというお絹からお絹を妻にするという血判状に血判を押し、朝吉はお絹を抱く。
 吉岡のもとへ朝吉と貞が戻って来て、二人がかりで長五郎を痛めつけ琴糸の居所を聞き出した。そして吉岡は朝吉に拳銃を手渡す。
 瀬戸内海の因島には親分が二人いることを宿屋の女中(悠木千帆)から聞いた朝吉と貞は、親分の一人、シルクハットの親分(大滝秀治)に縁のない漁師を紹介してもらう。女郎屋に売られていた琴糸を助け出したが、漁師は階段から落ちて、腰を抜かしていた。仕方なく、朝吉と貞は琴糸を船に乗せて、自分たちで漕いでいくが、潮の流れが早く、船は島へ戻ってきてしまう
 貞は一人でその場を離れ、朝吉と琴糸はもう一人の親分の縄張りの麻生旅館へと走る。貞はシルクハットの親分の子分たちに見つかり、麻生旅館へと向かう。
 麻生旅館に着いたシルクハットの親分は琴糸に「無事なうちに帰れ」と言うが、朝吉は拳銃を取り出して、シルクハットの親分に向ける。そこへ海の女王こと麻生イト親分(杉村春子)が現われ、仲裁に入ってくれる。朝吉は自分の体で落とし前をつけると言い、上半身裸になった朝吉は、背中をイト親分に杖でさんざん殴られる。
 大阪に戻ると、朝吉の帰りをお絹が待っていた。自分は朝吉の家内だと自己紹介するお絹に、顔色を曇らす琴糸は、お絹がいなくなると、朝吉の裏切りを責める。夜は琴糸と一緒に寝るというお絹は、朝吉に枕を放ってよこす。貞とお照がセックスしてる隣に眠らせろという朝吉は貞に断られ、結局お絹と琴糸の間に寝る。

(明日へ続きます……)

増村保造監督『御用牙 かみそり半蔵地獄責め』

2021-09-28 05:13:00 | ノンジャンル
 増村保造監督・脚本、宮川一夫撮影、富田勲音楽、勝プロダクション製作の1973年作品『御用牙 かみそり半蔵地獄責め』をDVDで観ました。
 サイト「MOVIE WALKER PRESS」のあらすじに加筆修正させていただくと、
「江戸北町奉行所同心・板見半蔵(勝新太郎)は、二人組の盗っ人を捕えたところ、盗品は水車小屋に捨てられていた女の屍体から盗んだものだ、と白状した。半蔵はその死体の状況から、今、寺や神社で流行っている“子おろし”に関係があるとにらんだ。
 寺や神社は半蔵の管轄外だったが、子分の二人(一人は蟹江敬三で、二人とも島流しの過去を持つ)と強引に女神主・大酔女のところへ押しかけ、“ややおろし”の現場をおさえた。そして、大酔女に娘の死体を見せ、その死体が駿河屋の娘お町であることを白状させた。
 駿河屋の主人から、お町が海山寺にお茶、お花を習いに通っていたことを知った半蔵は、その尼寺に潜り込んだ。その茶室では、住職の如海尼が豪商たちを集め、全裸の女を囲んでせりを行っていた。踏み込んだ半蔵に驚いて逃げ回る豪商たち。半蔵は錦地の覆面男を追うが、突然御子柴十内(黒沢年男)が現われ、その男を逃がした。
 住職の如海尼に対し、半蔵は最初は石抱えの拷問を失神するまで行ない、次に性奴隷にする拷問を与えると、如海尼は「もっと続けて」と言い、バックについている男が大久保山城守(小松方正)だと告白する。
 そんな時、半蔵は奉行の矢部常陸守から、大泥棒で大悪党の浜島庄兵衛(佐藤慶)が江戸にやって来て、金座(幕府の命じるもとに金貨、銀貨を作っている場所)を狙っているという噂を聞かされ、捕えるように上司から命ぜられる。
 半蔵は、金座の若後家のりくを犯して、肉体の喜びを思い出させ、彼女の寝床の押し入れに身を隠す。ところが、その部屋で、半蔵が潜んでいるとは知らない、大久保と筆頭与力の大西孫兵衛(西村晃)が私腹を肥やす悪事(金貨の純度を半分にし、それで生じる儲けを自分たちで分ける)の相談を始めた。
 やがて、半蔵がにらんだように庄兵衛が昼間、金座改めと称して武士の格好をし、正面玄関から堂々と屋敷に入って来た。夜、泥棒姿に着替えた庄兵衛とその部下たちは、まずりくの部屋へ向かうが、りくの布団を剥ぐと、そこにいたのは上半身裸の半蔵だった。半蔵は子分が笛を吹き、番屋に詰めていた役人たちが到着するまで、屋敷に仕掛けられた様々な殺人マシーンを使いながら、白兵戦を庄兵衛の部下たちと演じる。やがて不利と見た庄兵衛は、幼い娘を人質にし、半蔵に刀を捨てなければ娘の首を掻っ切ると言い出す。半蔵は大きな桶を背中にしょって現われ、刀を捨てて庄兵衛の部下たちの中に進む。すると庄兵衛は半蔵との約束を反故にし、半蔵の見ている前で幼い娘を強姦しようとする。それを知った半蔵は桶の中から武器を取り出し、次から次へと庄兵衛の部下を斬り殺していき、幼い娘を桶に入れると、安全な場所へとその樽を転がす。最後に残った庄兵衛を半蔵はコテンパンにやっつけ、庄兵衛の身は役人たちの手に落ちる。
 その場に現れた庄兵衛逮捕に喜ぶ大西に、半蔵は褒美に大久保の首を頂きたい、と言う。半蔵は金貨の話、寺で売春をさせていた話を多くの人が見守る中でして、証人として如海尼とりくの名前を挙げる。半蔵の話に相違ないとうなずくりく。半蔵の上司は、今の話が本当なら大久保と大西に追って沙汰があるだろうと言うと、大久保は「自分は覚悟ができている」と言い放ち、駕籠に乗って去る。
 数日後、半蔵は父の墓参りをする。子分たちの話によると、半蔵の父も十手持ちで、間違って寺社を取調べ、勘定奉行の仕事に手をつけたことを理由に切腹したのだと言う。そして彼らは「自分だったら大久保らから大金を脅し取り、父のために立派な墓を作るのに」と言って、半蔵のことを笑い合う。
 橋の上。大久保の家来だった剣豪、御子柴十内とすれ違い、彼から大久保は土地と名誉をすべて幕府によってはく奪されたと聞かされる。そしてどうしても半蔵と決闘をしたいと十内は言う。何度も断る半蔵に対し、諦めない十内。半蔵は仕方なく刀を抜き、十内と決闘する。刀を何回か交し合った後、二人は動きを止める。したたる血。半蔵が後ろに離れると、その血は十内の腹から流れ落ちているのが分かる。「バカが」と言い放つ半蔵。崩れ落ちる十内を残し、半蔵と二人の子分は江戸の町の見回りに出かけるのだった。」

 文句なしの傑作です。宮川一夫さんが撮る暗い画面も印象的でした。

増村保造監督『音楽』

2021-09-27 06:08:00 | ノンジャンル
 先日『やるっきゃない! 吉武輝子が聞く土井たか子の人生』を読み終わりました。自民党の対抗勢力として護憲政党・日本社会党が活躍していた頃の話が中心で、今こそ社民党の総選挙のために応援演説を土井さんにしてもらいたいと思ったりしました。

 さて、増村保造監督・脚本の1972年作品『音楽』をDVDで観ました。

サイト「映画ウォッチ」のあらすじに加筆修正させていただくと、
「都心で精神分析の診療所を開いている汐見和順(細川俊之)のところに、貿易会社に勤める若い女性(黒沢のり子)が治療を受けに来ます。名前は弓川麗子。まぶたがヒステリーのせいでチック症状を起こし、いかにも落ち着きがありません。彼女は「音楽が聞こえない」と汐見に訴えます。テレビやラジオをつけていても人の声は聞こえるのに、音楽が流れ出すとそれだけが耳に入ってこないというのです。
 麗子には江上隆一(森次浩司)という恋人がいました。江上とは肉体関係がありましたが、麗子は以前親の決めた許婚である又従兄にレイプされた経験があり、そのことを江上に打ち明けることができません。「そのせいで体の不調が起こるのでは?」と麗子は自己分析を行います。汐見は麗子に勝手な分析をすることを禁じ、毎週診察に来ることを命じます。
 やがて麗子の本格的な治療が始まりました。汐見が話を聞くうち、麗子は「音楽が聞こえない」というのは実は嘘だということ、幼い頃に兄と性的な遊びをしたこと、それ以降ハサミに異常な執着を持つようになったこと、温泉宿で叔母が男と逢引した場面を見てしまったことなどを語り始めます。
 そしてある日、診療所にひとりの男が怒鳴り込んできます。彼は麗子の恋人である江上でした。江上は麗子の日記を盗み読みし、そこに書いてあった嘘の記録から汐見と麗子が肉体関係を持ったと勘違いしたのです。汐見の説明で江上は自分の行為を反省。「麗子の精神疾患を治してほしい」と汐見に頭を下げます。
 麗子の治療はまだまだ続きました。自由連想法がキッカケとなり、麗子は高校生の頃の体験を思い出します。それは実の兄が指先で麗子の女性器を探り、麗子もエクスタシーを感じたという出来事でした。そして温泉宿で叔母が逢引したのもその兄だったのです。叔母との関係がバレて兄は勘当され、今は行方知れずになっています。治療が続くうち、麗子はその兄と再会。彼のアパートに行くと、兄は水商売の女と同棲していました。彼女から妹との関係を疑われた兄はその女の求めにしたがって、女の目の前で麗子を抱きます。ついに近親相姦の関係になってしまうのでした。
 麗子はそのことを汐見に報告。汐見は「麗子は兄への肉体的欲望とそれを拒否する良心に引き裂かれている」という診断を下します。完治には荒療治と判断し、汐見は麗子と一緒に彼女の兄に会いに行きます。そこには兄と同棲女性の間にできた赤ん坊がいました。その赤ん坊を抱きしめながら泣き出す麗子。結局、麗子は兄との間に赤ん坊を作りたいという強い気持ちに捕らえられ、他の男とのセックスに没頭できなかったのです。妊娠してしまっては兄との赤ん坊が作れないからでした。そのことが分かった麗子は兄への執着を捨て、江上と再び恋人の関係に戻ります。江上が汐見に当てた手紙によると、今度はちゃんと「音楽」が聞こえ、麗子はエクスタシーを感じられるようになっていたのでした。

 黒沢のり子の吐き捨てるようなセリフ回しが印象的でした。

増村保造監督『遊び』

2021-09-26 13:29:00 | ノンジャンル
 増村保造監督・潤色の1971年作品『遊び』をDVDで観ました。

 サイト「映画ウォッチ」のあらすじに加筆修正させていただくと、

「電気製品の部品を作る町工場で働く、やっと十六歳になった少女(関根恵子)を母親が訪れる。金の無心である。カリエスで寝たきりの姉を抱える窮状を訴えるが、少女もお金には困っているので、にべもなく追いかえす他ない。少女は街の公衆電話の電話帳を調べる。元行員のヨシ子に連絡を取るためである。キャバレーのホステスになって見違えるほどきれいになったヨシ子は、工場の寮の少女たちの部屋をキャバレーのマネージャーを連れてホステスの仕事への勧誘に訪れたことがあった。 
 少女に一人の背の高い少年(大門正明)が声をかける。キャバレーに電話しようかと言う少女に、電話をしてもホステスはまだ出勤していない、晩まで付き合わないかと遊びに誘う。二人は喫茶店へ行き、それからやくざ映画を見に映画館に行く。少女にとって男と遊びに出るのは初めての体験だった。少女は彼女の足に伸びてきた少年の大きな手を握る。
 映画館を出て少年は、指図を仰ぐために「兄貴」に電話をかけるが留守だった。少女より二つ年上の少年の母親はおでんの屋台をひいているが、ひどい飲んだくれだった。街で母を愚弄したやくざ達と少年はけんかになる。少年のかなう相手ではなかったが、やくざの一人に度胸をほめられる。今やそのやくざ(蟹江敬三)が、印刷屋の仕事をやめた少年の「兄貴」分となっていた。 ホステスをして母を楽にさせたいという少女に、少年はキャバレーのホステスの暮らしが実は過酷なものであることを教えて、今日は自分と遊ぼうと少女に言う。
 少年は行きつけのバーに少女を連れて行く。初めて酒を飲んだ少女は、自分はきっとお酒が好きになるという。死んだ父親の悪い血を引いているから。父は仕事場で水たまりに落ちて死んだが二日酔いだったに違いない。父の残した借金を返すために少女は中学を出てすぐ工場で働いているのだった。少女がトイレに行っている間に少年の兄貴分の男がバーに来る。少女の話をすると、1万円を渡され、いつも彼らがスケコマシにつかう旅館に後で連れて行くように言われる。これは少年の初めてのスケコマシだった。
 少年は少女をゴーゴー・ホールへ連れて行く。一とおり踊った後、少年は少女にキスしようとするが、恥じらって拒む彼女にますます惹かれていく。ところがフーテン女(松坂慶子)が少年に絡んできたので少女は店を出てしまう。外では二人の中年男が少女を連れて行こうとしていた。中年男を張り倒して少年は少女を連れて逃げる。「お前を好きだ」と言う少年に、少女は「キスして」と言い、とうとう二人はキスをする。
 少年は予定通り連込み宿へと少女を連れてきた。しかし少年は、少女が兄貴たちに輪姦され、あられもない姿の写真を撮影され、水商売か風俗で仕事をさせられるはずであることを思う。少年は、兄貴とつるんでいる宿の主人をビール瓶で殴り、少女と裏口から逃げる。二人はタクシーに乗りこみ、少年は立派なホテルへ行くように指示する。今晩は散財できる1万円がある。小さなホテルに着く。きれいな部屋、きれいなトイレ、きれいな風呂。きれいなお湯。生れて初めてのごちそう。お風呂から出た二人は、浴衣に着かえて、鏡に姿を映す。自分を好きにしてほしいという少女に、自分は最低のチンピラだと言う少年。でも少女はこれが運命の出会いだと感じていた。二人は浴衣を脱ぐ。少年は不器用に、少女の美しい体を抱いた。
 翌朝、二人には何にもなかったが幸せだった。二人は離れないと誓い、葦原を走り廻った。そして川辺に小舟を見つけ、服を脱いで小舟を川へ押し出す。少し舟に水が入っているけれど向こう岸までは着けるだろう。しかし、舟の中の水は増えていく。向こう岸に着くどころか海まで流されるかもしれない。だが、二人でならそれも怖くなかった。

 大門正明の吐き捨てるようなセリフ回し、関根恵子の純真な女性像が印象的な映画でした。